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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2013年03月05日

アースポリシー研究所より「2012年、世界の漁獲量が9,000万トンに減少」 (2013.03.05)

水・資源のこと
 
最初にちょっとだけ、「東北子ども未来公演」のご案内をさせてください。 もうじき「あの日」から2年......。 震災を体験した子どもたちは、今大きく成長し、世界で起こる紛争や難民などの社会問題へと意識を広げています。こうした被災地の子どもたちが、大変な状況の中でも勇気と優しさを失わずにがんばっていることを応援し、被災地以外の人々や世界の人々にもその元気と知恵、そして想いやりの心を伝えるために、JFSでは、元劇団四季の鎌田眞由美さんが立ち上げたNPO「CARE-WAVE」とのパートナーシップのもと、岩手県、宮城県、福島県などの子どもたちとプロの俳優による合同ミュージカルを開催します。 3月30日(土)に東京・世田谷区の三軒茶屋駅にある世田谷パブリックシアターにて、昼と夜の2回公演します。キャストの子どもたの真剣な想いを応援するためにも、多くの方に来場をいただきたいと願っています。 私自身、お稽古に立ち会わせてもらい、ミュージカルも観せてもらいました。本当に心を打たれました。いろいろなことを考えさせられるとともに、被災地の子どもたちの生の声に、未来への希望を感じることができました。素晴らしいミュージカルです、ぜひ観にいらして下さい。 今回は特別な料金で観ていただけます。そして、チケット売上はすべて震災の復興や環境・社会問題に取り組むNPO等に寄付されます。ぜひみなさんの思いを被災地の子どもたち、そして世界へとつなげてもらえたら!と願っています。 一人でも多くの方に見て、感じていただきたく、お知り合いやお仲間にミュージカル開催のお知らせをお伝えいただけたらうれしいです。 東北子ども未来公演 ウェブサイト http://www.japanfs.org/tohoku/musical/index.html さて、レスター・ブラウンのアースポリシー研究所から届いたリリース文を実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。海の中は見えないだけに、資源の乱獲・枯渇が気づかないうちに進んでしまう危険性の大きな場所です。。。 グラフはこちらをご覧ください。 http://www.earth-policy.org/indicators/C55/fish_catch_2012 ~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 資源を調査する:2012年、世界の漁獲量が9,000万トンに減少J・マシュー・ローニー 国連食糧農業機関(FAO)の予測によると、2012年の世界の天然魚の漁獲量は9,000万トンにとどまり、前年比で2%減少するという。これは、史上最高の漁獲量となった1996年の約9,400万トンと比べて4%近い減少となる。 一人当たりの漁獲量はさらに激減しており、最盛期の1988年の17キログラムから2012年には13キログラムにまで減り、この37年間で最も少なくなる。この期間、天然魚の漁獲量は横ばいだった一方、養殖魚の生産量は1990年代半ばの2,400万トンから2012年には推計6,700万トンへと跳ね上がった。 世界の天然魚の漁獲量および養殖魚の生産量、1950~2012年 【グラフ縦軸】百万トン 【グラフ下】出典:FAO この数十年間で、食料や飼料、その他の製品に利用される魚介類の需要が劇的に増加するにつれ、漁業の操業に冷凍工船や観測用飛行機、GPS衛星などの高度な技術がますます使用されるようになってきた。 漁船団は当初、北半球の沿岸の魚類資源をターゲットとしていたが、資源が激減したため、1950年以降は操業範囲を毎年平均してほぼ緯度1度のペースで徐々に南方に拡大した。そのペースは1980年代から1990年代初めの間が最も速かった。その後、未開発のまま残された海域は、公海および到達が困難な南極大陸近海や北極圏、深海のみとなった。 魚を追い求める動きが激化(現在、粗利益で年800億ドル:約6兆6,400億円超)したことで、生態学的に重大な影響が出ている。例えば、マグロやタラ、マカジキなどの大型で長命の捕食魚の個体数が大幅に減少したことによって、海洋食物網に変化が生じているのだ。