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さて、[No. 2228] でアースポリシー研究所からの「広まる自転車シェアリング・プログラム、500を超える世界の都市で自転車が快走」をお伝えしました。その続編が届きました。実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします~。
米国で自転車シェアリングがすごい勢いで広がっている様子がわかります。しかも、ビジネスとして広がっているのですね。このレポートでは、自転車に乗ることの健康への効果だけでなく、自転車シェアリングの経済効果も紹介しています。地元にとっても魅力的ですねぇ!
その部分、ちょっとだけ引用しましょう。
・ツインシティーズのナイス・ライド・プログラムの場合、自転車の利用で地元に1回あたり7ドル(約700円)から14ドル(約1,400円)の経済効果が出ることがわかった。
・キャピタル・バイクシェアの場合は、調査に応じた利用者の44%が、自転車シェアリングがなければ出かけなかったであろう外出、主に遊びやつきあい、食事、のために利用したと答えている。
・商店やレストランからも、自分たちの通りに自転車レーンが新設されてから売り上げが伸びたという声がしばしば寄せられる。
日本での自転車シェアリングは? パイロット・プロジェクト的に行っているところや、自治体が温暖化対策や廃棄自転車のリユース事業として行っているところはありますが、米国のように、「儲かるから」と民間事業者が大規模に展開する例はこれから出てくるのでしょうか?
グラフはこちらからご覧下さい。
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2013/update113
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米国諸都市が次々と仲間入り‐‐勢いづく自転車シェアリング
ジャネット・ラーセン
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2013/update113
2013年4月15日、ニューヨーク市が多くの市民待望の公共自転車シェアリング・プログラムの受付を開始すると、登録者は30時間以内で5,000人を超えた。数千台もの自転車、それを利用する権利をどうしても手に入れたくて、彼らは利用開始が数週間も先だというのに、いち早くシティバイク(Citi Bike)の会員になったのだ。
こうした、自転車利用の選択肢をもっと増やしてほしいという要望がつのっている状況は、バッファローからボールダー、オマハからオクラホマシティ、ニューヨークのロングビーチからカリフォルニアのロングビーチまで、全米の自転車シェアリング・プログラムが根付きつつある都市にみられるものだ。
2013年が始まった時点で、米国では新しいかたちの公共自転車シェアリング・プログラムが22カ所で実施されていた。この数が2014年の春には倍増することになりそうだ。自転車シェアリングを実施している都市は世界で500以上あるが、そこに米国の諸都市が立て続けに参入していくからである(世界の自転車シェアリングに関しては、4月15日付のプランBアップデートを読まれたい)。
また現行プログラムの拡大や、ニューヨーク市、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大市場によるプログラム立ち上げで、国内のシェア自転車台数も9,000台近くから3万6,000台以上へと、ここ数年で4倍に膨れ上がるだろう。さらに、自転車シェアリング設立の可能性を検討中の米国の都市も増えており、台数は今後も増え続けると思われる。
(グラフ)米国の自転車シェアリング・プログラム(2007年~2014年)
備考:2013年と2014年は予想数値
人々は冗談で「ワシントンがやることにはろくなことがない」と言いたがる。しかし今回は、自転車シェアリング・プログラムを始めようとしている米国の都市の多くが、首都の動きを見守ることで、「自転車を交通の足に」という考え方に強く興味を引かれるようになった。
