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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2014年01月03日

私はこう考える「エネルギー基本計画に対する意見(案)」~1月6日までパブリックコメント募集中 (2014.01.03)

エネルギー危機
 

お正月ではありますが、1月6日まで、新しいエネルギー基本計画に向けて、市民の考えを聞くパブリック・コメント(略してパブコメ)募集中です。

新しいエネルギー基本計画は、民主党政権下では「基本問題委員会」が策定にあたっていましたが、自民党に変わって、委員の入れ替え・改組があり、こちらで策定が進められてきました。

基本政策分科会について
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/index.htm

パブリックコメントは、ウェブから、またはファックスか書面で出せます。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213015&Mode=0

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について

意見受付期間平成25年12月6日(金)~平成26年1月6日(月)

こちらが、今出されているエネルギー基本計画案です。

エネルギー基本計画に対する意見(案)
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/13th/13th-1.pdf

原子力については、このように記述されています。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

原子力

(1)位置付け 燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に引き続き活用していく、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源である。

(2)政策の方向性 原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国のエネルギー制約を考慮し、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。

安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、独立した原子力規制委員会によって世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で安全性が確認された原子力発電所については、再稼動を進める。

また、万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを拡充しておくことが必要である。

さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料は、世界共通の悩みであり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

言うまでもなく、「2030年代にゼロへ」とした民主党政権下の基本計画とはかなり違う位置づけになっています(そういう方向にまとまるよう委員を入れ替えたわけですから驚きではありません)

こういった方向性についても、政府はパブリックコメントを通じて、「国民はどう考えているか」を知ることになります。

エネルギー基本計画に対する意見(案)は、60ページちょっとなので、ぜひ目を通していただけたらと思います。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/13th/13th-1.pdf

今回は、各地での意見聴取会も討論型世論調査もありませんので、今回のパブリックコメントがほぼ唯一、ひとり一人の意見を伝える機会です。ご意見、ぜひお伝え下さい。

原発の位置づけのほかに、私が今回の資料を読んで(特に、自分も委員を務めていた基本問題委員会のときのものと比べて)思ったことが3つあります。

○石油など化石燃料の位置づけと説明の比重が大きくなっている。化石燃料につ
いてこれぐらいしっかりと書き込むのなら、再生可能エネルギーについても、
もっとしっかり書き込めたのではないか。

○コミュニケーション・対話について、認識が進んだように思える。たとえば、

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

双方向的なコミュニケーションの充実

エネルギーをめぐる状況の全体像について理解を深めてもらうための最大限の努力を行う一方で、エネルギー政策の立案プロセスの透明性を高め、政策に対する信頼を得ていくため、国民各層との対話を進めていくためのコミュニケーションを強化していく。

原子力については、原子力関連施設の立地地域の自治体や住民との関係は極めて重要な要素である。

地域の実情に応じ、科学的に検証した情報を発信するとともに、原子力が持つリスクやその影響、リスクに対してどう向き合い対策を講じていくのか等について、丁寧な対話を行うことが重要である。

(中略)

例えば、多様な主体が総合的に議論する枠組みへの実現に向けて、まずは全国の自治体を中心に地域のエネルギー協議会を作り、多様な主体がエネルギーに関わる様々な課題を議論し、学び合い、理解を深めて政策を前進させていくような取組について、今後、検討を行うこととする。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

ぜひ「広報」「情報発信」だけではなく、双方向型のコミュニケーションや対話を進めてもらいたいと思います。

前に委員会に出ていたときに学んだのは、たとえば、資源エネ庁の中でも、ある方向性や施策について、強く推進する人たちもいれば、反対する人たちもいる、ということです。その綱引きが微妙な文言として、こういった「基本計画」のような文書に反映されます。

今回の文書から、双方向型コミュニケーションや対話について、その必要性を強く感じる人たちが出てきたことがわかります。一方で、それほど賛成ではない人たちもいるはずで、省内では綱引きが行われているのではないかと思います。

そういったとき、「国民がそれを強く望んでいる」ということは、対話推進派にとっての力になります。そして、「国民がそれを強く望んでいる」ことは、今回で言えば、パブリックコメントを通じてしか伝えることができません。

自民党になって「国民的議論がなくなってしまった」と懸念を表明される方がたくさんいらっしゃいますが、ぜひその懸念を伝えていただけたら、と思います。

○3つめは、「高レベル放射性廃棄物について、国が前面に立って取組を進める」 ということについて。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

使用済燃料は世界共通の悩みである。

原子力利用に伴い確実に発生するものであり、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を確実に進めることが不可欠である。このため、使用済燃料対策を抜本的に強化し、総合的に推進する。

高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める。

これに加えて、最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理することは核燃料サイクルの重要なプロセスであり、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けて政府の取組を強化する。あわせて、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発を進める。