延縄や底引き網漁船など無差別に捕らえる漁具は、ウミガメやサメ、サンゴなどの捕獲対象ではない生物をも大量に殺している。 2009年の時点で、FAOにより評価された海洋魚類資源の約57%が「最大限まで利用されている」、つまり水産科学者が呼ぶところの最大持続生産量(MSY)かそれに近い水準にある。魚類資源を預貯金として考えるとしたら、MSYの水準で行う漁業は、理論上、元金に手をつけずに、生じる利息だけを引き出しているのと同じようなことになる。 そして、魚類資源の約30%は「過剰に利用されている」。これは、MSYを上回る水準で捕獲されているということで、資源の回復のために資源管理への強い介入が求められる。このような状態にある資源の割合は、1970年代半ば以降3倍に高まった。よく知られている事例は、1990年代初めに崩壊したニューファンドランド島のタラ漁で、いまだに回復していない。 こうして、残されたわずか13%の海洋魚類資源が「最大限まで利用されていない」状態にあり、1974年の40%から減少している。残念なことに、残された資源がこれだけでは、漁獲量が問題なく増加する可能性はかなり限られてくる。 このFAOの統計では、395の漁場について説明されており、その割合は世界の漁獲量の約70%を占めている。統計に含まれているのは時間とコストをかけて正式な科学的資源評価が行われたごく一部の漁場であり、それ以外の漁場は「未評価」とされている。FAOの分析から漏れた未評価の漁場はさらに数千にのぼる。 クリストファー・コステロは同僚と共に、世界のこうした未評価漁場すべての調査を初めて試み、2012年に『サイエンス』誌の記事でその特性を明らかにした。彼らの報告によると、2009年の時点で未評価漁場の64%が過剰に利用されているという。 世界の漁獲量上位10種までの魚が、漁獲量のおよそ1/4を占めている。これらの魚種のほぼすべての資源が、最大限まで利用されていると考えられる(こうした魚の大半は地理的に異なる2カ所以上の漁場にいる)。 その中には天然魚の漁獲量で世界最大のペルー・カタクチイワシの2カ所に分布する主要な資源も含まれる。過剰に利用され、回復が必要な資源には、北西太平洋が主な漁場であるタチウオ(リボンに似た姿の捕食魚で、主に中国漁船によって捕獲される)などがある。(データ参照: http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/indicator4_2012_8.xlsx) 現在の漁獲量の水準は持続不可能なものであるにもかかわらず、各国はさらなる漁獲量の増加を奨励し、漁船に補助金を支給し続けている。世界各国の政府は、漁船の大型化や漁獲能力の向上に、年推計160億ドル(1兆3,280億円)を費やしており、このうちの40億ドル(約3,320億円)は燃料費の補助に充てられている。 先進国での支出は、この推計額のうちの約100億ドル(約8,300億円)であった。20億ドル(約1,660億円)超を費やした中国では、漁獲量が1,500万トンに達しており、次に多いインドネシアの漁獲量のほぼ3倍に匹敵する。 世界の漁業は、収益が減少している典型的な事例である。2012年に発行されたFish and Fisheries『仮邦題:フィッシュ&フィッシャリー』誌の中で、科学者たちは次のように書いている。 「1950年以後、世界の漁船のエンジン馬力数は全体で10倍になったが、漁獲量の方は5倍しか増えていない」(世界全体の推定漁船総数440万艘のうち、320万艘があるアジアでの漁獲量の伸びは25倍)。換言すれば、1トンの魚を水揚げするのに、今では60年前の2倍のエネルギーが要るということだ。 海産食物は世界の食糧安全保障上重要な役割を果たしている。およそ30億の人たちが動物性たんぱく質の約20%を海産物から摂取している。発展途上にある小さな島国なら、動物性たんぱく質の半分以上を魚から摂っても驚くに当たらない。しかし、バングラデシュやインドネシア(合わせると人口が4億人)のように、人口が遥かに多い国でもその点は変わらない。 天然魚の漁獲量の増加がもはや望めない中で、養殖産業は動物性たんぱく質の供給源として世界で最も早い成長を遂げている。全体の生産量が牛肉に追いつく日も近いだろう。コイの養殖では千年を超える歴史を持つ中国の2010年の養殖魚生産量は、世界全体の60%に当たるおよそ3,700万トンであった。 世界の養殖魚上位10種のうち、6種がコイ科であり、いずれも飲み込んだ水からプランクトンをろ過して食べる(フィルター・フィーダー)か、植物中心の餌を摂る。