ハンガリーでのバラトン合宿の前に、バラトンメンバーがセットしてくれた「脱原発国」オーストリアの取材で、ウィーンに来ています。
オーストリアは、かつて原子力発電所(ツヴェンテンドルフ原発)を建設しましたが、1978年11月に行われた国民投票で、50.47%が反対という結果となったため、完成した原発を稼動させないことを決め、現在に至っています。
日本だったら「投資を回収しなくてはならない」云々、建設した以上は何としても動かそうとするのでしょうけど、国民の声をきちんと聞いて、稼働しないことを選んだのは本当にすばらしいことだと思います。
オーストリアのエネルギー源は、水力が主力で、次いで火力、水力以外の再生可能エネルギーが少し、残りは近隣国から輸入しています。
自国内では「脱原発」を果たしたオーストリアですが、最近、さらなる動きがありました。他国から輸入する電力についても「原発による電力は輸入しない」という法律がこの7月に成立したのです。
この情報は英語ではほとんど出ていないため、オーストリアのバラトンメンバーに詳細を問い合わせていたところ、そのやりとりを見ていた(そしてドイツ語もできる)デニス・メドウズ氏がいろいろ探して、英語の情報を見つけてくれました。抜粋してご紹介します。
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オーストリア、100%原発ゼロへ(Austria to go 100 percent nuclear-free)
http://www.renewablesinternational.net/austria-to-go-100-percent-nuclear-free/150/537/71512/
2013年7月、オーストリアは、原発で発電された電力の輸入を禁止する計画を前進させ、電源表示の義務化を決めた。
7月4日付の(ドイツ語の)報道資料によると、オーストリアの議会は原発で発電された電力の輸入禁止案を可決したと発表した。政策決定から1年以上を経ての法制化である。
ラインホルト・ミッテルレーナー大臣は、「わが国は揚水システムを含む全電源の証明を義務化しただけだ」と主張しつつも、原発で発電された電力の実質的な輸入禁止になることを認めている。
基本的にオーストリアのすべての電力供給事業者は、原発で発電された電力を国外から購入しないと誓約しており、2015年からは全電力の電源表示が義務化される。
批評家は、個々の電子の電源まで遡れないため電源表示は不可能だと訴えてきたが、ドイツではすでに電源表示を実施しており、事業者間で電力購入契約が締結されているのだから、通常、電源構成を知ることは可能だ。
オーストリアの政治家たちは慎重を期して政策を策定している。国外の電力事業者に不当な影響を及ぼす政策だとEUが意義を申し立てる可能性があり。国内に原子力発電所がないオーストリアは、実質的にEU内で生産された特定の製品を禁止すると決定したことになるからだ。
EUがまだ反応していないためか、この件は英語ではほとんど報道されていない。しかし、ドイツの週刊誌デア・シュピーゲル誌は、欧州委員会の報道官が「EU内で合法的に発電された電力に関する制限は存在すべきでない」と発言したと伝えており、オーストリアとの衝突が表面化するのは時間の問題だと思われる。
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~
今日の午前中は、国としての脱原発を決定した国民投票、および今回の法律制定の原動力となった"オーストリアの脱原発運動の大御所"の方々に取材させていただけるということで、とても楽しみです。
・そのときの経緯・国を二分する議論(かろうじて過半数を超えていたわけですから、半分近くの人は違う意見だったのですよね)と判断をどのように進めて「国としての決断」にもっていったのか、世論の分断を(あったとしたら)どのように修復したのか・EUの中で、また日・本を含め原発依存を続けようという向きの多い国際情勢の中で、どのような立ち位置をとっていくのか・現在のエネルギー源の内訳と今後の方向性や見通しなどいろいろうかがいたいと思っています。
さて、建設されたけど一度も運転されていないツヴェンテンドルフ原発ですが、現在は、炉の解体や事故時の対応等のトレーニング施設として、各国の原発技術者に利用されているそうです。
午後は、この原発の見学と取材に連れて行ってもらう予定です。
ツヴェンテンドルフ原発が現在では各国の廃炉トレーニングに使われているように、オーストリアの国民の合意形成のプロセスを各国はひとつの実例として脱原発トレーニングに使わせてもらえるはず!と期待しています。