核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、引き続き着実に推進する。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

この点について、私はこのように考えています。

・今後脱原発をしたとしても、すでにある核廃棄物をどうするかという問題は残 るので、いずれにしても最終処分地はつくっていかないといけない。

・ときどき原発推進派から「すでに核廃棄物があるのだから、原発を動かしても 同じ」という、"毒を食らわば皿まで"的な意見を聞くが、原発を使い続けれ ば、核廃棄物が増えていく。

・処分方法も場所も決まっていない現在、核廃棄物を増やし続けるべきではない。 処分方法と場所が決まってから、今後も原発を使うかどうかを考えるべき。

・最終処分地について、自治体に任せて待っていても手が挙がらないだろう、進 まないだろうという認識はおそらく正しいと思う。

・ただ、現在の進め方には3つ問題がある。

・1つ目は、「待っていても進まない」という認識は正しいが、「それはなぜか」 という分析は正しいのだろうか? 「自治体が住民にちゃんと説明できていな いからだ、自治体では住民の不安を鎮められない」という見立てで、「国がき ちんと科学的に説明すれば納得するだろう」と思っているとしたら、違うので はないか。

・自治体の住民への説明が不足・効果的でないという以前に、根本的に、これだ けの地震国の日本で、原発を維持して増え続ける核廃棄物を地層処分すること への不安や不信が根本にあるのではないか。

・「国が科学的に説明しますから、ここでやりましょう」と言われても、根本的 な不安とか不信は払拭できないだろう。

・地層処分の科学的な説明だけでなく、日本は原発をこれからどうしていくのか、 という大きな枠組みが不確定な間は、話が進まないのではないか。

・2点目は、今回、自治体に任せていられないということで、国が前面に出るわ けだが、短期的に進めるつもりだったら失敗するだろう。逆効果になるおそれ がある。

・最終処分地を決めることができた世界の数少ない例であるフィンランドにして もスウェーデンにしても、何十年という時間をかけて、徹底的に情報公開して、 信頼関係をつくって、それで受け入れが決まった。

・国が今回、「国が前面に出る」といったとき、長期的に腰を据えて、しっかり と国が住民が向き合って、情報開示をして、対話をしていこうというのだった らよいが、「治体ではなかなか決まらないから、短期間に決めるために国が出 ていくよ」いうことだと、うまくいかないだろう。

・基本問題委員会の時にも繰り返し言った(そしてほとんど通じなかった)こと だが、人々が何かを受け入れるのは、理性的な説明や説得の一方的な受け手と なる時ではない。説明されたことに対して、能動的にワガコト化して、自分に 引き付けて考え、「こういうときはどうなんだろう?」といった問いを発しな がら、情報を求め、考えて、自分の意見を口にして、ほかの人の意見を聞いて、 また考えるという、対話のサイクルがあってはじめて、何かを受け入れること ができるのだと考えている。

・対話のサイクルには時間がかかる。国がそのかかる時間もわかったうえで、 「前面に出て進める」つもりなのだろうか。その覚悟があるのだろうか。

・3番目は、高レベル放射性廃棄物の定義そのものについて。日本では、「高レ ベル放射性廃棄物」といったとき、いわゆる使用済み核燃料を指すのではなく、 使用済み核燃料を再処理した後の廃液やそれを固めたガラス固化体を指す。

・つまり、再処理とや燃サイクルを前提とした上での高レベル放射性廃棄物の最 終処分地ということになる。

・原発の今後に関して、再処理や核燃サイクル自体をどうするかを考え直す必要 がある現在、それを前提として話を進めることはおかしいし、問題だと思う。

~~~

報道によると、今回の基本計画に「原発の新増設」を盛り込むべきだという委員の意見もあったが、「国民感情的に今はそのタイミングではない」と外したとのこと。

本当に原発を新増設する必要があると信じているなら、たとえ国民感情が逆風になったとしても、しっかり打ち出し、説明し、説得すべきでしょう。それを「いまは出さない方がよい」という"距離感"で政策を操作するのはおかしな話です。(政策の出し方を調整しているだけだよ、と言われるのかもしれませんが、、、)

原発の新増設をどうするのか、つまり、日本はこれから原発をどうしていくのか、エネルギーをどうしていくのか、という本質的な方向性の話を、時間がかかることを前提に、先送りせずに、しっかりと議論し、対話し、進めていってほしいと思います。

新しいエネルギー基本計画に対する私の考えをいくつか共有させていただきましたが、みなさんにもそれぞれのお考えや関心・懸念がおありだと思います。

パブコメがあまり集まらなければ、「国民は政府の考えている方向性でよいと思っている」と理解されてしまいます。「そうじゃないよ」という方、ひと言でよいので、ぜひ、伝えて下さいね!

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