ワシントンでは、2008年に始まった小規模プログラムが成功と言えるまでには至らず短命に終わっているが、それに代わる形で、キャピタル・バイクシェア(Capital Bikeshare)が2010年9月にプログラムの実施を開始した(米国で実際に自動式の自転車シェアリング・システムを導入したのはオクラホマ州のタルサが最初で、2007年のことである。太陽光発電で動く3カ所のステーションに自転車が数十台配備された)。
キャピタル・バイクシェアは、全米最大規模の自転車シェアリング・プログラムとして君臨し、地域住民にもその地を訪れる人たちにも絶大な人気を博してきた。これまでの自転車利用回数は両方合わせて400万回を超える。
現在、キャピタル・バイクシェアは、鮮やかな赤色の自転車1,800台とそれが配備される200カ所のロッキング・ステーションを擁して、ワシントンDC内とバージニア州北部の町、アーリントンとアレクサンドリアで自転車シェアリングを実施しているが、近いうちに同事業は隣接するメリーランド州のモンゴメリー郡にまで拡大する予定になっている。2013年末には、ステーションの数は300を超え、総自転車台数は3,700台に達すると見込まれる。
多くのシェアリング・プログラムと同じく、利用者は、登録の際に短期会員か年間会員かを選び、オンラインによるクレジットカード支払いかステーションの売店での直接支払いで会費を納める。
メンバーになると自転車のロックを外すことができ、利用した後はこのシェアリング・システムのステーションであればどこにでも返却できる。利用料金は最初の30分が無料で、その後は段階的に上がる仕組みになっている。短時間で自転車を返すように利用者を促し、より多くの自転車を他の利用者に貸し出せるようにしておくためだ。
2008年の大統領指名全国党大会向けに導入された期間限定プログラムで自転車シェアリングの試験運用が行われた後、ツインシティーズ(ミネアポリスとセントポールの両地域)やデンバーのNPOが2010年にシェアリング・プログラムを開始した。
ナイス・ライド・ミネソタ(Nice Ride Minnesota)は、ミネアポリスとセントポール地域を対象に、170のステーションを設置して1,550台の自転車を配備している。2012年の利用者は6万人近くにのぼり、その中には200人以上のミネアポリス市役所職員も含まれる。彼らは会合や現地視察に出かけるのに自転車を使って市の経費を節約している。
ナイス・ライドは季節限定シェアリング・プログラムの一つで、一年で最も寒い数ヶ月間は運用が中止される。この地域には、約285キロメートルの自転車専用道路ーー住民1人当たりの長さは自転車のメッカ、コペンハーゲンにさえ匹敵するーーがある。
雪が積もると、この地に育ちつつある自転車文化によって自転車専用道路の雪かき作業が優先されるのであるが、それでも冬季にはクローズせざるを得ない。自転車の走行環境の改善は成果をあげており、ミネアポリスでの自転車通勤が2000年の1.9%から2011年には3.5%にまで増えている。
デンバーの自転車シェアリング・プログラムは540台の自転車と53のステーションを擁しているが、2013年中には少なくとも自転車が700台、ステーション数は80になる模様だ。デンバーのプログラムは、フロリダ州のフォートローダーデールやブロワード郡、ナッシュビル、ヒューストン、ボールダーなど15以上の地域で自転車シェアリングを運営するBサイクル(B-cycle)・グループに属している。
メンバーはBサイクル対象地域であればどこででも会員カードで自転車のロックを解除することができる。マディソンとサンアントニオで、Bサイクルは荷台付三輪自転車の共同利用を試験的に始めている。三輪自転車はより安定性があり荷物を運ぶことができるので、さらに多くの利用者を呼び込むことになりそうだ。
シャーロット・Bサイクルの場合は、構想が提案されてから1年足らずの2012年に運営が開始され、自転車シェアリングがいかに迅速に立ち上げられるものかを知らしめることになった。
(グラフ)
2013年5月10日時点での、現行自転車シェアリング・プログラムにおける自転車台数
【縦軸】
ワシントンDCワシントン首都圏