しかし、養殖の欠点としてよく挙げられるのは、小さなプランクトンを食べ食物連鎖の上位の生物を支えている天然の餌用魚が、魚粉や魚油に加工され、鮭や海老など養殖されている捕食魚の餌になることが多いという点だ。実際、捕獲されたペルー・カタクチイワシは、殆どが養殖魚や豚、ニワトリの餌になる運命にある。 養殖魚の餌として捕獲される天然魚の割合は1990年代の中頃より減ってはきているが、科学者たちは最近、その捕獲量をMSYより遥かに少ない、その半分にまで減らすことを求めている。環境の悪化によってある年の産卵状況が思わしくないなら、漁獲量を大幅に減らすことが漁場の崩壊を防ぎ、食物連鎖への影響を緩和すると言うのだ。 ペルー・カタクチイワシ漁業の最近の開発状況を見れば、餌用魚の脆弱性が分かるだろう。穏やかなエルニーニョ現象によって太平洋の水温が上昇したとき、ペルー・カタクチイワシの数は2011年から2012年にかけて40%減少した。こうした個体数の減少を受けて、総漁獲量の80%以上を占めるペルー政府は、来シーズンの許容漁獲量を2/3減らし、過去25年間で最低のレベルまで落とすことにしたのだ。それでも、この国の水産行政の責任者は「実際面では、割当量はゼロと言うべきだった」と後日認めている。 世界の漁場の再生に希望はある。いくつかの海域ではシステム的な研究が充分に行われ、複数の漁場が、漁具タイプの制限や許容漁獲量の引き下げ、漁師間での水揚げ配分、海洋保護区域(MPA)の設定など、さまざまな管理手法を導入し、これらを組み合わせて使うことで崩壊から立ち直っている。 たとえば、ケニアのサンゴ礁周辺では、地域住民が海岸から引き網を除去し、禁漁区のネットワークを共同で管理したところ、魚の総バイオマス量が増加し魚体が大きくなった上に、漁師の所得も増えることになった。 世界全体では、海洋保護区に指定されている面積は810万平方キロメートルに及ぶ。オーストラリアよりは広いが、海洋全体の2%にすぎない。それでも慎重に設定され、充分な管理が進む海洋保護区はさまざまなレベルで魚の保護を可能にし、生物的、社会的に多くの利益をもたらしている。 しかし、最も実効性が高いのは完全に漁業を禁止した海洋保護区だ。2010年に実施されたオーストラリアのグレートバリアリーフの禁漁区での調査が示すように、そこでは魚の量や体長が2倍になっただけでなく、禁漁区の外側でも魚の数が増加している。2012年6月、オーストラリア政府はあらゆる種類の保護区の数を27カ所から60カ所に増やし、領海の1/3を保護すると宣言した。 1883年のロンドン万国漁業博覧会で、英国の王立協会会長トマス・ハクスリーは次のように語っている。「おそらくどの大きな海洋漁場も無尽蔵だろう。つまり、何をしようとも魚の数に深刻な影響が及ぶことはない」と。この考え方は広まり、20世紀に入っても受け入れられてきた。 ところが、そうではない現実を今や数十年間も見てきた結果、世界はかなり進歩した。それでも、とりわけ海の水温上昇と酸性化が進む中で世界の漁場を今後も守るためには、科学者の提言をこれまで以上に早く実行に移す必要がある。 # # # データやその他の情報についてはwww.earthpolicy.orgを 参照のこと。 この情報はご自由に友人、家族、同僚の方々に転送してください! メディア関連の問い合わせ: リア・ジャニス・カウフマン 電話:(202) 496-9290 内線12 電子メール:rjk@earthpolicy.org 研究関連の問い合わせ: J・マシュー・ローニー 電話:(202) 496-9290 内線17 電子メール:jmroney@earthpolicy.org アースポリシー研究所 1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403 Washington, DC 20036 換算レート:1ドル=約83円(2012年11月30日) (翻訳:佐々木、酒井) ~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~ レスターの秘書さんからの情報によれば、レスター・ブラウン氏の自伝が刊行される予定とのこと。レスターがどんな人生を送ってきたのか、どうしてあのように深い洞察と確固たる信念をもって活動を続けることができているのか、過去を振り返り未来に目を向けたとき、その胸に何が去来しているのか......。 早く読んでみたいなあと思います。日本での刊行も待ち遠しいです!
 

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