先日参加していた、フランスでのレジリエンス国際学会で、「米国では若者が、温暖化を放置していると、政府を訴えている」という話を聞きました。
「ぜひ日本のみなさんにもお伝えしたい!」と、いくつかの海外メディアで取り上げた内容をもとに、ご紹介します。
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
PolicyMicによると米国中で、大勢の若者が自分たちの将来を壊しているとして連邦政府を訴えています。重大な問題に対する下手な政策は、憲法で保障されている権利の侵害にあたるというのです。
ことの発端は2011年。数千人の若者が30人以上の環境・憲法を専門とする教授たちの支援を受けて、環境保護庁や農務省、国防総省、商務省、エネルギー省、内務省を訴えました。個別行動に関しては全50州で訴訟が起こされてきました。そのすべてが、気候変動に対して政府が行動しないことは、公共信託法理(PublicTrust Doctrine)――公共の合理的使用のための資源保護を政府に義務付けるもの――に基づく人々の権利を侵害していると主張するものでした。
連邦訴訟はすでにD.C.巡回区控訴裁判所で行われています。訴状には「人間がもたらした気候変動に政府が立ち向かわないことによって、若者の幸福が直接的な影響を受ける。政府が炭素排出量を早急に減らすために今すぐ行動を起こさなければ、若者は取り返しのつかない被害を受けることになる。これまで行動してこなかったため、時間は相当限られている。これ以上遅れずに行動しなければ、地球の気候システムは引き返せない地点を越えてしまう。しかし政府が今すぐ、大気中の炭素を350 ppm以下に減らす計画を立てれば、最悪の影響を避けることは可能だ」とあります。
Al Jazeera Americaによると、この350 ppmという数字は以前NASAの科学者であったジェームズ・ハンセンによるもので、ハンセン氏はこの訴訟を科学的な面で支援しています。温室効果ガスを抑制するための政治的・法的取り組みを追求するために2013年にNASAを辞めたハンセン氏は、「将来世代にとって破滅的な結果を避けるため、原告のために、気候を安定させるのに何が必要であるかに関して科学論文を書くことを承諾した」と話しています。ハンセン氏とその仲間は、地球の破滅を避けるためには大気中の二酸化炭素を350 ppm以下にしなければならないと判断し、「そのためには排出量を年間6パーセント減らす必要がある」と言っています。
これに対して、環境保護庁は「政府はすでに適切な気候行動計画を有している」と反発していますが、ハンセン氏は「その計画は若者にとって破滅的な結果を招くもので、現実的なものでないどころか、政府は環境をさらに破壊する化石燃料の抽出を促進している」と言っています。
若者たちの弁護士であるジュリア・オルソンによると、化石燃料業界や製造業界は政府の側に立ってこの訴訟に参加しているといいます。PolicyMicによると、製造業界は「この訴訟は、国の経済発展や生産力、社会政策、安全保障上の利益、国際的立場に多大な影響を及ぼす」といって原告側に反論しているのです。
これまでにいくつもの法廷で若者の訴えが退けられてきましたが、おそらく問題はそこではありません。2011年に最初に訴訟が起こされた当時、この問題を取り上げたThe Guardianによると、原告側の若者の一人で当時16歳の少年は「気候変動がお金の問題でも、権力の問題でも、便利さの問題でもなく、私たちの将来に関する問題であり、現在、そして将来のすべての世代の存続をかけた問題であるということを世界に知らせたい」と語っていました。
若者たちは気候変動について世間の人々に知ってほしいと願って政府に行動を要求し、注目を集めているのです。気候変動を「重大な問題」であると考えている米国人が3分の1ほどにすぎないことを考えれば、それこそ大切なことだとPolicyMicは結んでいます。
(参考情報):
http://www.policymic.com/articles/88921/young-people-across-america-are-now-suing-the-government-and-this-image-shows-why
http://america.aljazeera.com/articles/2014/5/4/youth-sue-governmentforclimateinaction.html
http://www.theguardian.com/environment/2011/may/05/sueing-us-government-climate