ミネソタ州ミネアポリスおよびセントポール
マサチューセッツ州大ボストン都市圏
フロリダ州マイアミビーチ
コロラド州デンバー
ニューヨーク州ロングビーチ
テネシー州チャタヌーガ
テキサス州フォートワース
ウィスコンシン州マディソン
フロリダ州(ブロワード郡)フォートローダーデール
テキサス州サンアントニオ
ノースカロライナ州シャーロット
テネシー州ナッシュビル
テキサス州ヒューストン
コロラド州ボールダー
ユタ州ソルトレイクシティ
オクラホマ州オクラホマシティ
ミズーリ州カンサスシティ
ネブラスカ州オマハ
カリフォルニア州アナハイム
ニュージャージー州グリーンビル
ニューヨーク州バッファロー
オクラホマ州タルサ
アイオワ州デモイン
サウスカロライナ州スパータンバーグ
ハワイ州カイルア
【横軸】自転車台数
ボストンは2011年にハブウェイ(Hubway)自転車シェアリングを開始した。それは歓呼の声で迎えられ、すぐに利用者数は予想を上回った。その後規模を拡大し、当初600台だった自転車台数はボストンとその近郊を合わせて1,100台に達している。通常の年会費は85ドル(約8,400円)であるが、ボストン公衆衛生委員会は低所得の住民には、ヘルメット代込みで5ドル(約495円)という低額の年会費で会員カードを発行している。
2011年には、もう一つ、大規模な自転車シェアリングがマイアミビーチで開始された。民間会社のデコバイク(DecoBike)が運営しているが、2012年には130万回近い年間利用回数を誇り、国内で一番高い自転車稼働率となった。この砂州島の保養地には旅行者が大勢押し寄せてくることもあり、年間の利用者数はすでに30万人を突破。近いうちにプログラムはマイアミ市にまで拡張され、現在の1,000台態勢に500台が加わる見込みである。
2013年に続々とオープンされる自転車シェアリングのうち最大規模となるのはニューヨーク市のもので、5月後半に、マンハッタン地区とブルックリン地区に330のステーションを設け、およそ6,000台の自転車を配備する予定だ。
将来的には、他地区へも拡大し自転車を1万台にまで増やすことを目指している。これは、民間会社アルタ(Alta)が新しく運営することになる幾つかのプログラムの一つで、同社はワシントンDCやボストン、チャタヌーガでもすでに運営中だ。
ニューヨークでの自転車シェアリングの開始は、初めはコンピューターソフトの欠陥、次はハリケーン・サンディによる被災、といった理由で何度も延期されてきたが、それでも、住民の半分以上が自家用車を持たないこの街では、自転車利用者のための環境改善事業が次々と続けられている。
マイケル・ブルームバーグ市長が進めるニューヨーク持続可能都市戦略の一環として、ニューヨークの交通量の多い道路に約483キロメートルの自転車専用レーンが設置された。自転車通勤も2000年以降3倍以上に増えている。
シティバイク(Citi Bike)(名前は出資者であるシティバンクに由来する)の年会費は100ドル(約9,900円)近くになるーーマンハッタン地区では多くの物が他のほとんどの都市より高いーーが、ニューヨーク市交通局長のジャネット・サディカーンも指摘するように、それでもなおこれは1カ月の地下鉄定期券より安い。
もし自転車が、タクシーならもちろんのこと、バスや地下鉄の代わりに利用されるのであれば、ほとんどの会員にとってお金の節約になるだろう。ワシントンDCの自転車シェアリング利用者の場合、年度会員になると交通費が平均800ドル(約79,200円)節約できることがわかっている。
アメリカ自動車協会(AAA)の見積りでは、自家用車を所有して年間約14,000キロメートル走るとすると、平均7,800ドル(約772,200円)(減価償却費、ガソリン代込み)のコストがかかる。自転車シェアリングのコストはそれよりも遥かに安上がりということになる。
(グラフ)米国の大規模自転車シェアリング・プログラムにおける現在および将来の自転車台数
【グラフ縦軸】
カリフォルニア州サンフランシスコおよびベイエリア
ニューヨーク州ニューヨーク
カリフォルニア州ロサンゼルス
イリノイ州シカゴ
ワシントンDCワシントン首都圏
カリフォルニア州ロングビーチ
ワシントン州(キング郡)シアトル
