「ダイバーシティ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ダイバーシティとは「多様性」という意味です。企業の組織論やマネジメントの文脈で使われるときには、さまざまな背景やスキルを持った多様な人材を雇用し、その個性を生かして組織の力を高めようとする取り組みを指すことが多いですね。
特に米国では人種や性別での差別にも関連する指標として、どの企業も軽視できない指標の1つとなってきています。
少し前に、Google社が自社のダイバーシティの現状について報告し、それは望む姿になっていないと正直に認め、それでもこういった情報を公開することが大事だと考えるという発表をし、あちこちで評判になっています。
Yahoo!ニュースに投稿した記事からご紹介しましょう。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/edahirojunko/20140617-00036454/
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
もともと人種的多様性に富んだ米国企業は、一般に日本企業よりはるかに進んでいますが、先進的なイメージの強いシリコンバレーの企業は、意外にもダイバーシティではほかの業界に後れを取っているようです。
米国Google社は2014年5月末、自社のダイバーシティに関するデータを初公開しました。それによると、Google社の全従業員のうち圧倒的多数の70%は男性が占め、女性は30%しかいません。職種別に細かく見ると、技術系の83%、管理職の79%を男性が占めるなど、さらに男女の差が開きます。唯一、男女間のバランスが取れているのは、主に庶務や事務といった非技術系の職種です。
人種別に見ると、白人61%、アジア系30%、混血4%、ラテン・アメリカ系3%、アフリカ系2%と、白人の占める割合が突出しています。管理職に限ってみれば、白人の割合は72%に上ります。。Google社は、ダイバーシティに関して自分たちの望んでいるような職場になっていないこと、そして従来の「公表しない」立場は間違っていたと認めています。
その上で同社は、IT企業が女性や人種的マイノリティーを採用するのが難しい理由として、コンピュータサイエンスの学位取得者の属性がアンバランスであることをあげています。米国では取得者のうち、男女別で見ると女性は18%のみ、人種別ではアフリカ系8%、ラテン・アメリカ系がわずか6%に過ぎないといいます。
そのため、2010年以降、女性にコンピュータサイエンスの教育機会を促す団体に4,000万ドル(約40億円)以上を提供してきたことや、Historically BlackColleges and Universities(HBCU)と呼ばれるアフリカ系の人々のための高等教育機関と協力して、コンピュータサイエンスの講義内容の質向上や出席者数を増加に取り組んできたとアピールしています。
米国企業のダイバーシティに関しては、DiversityInc社が継続的な調査を行い、毎年「Top 50 Companies for Diversity」というランキングを発表しています。このランキングは、雇用、人材育成、CEO や上級役員のコミットメント、サプライヤーという4つの基準で評価しています。従業員の属性については、人種、ジェンダー、民族、年齢、障害者、LGBT(性的マイノリティ)など、幅広い観点での多様性が重視されています。
日本国内では、経済産業省が2012年度から、ダイバーシティ経営によって企業価値を高めた企業を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」を実施。ベストプラクティスとして発信し、各社の自発的な取り組みを後押しすることで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げようとしています。
経産省では「多様な人材」として、女性、外国人、障害者、高齢者をあげていますが、「100選」に選ばれている企業の取り組みの大半は、「女性」を対象にしたものです。ダイバーシティの推進といっても、いまのところ、男女間の雇用機会均等の粋をあまり出ていないといえそうです。ダイバーシティをいかに多様な角度から推進していけるかどうかに各社の本気度が表れるでしょう。
米国でダイバーシティを推進している企業の方々に、その理由を聞いたことがあります。
「きちんとダイバーシティを推進していないと、差別だと訴訟が起こる恐れがあるから」という方もいましたが、多くの方が「それが組織の力を強くするから」と答えていました。市場も多様であり、同じような背景・考え方の人々の間からはイノベーションは生まれない、というのです。
日本の現状は、労働力として女性を雇用・登用する必要があるから、という理由が大きいように思われます。「組織の力を強くする」というダイバーシティの潜在力をもっと活かせるようになると良いですね。
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昨夜は、「対話力を身につける勉強会」の第4回でした。
組織や社会での多様性を力にするためには「対話力」が必須ですが、昨日の課題図書はまさにそういった面での対話力についての本でした(対話にも目的がいろいろあり、目的によって対話の種類や進め方もいろいろあります)。
『こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?』(森田英一著)
企業研修などで「男性10人のチ-ムと、男女5人ずつのチームではどちらが多様性があると思いますか?」と尋ねることがあります。「男女がいるチーム」と答える人が多いのですが、男女がいても同じような考え方の人々だったり、あるいは思ったことや違う意見が言えないチームだったら、それは多様性に富んだチームではないですよね?
日本では「ダイバーシティ」の指標として、社員の男女比、障害者雇用率などを取り上げるところが多いようですが、そういった見かけの(必要条件としての)ダイバーシティだけでなく、考え方や経験などの多様性が力を生み出す本当の意味でのダイバーシティを高めることが、組織にとって大事なのだと思います。
見かけのダイバーシティは対話力がなくても高められるでしょうけど、多様な考え方や経験を力に転換していくためには、違いを認め、尊重し、お互いの共通部分や違いを丁寧に探求していく「対話力」が必須だと考えています。