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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年11月20日

「地球温暖化対策税」導入とカナダBCの炭素税の効果

温暖化
 

前号でお伝えしたジェイムズ・ハンセン氏が私たち日本のNGOに宛てたアンケ-トに「最小限のコストでクリーン・エネルギー社会へ移行するためには、炭素排出に対する課税を検討すべきです」と書いてくれていました。

この2009年時点では、日本にはいわゆる炭素税(炭素排出に対する課税)はなかったのですが、ご存じのように、今年の10月1日から「地球温暖化対策税」が導入されました

どういうものか、簡単にまとめておきますね。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201210/1.html

●何に対して課税されるか?原油・石油製品(ガソリンなど)、天然ガス、石炭といったすべての化石燃料に対して、CO2排出量1トン当たり289円が上乗せされます。

※従来の石油石炭税は、化石燃料の種類ごとに、単位使用量に応じた税率が定められており、原油・石油製品は1キロリットル当たり2,040円、ガス状炭化水素は1トン当たり1,080円、石炭は1トン当たり700円です。

●段階的に導入急激な負担増とならないよう、税率は、施行から3年半をかけて段階的に引き上げられます。平成24年10月1日からの導入当初は、CO2排出量1トン当たり289円の3分の1が上乗せされます。

●家計の負担は?電気・ガスの使用量や自家用車の使用頻度などによって違ってきますが、家庭のエネルギー使用量をベースに試算すると、最終的に一世帯当たり1か月平均は約100円程度(平成28年度〜)と見込まれます。平成24年度分の負担は、一世帯当たり平均で6か月間で約200円程度と試算されます。

●大変になる産業は?なお、化石燃料を利用する様々な産業の中で、大量輸送や公共交通に関わる産業は、ほかの産業に比べてエネルギー使用量が多いため、税導入によって負担が重くなってしまいます。そこで、特に負担が重くなる特定の産業に対しては、負担増に配慮した免税・還付措置を実施します。また、燃料の生産や流通にかかるコストの削減、物流・交通の省エネ化の推進、中小企業などに対する支援策を実施することとしています。

●税収は何に使うの?この税による税収は、中小事業者向けの省エネ設備の導入支援など省エネルギーの対策の強化や、次世代の蓄電池技術の開発、地方の特性に合わせた再生可能エネルギー導入の推進など、地球温暖化対策に限って活用されます

このサイトには、<各国の地球温暖化に関する税の概要>も載っていて、他国んはどのような炭素税があるかを知ることができます。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201210/images/a_05_l.jpg

ここに載っているのは国レベルの課税ですが、少し前に州レベルの炭素税の効果について、注目すべき記事がカナダの新聞に載ったよ、とカナダの友人から教えてもらいました。内容をかいつまんでご紹介します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カナダのブリティッシュコロンビア州の炭素税、ガソリン需要の低下に寄与 カナダの新聞「メトロ」は9月11日 、ブリティッシュコロンビア州で導入されている炭素税によって、ガソリンの消費量が減っているとの研究を報じました。

この研究はまだ草稿段階で、学術雑誌には掲載されていませんが、執筆メンバーで環境経済学者のニコラス・リバース氏(オタワ大学)は、価格変化に対する人々の対応は、炭素税による場合と他の理由による場合とでは大きく異なると述べています。

この研究のモデルによると、炭素税がガソリン1リットルにつき5カナダセント (2012年9月20日のレートでは約4円に相当)値上りすることにより、ガソリン需要は短期的に10.6%減少します。これに対して、市場変化によって5カナダセント値上がりした場合は、消費への影響は2.2%に留まると言います。この差はおよそ5倍です。

リバース氏は、税が「自分の振舞いを変えることを検討するべきだ」と告げるある種の旗印になったのではないかと述べています。

同州の炭素価格政策により、300万トン以上の排出が削減されましたが、この削減分の約8割は、人々が炭素税に対して、他の理由によるガソリン価格の上昇と同じように振舞っていたならば、達成されなかったとのことです。 また、6月に同大学で発表された別の研究でも、一人当たりの石油燃料消費量は、ブリティッシュコロンビア州以外では2008年から2011年にかけて1.3%しか減少していないのに対して、同州では同じ期間に、15.1%減少したことが明らかにされました。
http://metronews.ca/news/vancouver/366485/b-c-s-carbon-tax-caused-drop-in-gas-demand-draft-study/

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

炭素税には大きく2つの目的があります。

(1) 課税(→価格上昇)によって、炭素を出すもの(化石燃料)の使用量を減らす

(2) 税収を、社会の低炭素化を進めるために投資する

社会の負担を激増させない程度の課税では人の行動は変わらないのではないか、使用量は減らないのではないか、という反対意見もよくあるのですが、上記のカナダのブリティッシュ・コロンビア州の実例はよい反証となってくれそうです!

そして、フォローアップ情報も送ってもらいました。
http://www.pembina.org/media-release/2377#.UJMIXrUiMvg.twitter

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ペンビナ研究所などが1035名のブリティッシュ・コロンビア州の住民を対象に、インターネットを用いて、調査の主な結果です。(なお、サンプルはブリティッシュ・コロンビア州の地域、性別、教育、年齢構成に基づいて取られています)

・回答者のうち、79%が地球温暖化を気にかけ、73%が他州の取り組みを待たずにブリティッシュ・コロンビア州がさらに地球温暖化の原因に取り組むべきという考えに賛成。

・大多数は炭素税による歳入が以下の目的に使われるのであれば、もっと炭素税を支払ってもよいと回答している:医療や教育(71%)、温室効果ガスの汚染削減計画(67%)、個人所得税の減額(62%)、低所得者の保護(58%)。

・70%以上は、炭素税による歳入が法人税の減税にあてられるなら、増税には反対と回答。

・炭素税が州に対する影響については、「プラスの影響もマイナスの影響ももたらさない」と答える人が28%と最多であったが、2011年の類似の調査と比べると、今回の調査では「炭素税は州にマイナスの影響をもたらしている」と考える人は13ポイント増加し、「プラスの影響をもたらしている」と考える人は12ポイント減少していた。

調査を委託された組織のひとつであるペンビナ研究所のMatt Horne氏は「ブリティッシュ・コロンビア州の人々は、税収の使途に同意できれば、炭素税をもっと払ってもよいと考えている。しかし、現在の形式の炭素税への分の不満を表明している住民が多くいることも無視してはならない。そうした懸念を理解し、この問題にどのように取り組むかを明らかにする必要がある」と述べています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本の炭素税もきちんと市民が理解し、税収の使途と効果をウォッチし、必要な改善を求めていかなくては!ですね。

 

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