カリフォルニア州サンディエゴ
ペンシルバニア州ミネアポリス
マサチューセッツ州ボストン都市圏
アリゾナ州フェニックス
フロリダ州マイアミビーチ
【グラフ下】
自転車台数
【グラフ右】
アースポリシー研究所 www.earth-policy.org
【グラフ枠内】
黒色:現行台数
青色:拡大が計画されている台数
【グラフ下の( )内】
(2013年5月10日時点での、米国における現行および計画中の全自転車シェアリ
ング・プログラムを示すグラフを見るにはここをクリックしてください)
シカゴやサンフランシスコの自転車シェアリングもアルタが運営する予定だ。ディビー(Divvy)と名づけられたシカゴのシェアリング・プログラムは、2013年8月末までに3,000台の自転車を300カ所のステーションに配備し、2014年にはステーションの数を400、自転車台数は4,000に増やす計画になっている。
一方、この都市はすでに、全米で最も駐輪場が多い都市になると宣言しており、自転車専用道路を約1,038キロメートルまで延長中で、住民は自宅から約0.8キロメートルも走れば必ず専用道やサイクリングロードに入れるようになる。シカゴ市長のラーム・エマニュエルは、「シカゴを全米一の自転車優先都市にすることが自分の夢だ」と語り、意欲ある技術者が、自転車優先の歴史をもつシアトル等から移ってきたくなるような都市にしたいと言う。
サンフランシスコベイエリアでは広範囲を対象に自転車シェアリング計画が進んでおり、8月に700台の自転車が配備される予定だ。そのうちの約半分はサンフランシスコ市内での利用になり、残りはサンノゼへと南下する約80キロメートルの交通路沿いの町々に配備されるだろう。
このプログラムは地域の大気保全当局の管轄下にあり、その狙いは、自動車の排気ガスを減らし公共交通機関の混雑を緩和するために、人々の自家用車利用を抑制することにある。
サンフランシスコとサンノゼの間を走る通勤列車のカルトレイン(Caltrains)は、すでに毎月4,000台以上の自転車を運んでおり、自転車専用車両が満杯になるとそれ以上の自転車利用者は乗車できなくなっている。
自転車シェアリングが実施されれば、通勤者は乗車駅か降車駅のいずれかで自転車を借りるので、車内のスペースに余裕ができるかもしれず、いわゆるファースト・ラスト・マイル問題(乗り降りする駅から最終目的地までの移動をどうするか)の取り組みにもなる。このプログラムは長期目標として、この地域への10,000台の自転車配備を目指す。
自転車に向いた気候をもつ南カリフォルニアもまた、この自転車シェアリングの競争に加わろうと走り出した。サンディエゴではデコバイクが自転車1,800台のシェアリング事業を計画している。
もう一つのシェアリング事業者、バイク・ネイションはロングビーチで2013年末までに250台の自転車で事業を開始する予定だ。ロングビーチでは、新しくできた自転車専用レーンや走行分離帯のおかげで自転車利用者が過去4年で70%も増えたが、こうした対策の効果で、4、5年後には、シェア自転車の数は2,500台にまで膨らむだろう。車から自転車に乗り換える人が増えるにつれ、車、自転車、双方とも事故が急激に減少している。
バイク・ネイションは、今年さらに、ロサンゼルスとその近郊の幾つかの町に4,000台もの自転車を投入してシェアリング事業を開始する。この無秩序に広がる車中心の街では、2010年に、アントニオ・ビラライゴサ市長がタクシーに自転車の走行を邪魔されてひじの骨を折ってからというもの、自転車の走行環境の改善を目指す改革運動が続いている。
これまでの数年間で、同市は約200キロメートルにおよぶ自転車レーンを整備し、また、ボゴタとメキシコシティで行われているシクロビア(ciclovia)にヒントを得た一日イベント、サイクラビア(CicLAvia)を数回開催してきた。イベント当日は、市内の主要道路の幾つかが車両乗り入れ禁止となり自転車と歩行者に開放されて、お祭り状態になる。2013年4月のイベントには推計25万人の人出があった。
ロサンゼルスの他には、フィラデルフィア、フェニックス、ピッツバーグ、シアトルなどが大規模な公共自転車プログラムを計画している(表参照)。
