南仏でのバラトン特別合宿と、モンペリエで開催された第3回レジリエンス国際学会に参加するための17日間の海外出張から戻りました~。
途中、フェイスブックで写真と様子をお伝えしていましたが、ブログにもアップしていますので、よろしければご覧下さいー。
レジリエンス国際学会には、67ヶ国から800人以上が集まり、欧・米・オーストラリアと途上国を中心に、「レジリエンス」への関心が高まり、いまや開発政策の新しい目標になっていることを実感しました。
外的なショックにもしなやかに立ち直る力=レジリエンス。
私は、「沿岸地域の脆弱性とレジリエンス」という分科会で、「3.11からの学び」という発表をして、宮古市姉吉地区の「津波の石碑」の話、小中学生たちがふだんの防災教育をいかして互いに助け合いながら難を逃れた「釜石の奇跡」などからの学びを共有しました。他の発表やその後のディスカションでもいろいろな学びや気づきがあり、勉強になりました。何らかの形でお伝えできればと思います。
さて、4月にさせてもらったレスター・ブラウン氏へのインタビュー、現在販売中の『世界』に掲載されています。日本への厳しいコメントも......よかったらぜひご覧下さい。
そのレスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのプレスリリースを、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。いつも翻訳してくれるボランティアメンバーのみなさんに感謝!です。
グラフ等はこちらをどうぞ。
http://www.earth-policy.org/indicators/C51/temperature_2014
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
2013年、平均気温を上回ること連続37年目に
www.earth-policy.org/indicators/C51/temperature_2014
ジャネット・ラーセン
※エコ・エコノミー指標とは、アースポリシー研究所が持続可能な経済の構築状 況を測定するために追跡している12の指標のことである。その中の一つ、地球 の気温からは、その動きを捉えることでこの惑星の相対的な健康状態を知るこ とができる。
昨年をもって、地球の気温が平年を上回るのは37年連続となった。米国航空宇宙局(NASA)のデータによると、2013年の世界平均気温は摂氏14.6度で、20世紀の平均気温より約0.6度高かった。
1万1,000年前に農業が始まって以来、人類文明は比較的安定した気候に恵まれてきた。これが今、変わりつつある。人口の増加と、長い時間をかけて地表を形成する地質学的プロセスとが競合するからだ。現在の世界人口のうち少なくとも40億人は生まれてこのかた、年平均気温が20世紀の平均値を下回る年を一度も経験したことがない。今や気候に関して「平常」とは何か、が問題になっている。
2013年はエルニーニョ現象(地球の気温を押し上げやすい海洋・大気循環パターン)が発生しなかったにもかかわらず、1880年の観測開始以来最も気温の高い年の上位10年に入った。この上位10年は、1998年(強いエルニーニョ現象が起きた年)を除けばすべて2000年以降で占められている。しかし、重要なのは年単位の記録よりも長期的な傾向である。地球の気温の場合、明らかに上昇の一途をたどっている。
【グラフ】地球の平均気温(1880~2013年)出典:米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所(GISS)
1970年以降、気温は10年ごとに平均約0.16度ずつ上昇してきた(www.earth-policy.orgのデータを参照)。産業革命以降、森林や化石燃料の燃焼による排出量が急増するにつれて、熱をとらえる二酸化炭素の大気中濃度が上昇し、2013年には過去最高の400ppmに達した。二酸化炭素濃度が最後にこれほど高かったのは300万年以上昔にさかのぼる。この頃は地球上の氷が今よりはるかに少なく、海面は大幅に高かった。
1901年以降、海面は19センチメートル上昇した。そのほとんどが水の熱膨張によるものだが、山岳氷河や極地の氷冠の融解も寄与を増しつつある。北極海の氷量は減っており過去最少記録を更新している。浮氷が解けても海面水位への直接の影響はないものの、反射力の強い氷が縮小すると吸収される太陽光が増えるため、北極地方では温暖化が低緯度地域のほぼ倍の速さで進み、さらに氷の融解が加速する。これが顕著なのがグリーンランドだ。もしグリーンランドの氷冠がすべて解けてしまえば、地球の海面は7メートル上昇することになる。早くも2100年には海面が最大で2メートル弱上昇する可能性もあり、世界中の海岸線を劇的に書き換えることになるだろう。
気温が徐々に上昇していくにつれ、深刻な混乱のリスクも増大する。気温が雨か雪かの境目のときには、わずかに上昇するだけでも氷点を超えてにわか雨に変わる。雪塊氷原の融解で徐々に流れ出る水が生活を支えている地域では、これは大きな違いである。その予兆がカリフォルニア州で見られる。2013年に同州では降水量が平均のわずか1/3と最少記録を更新した後、2014年1月下旬には同州シエラネバダ山脈の雪塊氷原が平年の12%にまで縮小した。
