全国のあちこちに講演やシンポジウムに呼んでいただくとき、地元でのさまざまな取り組みについて学ぶ機会をいただけることがあって、とてもうれしく思います。昨年冬に岡山県におじゃました際、とてもすばらしい中高生の取り組みの発表を聴き、感動しました。 「ぜひ世界にも伝えたい！」とお願いし、３月末のジャパン・フォー・サステナビリティのニュースレターで世界にも発信させていただきました。「すばらしい取り組みですね」と世界からも感想が届き、学校にも伝えさせていただきました。 ぜひみなさんにも読んでいただきたく、JFSニュースレターからご紹介します。 ～～～～～～～～～～～～～～ここから引用～～～～～～～～～～～～～～～～～～ 2012年12月22日に開催された岡山県・岡山県環境保全事業団主催の「アースキーパーのつどい2012　－幸せな未来のつくり方－」では、岡山県で展開されているさまざまな環境保全の取り組みの発表がありました。 そのなかでも、「海底ごみ問題の解決に向けての回収活動と啓発活動の取り組み」を発表した山陽女子中学校・高等学校地歴部の取り組みがすばらしく、世界の皆さんにも発表原稿をお伝えしたいと思います。 ＝＝＝＝ これから山陽女子中学校・高等学校地歴部の発表を行います。私たちは瀬戸内海で深刻な問題となっている海底ごみ問題の解決に向けて、回収活動と啓発活動に取り組んでいます。 私たちが活動する瀬戸内海は日本で初めて国立公園に指定されました。日本最大の内海です。 この写真は瀬戸内海です。表面的にはとても美しい海域です。どこにごみがあるのでしょう。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work01.jpg 海底に目を移してみると、なんと、海底には大量のごみが堆積しているのです。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work02.jpg 海ごみには漂着ごみ、漂流ごみ、海底ごみの３種類があります。海底ごみには、普段見ることはないこと、海底に蓋をして生態系を崩していること、回収者がいないこと、という特徴があり、さらに、ごみは陸上で発生して海底まで流れ着いています。よって、問題の解決に向けて進んでいません。 漂着ごみ、漂流ごみは公的な回収者がいるのに対して、海底ごみは漁師が持ち帰りをしているのみです。回収費用も出ません。瀬戸内海には13,000トン以上のごみが堆積しています。 以上のことから、私たちは、海底ごみを回収して、海底をきれいにすること、海底ごみの啓発活動をしてごみの発生量を抑制することに取り組んでいます。 回収活動は寄島漁協の漁師さんに漁船を出してもらい、海上で３時間以上の作業です。明け方の漁の後なので、漁師さんにはとても感謝しています。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work03.jpg 海底ごみは底曳き網を使い、海底を引っ張り、網にごみを入れていきます。冬は爪が付くので、大量のごみを回収できます。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work04.jpg 回収活動は自然との過酷なたたかいです。夏は灼熱の太陽の下、日陰のない船上での作業です。冬は北風が強くて、厳しい寒さです。波が高い時は、船酔いとのたたかいです。雨の日にも回収活動に取り組んでいます。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work05.jpg 実際に回収したごみです。特徴的なことは、生活ごみばかりです。私たち中学生や高校生に関係深いお菓子やペットボトルもあります。劣化した小さなごみや重量が重いごみは回収できないので悔しい思いがします。なかには不法投棄された産業廃棄物もあります。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work06.jpg http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work07.jpg 海底ごみの大部分はビニールやプラスチック類です。不燃物なので、自然界で分解されることはありません。目視できないごみですが、定点調査では回収するごみの量は減少していることが分かりました。 回収した空き缶の賞味期限を調べると、海底へのおおよその堆積期間がわかります。20年以上前のごみもあります。 海ごみの収支ですが、ごみの７割は陸上から流入したものです。そのうち、年間700トンが海底に堆積しています。 海底ごみの問題点に、その認知度の低さがあります。大部分の人が海底ごみを知りません。そこで、まず、海底ごみを知ってもらうことがごみの発生を抑制し、海底ごみの減少につながると考え、啓発活動に取り組んでいます。 私たちの啓発活動の柱は、メディア・学術活動・啓発教材・地域の４点です。 メディアからの啓発活動では、テレビ局に取材していただき、全国放送され、大きな反響をもらいました。また、新聞にも活動が掲載されました。 私たちは全国の中学生や高校生の前で発表したり、学会で発表して問題を共有したり、意見交換をしています。 海底ごみは地域から排出されているので、地域の街頭に立って啓発活動にも取り組んでいます。私たちは未来を担う子供たちを招待して、親子に回収活動を体験してもらっています。生き物に素手で触れてもらいましたが、おおはしゃぎです。生き物とごみが混ざっているのにビックリしていました。 啓発教材も制作しました。回収の様子を収めた啓発ビデオや、環境問題を盛り込み、可愛いイラストを添えた海ごみかるたを制作しました。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work08.jpg 地域の公民館では海ごみ先生として、私たちの活動を紹介しました。会の最後には海ごみかるたを楽しみ、勉強しました。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work09.jpg 私たちの活動は世界にも広がっています。昨年、アメリカのボルティ モアで開催された国際会議へ派遣され、海底ごみ問題について報告しました。世界は海でつながっています。海外のごみが日本へ流れ着き、その逆もあります。海は世界の財産で大切にしたいです。 啓発活動の結果、海底ごみの認知度は年々上昇しています。地域に浸透 していることが分かりました。そして、今年100％を達成しました。 私たちの活動は間違っていなかったと自信になりました。 最後に私たちの「海ごみかるた」です。「くるしいよ、海がさけんでいる」瀬戸内海で海の揺り籠になるアマモが増えていると報告を受けま した。海がきれいになっている証拠です。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work10.jpg 「流れていくよ、日本のごみが外国へ」今、震災がれきがアメリカへ漂着しています。回収費の負担はアメリカです。海の環境を守っている者として、先日、回収費に役立ててほしいと思い寄付をしました。回収の苦しさはよく分かります。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work11.jpg 「捨てないで、海はごみ箱じゃない」今、海はごみ箱になっています。 http://www.japanfs.org/ja/files/Students_Work12.jpg 瀬戸内海の美しい海を取り戻せるように、今後も海底ごみの回収 と啓発に頑張ります。 ＝＝＝＝ 「まず知ってもらう」。地元の地域での活動だけでなく、マスメディアを通じて全国への発信、海外にも視野を向けて活動している山陽女子中学校・高等学校地歴部の今後の取り組みの展開に期待しています。 （枝廣淳子） ～～～～～～～～～～～～～～引用ここまで～～～～～～～～～～～～～～～～～～ ３月末に世界に配信したあと、うれしいニュースが飛び込んできました。 日本水大賞委員会が４月５日に、2013年日本ストックホルム青少年水大賞（日本SWJP）の大賞に、この山陽女子高等学校・地歴部の活動「瀬戸内海の海底ごみ問題の解決に向けての取り組み　～回収活動と啓発活動からのアプローチ～」を選らんだのです。大賞受賞者として、同校は９月にスウェーデンのストックホルムで開催される国際コンテストに参加するとのこと。おめでとうございます～！日本からのすてきな活動、ぜひ世界にも伝えてきてください！ また、２月号までのJFSニュースレターのバックナンバーはこちらにあります。ほかにもいろいろとすてきな取り組みや日本の概況などが読めます～。 http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/008815.html そして、こうして日本から世界への架け橋として活動しているJFSを、個人サポーターや寄付者として応援していただけたらうれしいです。よろしくお願いいたします！ http://www.japanfs.org/ja/join/