オレゴン州のポートランドは米国の典型的な自転車都市で、低所得の住民には自転車が支給され、また、至る所に自転車レーンが整備されて交通信号も一部自転車優先の仕組みになっている。
1994年に「イエローバイク」プログラムを立ち上げ、自転車シェアリング事業に真っ先に参入したのはこの都市だった。寄付によって集まった自転車を鮮やかな黄色に塗り上げ、市内のあちこちに置いて無料で使えるようにしたのである。
それから20年経とうとする今、ポートランド市は750台の自転車、75カ所の自動式ドッキング・ステーションを備えた最新の自転車シェアリングを開始しようとしている。1990年に1%だった自転車の利用率は、現在すでに6%にまで上昇しており、乗ろうと思ったときにすぐ利用できる自転車が増えることでこれがさらに上昇するものと同市は期待している。
もう少し規模の小さい自転車シェアリング・プログラムを2013年に開始する都市の中に、ニュージャージー州のホーボーケンがある。同市は、シェアリングとレンタルを組み合わせたユニークなハイブリッド自転車シェアリングを6月から開始する。市議会が満場一致で了承してから2か月足らずで実施にこぎつけた。
現在、ニューヨーク市で、昔ながらのレンタル自転車としては国内最大規模となる2,000台の自転車のレンタル事業を行っているバイク&ロールが、ホーボーケンで長期利用のレンタル自転車25台と近距離利用のシェア自転車25台による試験的取組を始める。その目標は、ニュージャージーとニューヨークの間を効率よく通勤客や観光客を運ぶフェリーに自転車を組み合わせることで相乗効果を生み出すことだ。
ホーボーケンの自転車シェアリングで使用される自転車はソーシャル・バイシクルズ(Social Bicycles)が供給する。同社は、ロック装置とGPS追跡装置を自転車本体に組み込むことで、電子式ドッキング・ステーションの設置を不要にした数少ない新興業者の一つである。
利用者は一応、専用の自転車置き場に自転車を返却するよう薦められるが、通常の自転車駐輪ラックや、その他の道路建造物にロックして返却することもできる。これはドイツなどの自転車シェアリングでは一般的だが、米国ではこれまでなかったやり方だ。同社の自転車が初めて公共事業に導入されたのはバッファローで、カーシェアリング会社が行う事業向けに一連の自転車が納入された。同社はタンパにこの技術を導入して、2013年末に300台規模の事業を開始する計画である。
ラスベガスでも、2013年後半に、スマートロック自転車によるシェアリング・プログラムが都市再開発事業の一環として開始される予定だ。最初の実験プログラムにはヴァイアサイクル(ViaCycle)のハイテク自転車が50台から150台使われることになっている。
ヴァイアサイクルは現在、ジョージア工科大学とジョージメイソン大学の構内でスマートロック自転車を使った自転車シェアリングを運営している。アメリカでは、少数ではあるが幾つかの大学の構内で、従来のレンタル自転車や自転車貸し出し制度とは一線を画す最新の自転車シェアリングが導入されており、これらの大学はその中の2つである。
スマートロック自転車を採用することで電子式ドッキング・ステーションの設置が不要になれば、シェア自転車1台あたり6,000ドル(約59万4,000円)前後となるコストを1,500ドル(約14万8,500円)近くまで下げることが計算上可能になる。
いずれにしても、自転車シェアリングや自転車走行用のインフラ整備は経済的に大きな利益を生む。たとえば、幹線道路の1レーンを約1.6キロメートル建設するのと同じコストで、ワシントンのキャピタル・バイクシェアなら保有する自転車台数とステーション数を倍増することができるだろう。
車は大気汚染や道路の混雑、態度の悪いドライバーを都市にもたらしたが、それに対して、自転車の利用は、移動性が改善され、道路の劣化が減少し、パーキングにかかる土地・建物の価格が少なくてすむことからコスト削減につながる可能性をもつ。
また自転車シェアリングによって経済が活気づくことも期待できる。ツインシティーズのナイス・ライド・プログラムの場合、自転車の利用で地元に1回あたり7ドル(約700円)から14ドル(約1,400円)の経済効果が出ることがわかった。