地球の平均気温が上昇するにつれ、世界では暖かい日が増えた。例えば米国では近年、最低気温よりも最高気温の記録のほうが更新されることが多い。2013年には確かに異常低温も発生したものの、この1年間に低温の記録が更新された地域は地球上どこにもなかった。
ここ数十年、特に欧州やアジア、オーストラリアなどいくつかの地域で熱波が増加した。オーストラリアでは2013年、とてつもない高温が続き、史上最も暑い年となった。同年12月には平均気温を超える月が連続17カ月目に突入している。局地的な熱波は2014年に入ってからも続き、1月2日に内陸部のムーンバ町では気温が49度を超えた。クイーンズランド州では熱ストレスで命を落としたコウモリが推定10万匹にのぼる。
地球温暖化で乾期と雨期の両方の規模が増大することが予測されている。地球が暑くなるとさらに頻発が予測される現象の例が、2013年7~8月に中国南部の大半を襲った極度の干ばつと高温だ。7つの省で降水量が平年の半分にも満たず、800万ヘクタールの穀物地帯が水不足に陥った。損害額は約80億ドル(約8,300億円)近くにのぼる。米国立気候データセンターよると、その熱波は「地理的範囲から見ても、期間や強さから見ても、観測史上最も猛烈なものの一つであり、300カ所を超える観測所で1日の最高気温が40度を上回った」という。
国民の4人に1人が慢性的な栄養不足に陥っているアンゴラとナミビアでは、乾燥化の傾向が30年間続くなか、2013年の降水量は前年に続いて極端に少なかった。ブラジル北東部では、この50年間で最も深刻だと考えられる干ばつが2012年末から2013年初頭まで続き、1年間雨が全く降らなかった地域もいくつかあった。その損害額は約80億ドル(約8,300億円)にのぼる。それが2013年12月には、2カ月分の雨が数時間で降るという90年間で最大の豪雨が発生し、深刻な洪水と地すべりを引き起こした。
インドとネパールの一部でも2013年6月に記録的な降雨が観測され、インド北西部ではその月の平年の月降水量の2倍に達した。豪雨による洪水と地すべりの死者数は6,500人を超えた。
再保険会社エーオン ベンフィールドによると、2013年に損害額が最も大きかった気象災害は中欧で発生した春の洪水だ。その額は220億ドル(約2兆3,000億円)となり、そのうち保険が掛けられていたのはわずか1/4だった。6月にカナダのアルバータ州で発生した洪水の損害額は52億ドル(約5,400億円)にのぼり、同国で史上最も損害額の大きい自然災害となった。カナダの大手損害保険会社は、最高経営責任者(CEO)が「深刻な気象現象がもっと極端になり発生頻度が高くなる」と警告した直後に、保険料を最大20%引き上げることを発表した。これはほんの一例で、気候変動が純利益にもたらす危険に気づく企業が増えている。
暴風雨が発生しやすい沿岸地域から完全に撤退した保険会社もいくつかある。温暖化が進むと熱帯低気圧(ハリケーン)の発生頻度が高まると必ずしも予測されているわけではない。しかし、発生すると熱帯低気圧はさらに熱エネルギーが加えられることで、より猛烈に発達する可能性がある。高潮をより危険にする海面上昇や、脆弱な地域における人口とインフラの増加と合わせて、これが費用が膨らむカラクリである。
2013年の熱帯暴風雨の発生数は1980年以降の平均を上回ったが、上陸数では平均を下回った。9月にはメキシコが北大西洋と東太平洋で同時に発生したハリケーンに、国土の両側から挟み撃ちされるという異常な経験をした。そして11月に西太平洋で発生した、上陸台風の中で最大の超大型台風30号「ハイエン」が地すべりを引き起こしてフィリピンの広範な地域を破壊し、8,000人の命と数百万人の家を奪った。最大瞬間風速で毎秒105メートルを記録した暴風と巨大な高潮がもたらした損害は推計130億ドル(約1兆3,000億円)にのぼる。
こうした気象現象はいずれも、人為的な気候変動が始まる前から起こっていた可能性があるが、気温が上昇するにつれて、驚くような気象による危険が増しつつある。さらに、人類の時間尺度では地球温暖化の影響が取り返しのつかないものになるという、目に見えない閾値に達する恐れ(大きな氷床の消失など)が現実味を帯びている。
変化が速ければ、適応策の実施は困難または不可能になる。文明の安全のために、世界中の各国政府は気温上昇を2度に抑えるという目標に同意した。しかし、化石燃料の燃焼と森林伐採を劇的に減らさなければ、その2度を勢いよく超えてしまうだろう。これには投資が必要だ。しかし、何も行動しなければ、費用は法外に膨れ上がるに違いない。
地球の気候を安定化させる計画については、『仮邦題:今こそプランBを』"Time for Plan B"をお読みください。詳細についてはwww.earth-policy.orgをご覧下さい。
ジャネット・ラーセンはアースポリシー研究所の研究担当部長。
メディア:
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研究:
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