キャピタル・バイクシェアの場合は、調査に応じた利用者の44%が、自転車シェアリングがなければ出かけなかったであろう外出、主に遊びやつきあい、食事、のために利用したと答えている。自転車を利用すると、人々は、行きたいところに簡単に寄ることができ、市街地の中で時間を過ごすことになる。自分の車に閉じこもって市街地を通り抜け目的地との間を往復するだけとは正反対だ。
商店やレストランからも、自分たちの通りに自転車レーンが新設されてから売り上げが伸びたという声がしばしば寄せられる。いつでもいいから週末の午後、カリフォルニア州ロングビーチの賑やかなダウンタウンをのぞいてみるといい。そこでは往々にして、車の駐車スペースより駐輪自転車の方が数が多い光景が見られる。
全米スポーツ用品協会(National Sporting Goods Association)がまとめた全米対象のデータによると、自転車利用者数は過去20年間で5,000万人余りから4,000万人弱へと減少している。しかし、年間の自転車利用者数が減少しているにしても、通勤通学や日常の活動などに頻繁に利用する人の数は、現実にこの10年間で増えてきているのである。
自転車シェアリングは、こうした利用者の増加を促し、もう一度二輪車に乗ってみようとする人を増やす力になり得る。自転車シェアリング制度に伴い自転車の姿が目につくようになれば、自転車利用が有効な交通手段であることを人々に改めて認識させるだけでなく、自転車人口増加の後押しにもなる。サンアントニオやワシントンDCを例にとれば、自転車シェアリングが開始されて以来、自転車の売上が増加しているのである。
さらにまた、都市が自転車用のインフラ整備を進めていくにつれ、自転車が体に良いことがより明らかになってきた。実用目的で日々の通勤に自転車を使うのは、ジムでトレーニングするより体力向上に効果があるという研究結果がでている。
車通勤をやめて自転車通勤に切り替えると、最初の1年で4.5キログラム以上体重を減らすことができる。医療保険会社のヒューマナ(Humana)がルイスヴィルで従業員向けにバイクシェアを実施し、また、自転車メーカーのトレック(Trek )、広告会社クリスピンポーター+ボガスキー(Crispin Porter + Bogusky)と組み、3社で自転車シェアリングのBサイクルを立ち上げたのは、こうした健康上のメリットも理由の一つに挙げられる。
別の医療保険会社ブルークロス・ブルーシールド(Blue Cross Blue Shield)は、シャ―ロット、ヒューストン、オマハ、ツインシティーズなどで実施されている幾つかの自転車シェアリング・プログラムの主要スポンサーになっている。
全米から1,300余りの都市の代表が集まる全米市長会議は、2012年の会議で、「これまで歩行者や自転車向けのプロジェクトに予算を割いてきた自治体は、生活の質の向上、住民の健康増進、地域の不動産価格の上昇、地域の交通手段の多様化、大気汚染の減少といった利益を得ている」と言及している。
同会議では「交通の移動性を高め、交通手段の選択肢を増やすための対策として、自転車シェアリング・プログラムのような代替交通手段を支援する」と決議した。これらの利点に加え、自転車シェアリングによって、子供の頃以来自転車に乗ることなどなかったような人たちが、自由、利便性、自転車に乗る喜びといったものを手にすることができる。
このプログラムが成熟し、新たに参入する自転車シェアリング・プログラムが増えていけば、自転車シェアリングは将来、都市生活には標準的なサービス、進歩的な地域社会にはなくてはならないサービスになるかもしれない。
<以下は表の説明>
【表タイトル】
2013年5月10日時点で米国において実施中および計画中の公共自転車シェアリング・プログラム
【項目 左から右へ】
開始年 都市 自転車台数 ステーション数
【上記項目の「自転車台数」および「ステーション数」の下にある補足】
現在実施中もしくは2013年、2014年に開始予定のもの。( )内は2013年[ ]内は2014年に開始予定。
【地域名 上から下へ】
オクラホマ州タルサ
コロラド州デンバー
アイオワ州デモイン
ミネソタ州ミネアポリスおよびセントポール
コロンビア特別区およびバージニア州、メリーランド州にわたるワシントン首都圏
マサチューセッツ州大ボストン都市圏
コロラド州ボールダー
フロリダ州(ブロワード郡)フォートローダーデール*
ハワイ州カイルア
フロリダ州マイアミビーチ†
ネブラスカ州オマハ
テキサス州サンアントニオ
サウスカロライナ州スパータンバーグ
ノースカロライナ州シャーロット
テネシー州チャタヌーガ
テキサス州ヒューストン
ミズーリ州カンサスシティ
ニューヨーク州ロングビーチ†
テネシー州ナッシュビル
オクラホマ州オクラホマシティ
カリフォルニア州ロングビーチ*
テキサス州アスペン
テキサス州オースティン
ニューヨーク州バッファロー
イリノイ州シカゴ
オハイオ州コロンバス
テキサス州フォートワース
カリフォルニア州フラートン*
ニュージャージー州グリーンビル*
ニュージャージー州ホーボーケン
ネバダ州ラスベガス
カリフォルニア州ロングビーチ*
カリフォルニア州ロサンゼルス
フロリダ州マイアミ
ニューヨーク州ニューヨーク*
アリゾナ州フェニックス
ユタ州ソルトレイクシティ
カリフォルニア州サンディエゴ
カリフォルニア州サンフランシスコおよびベイエリア*
カリフォルニア州サンタモニカ
フロリダ州セントピータースバーグ
アイダホ州サンバレー
フロリダ州タンパ
ミシガン州アナーバー
メリーランド州ボルチモア
アイダホ州ボイシ
オハイオ州シンシナティ
ワイオミング州ミルウォーキー
ペンシルベニア州フィラデルフィア*
ペンシルベニア州ピッツバーグ
オレゴン州ポートランド
ワイオミング州(キング郡)シアトル*
† ニューヨーク州ロングビーチのデコバイクはハリケーン・サンディによる被
災が原因で現在運営を中断している。マイアミビーチのデコバイクは近隣のサーフサイド、ベイハーバー(両方ともフロリダ州)の自転車シェアリング・プログラムの運営にもあたっている。
*多数の都市が、目標期限を2013~2014年期以降に設定する拡大計画を持つ
フロリダ州(ブロワード郡)フォートローダーデール:2016年に500台まで拡大
カリフォルニア州アナハイム:2022年までに自転車を400台に、ステーションを40カ所に拡大
カリフォルニア州フラートン:長期目標、自転車515台、ステーション50カ所
サウスカロライナ州グリーンビル:これからの数年間で自転車50台、ステーション10カ所を目指す
カリフォルニア州ロングビーチ:長期目標、自転車2,500台、ステーション250カ所
ニューヨーク州ニューヨーク:長期目標、自転車1万台、ステーション600カ所
ペンシルベニア州フィラデルフィア:長期目標、自転車1,600~2,000台、ステーション160~200カ所
アリゾナ州フェニックス:長期目標、自転車1,000台
カリフォルニア州 サンフランシスコおよびベイエリア:長期目標、自転車6,000~1万台ワイオミング州(キング郡)シアトル:2017年までに自転車2,200台、ステーション200カ所を予定
備考:表は2013年5月10日時点での●11【先進型】公共自転車シェアリング・プログラムの状況を示す。私的プログラム(例:企業あるいは大学)および既存のレンタル自転車は含まれない。自転車、ステーションの数について詳細な記載のない漠然とした拡大計画はこの表から外してある。
出典:ジャネット・ラーセン(アースポリシー研究所)編 2013年5月 www.earth-policy.org.
Copyright c 2013 Earth Policy Institute
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ジャネット・ラーセンはアース・ポリシー研究所の研究担当部門長。
データやその他の情報についてはwww.earth-policy.org.を参照してください。
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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue, NW
Washington, DC 20036
翻訳担当:酒井靖一、古谷明世、チェッカー担当:保科京子)