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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2014年07月03日

アースポリシー研究所「世界の風力発電の伸び、2013年の鈍化から回復の見込み」 (2014.07.03)

エネルギー危機
 

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。世界の風力発電の状況です~。

世界で風力発電を行っている国は何カ国になるでしょうか? 

世界一の風力発電大国はどこでしょう?

中国の電源構成中、風力発電は何番目の大きさでしょうか?

答えは文中にあります(^^;

グラフはこちらからご覧下さい。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

世界の風力発電の伸び、2013年の鈍化から回復の見込み

J・マシュー・ローニー

2013年末時点でウィンドファームを設置している国は85を超え、総発電容量は31万8,000メガワット、欧州連合(EU)の人口5億600万人分の家庭用電気を十分賄えるほどの量になる。

世界風力エネルギー協会(GWEC)が出した最新のデータによると、風力発電業者による2013年の発電設備容量は世界全体で3万5,000メガワットだ。2012年の4万5,000メガワットよりは減少したが、新規設備容量が前年を下回ったのは、今回を含めこの25年間でわずか2度しかない。

【グラフ】世界の風力発電の年間設置容量(1990年~2013年)

新規設備容量が落ち込んだのは、主に、米国で2012年に1万3,000メガワットもの記録的な量のウィンドファームが設置された後、それが90%以上も激減したためだ。米国は世界2位の風力発電国であり、約6万1,000メガワットの容量を保有しているが、政策面で長期的な視点を欠いているためこのような増減を何度も繰り返している。

新規設備容量は少なかったものの、2013年の米国の風力発電には明るい話題が多かった。米国にはアイオワ(27%)、サウスダコタ(26%)など、風力発電が全電力中少なくとも12%を占める州が9つある。

そのひとつアイオワ州では、2013年12月に19億ドル(約1,900億円)規模の風力発電事業を発表しており、これによって同州の発電容量は今後さらに増えるだろう。事業内容は、ウォーレン・バフェットが率いるミッドアメリカン・エナジー社が、合計1,000メガワットを超えるシーメンスのタービンを購入し、そのすべてを同州の風力発電向けに使用するというものである。2015年の完成時には、アイオワ州で風力発電が全電力に占める割合は最低でも33%にまで上がる見込みだ。

電力系統に占める風力発電の割合は、1万2,400メガワットという全米一の風力発電容量を持つテキサス州でも高まっている。テキサス電気信頼性評議会は、2013年に2,400万の顧客に売却した電力のおよそ10%は風力発電によるものだと発表した。

また、州政府の予算で進んでいる、風の豊かな西部とパンハンドル(最北部)を、人口の多い東部に繋ぐ送電プロジェクトが2014年の初頭に完成すれば、テキサス州は電力系統に流れるクリーンな電力をさらに保有することになる。同州では7,000メガワットの新規風力発電工事が進行中であり、これは国全体で現在建設中の風力発電、1万2,000メガワットの半分以上にあたる。

中国は2010年に米国を追い越して以来、風力発電の設備容量は世界一である。2013年に米国が設置容量を減らしたのに対し、中国では建設が加速し、この年に1万6,000メガワット増えたことで、累積容量は9万1,000メガワットに達した。中国では、風力は、石炭火力、水力に次ぐ第3の電力源としてその役割を一層強め、原子力との差をなんと1.22倍にまで広げている。国家エネルギー局(NEA)は、風力発電コストを2020年までに火力発電に対抗できるようにしたいとしている。(データ参照:www.earth-policy.org.)

【グラフ】主要国における風力発電累積設備容量(1980年~2013年)

テキサスをはじめ世界の多くの他の地域と同じく、中国でも風力資源が最も豊かな場所のいくつかは、電力需要の多い大都市から遠く離れたところにある。現在進んでいる高圧送電線の敷設工事は、風量の豊かな北部や西部の省と、人口の多い国の中部や東部の省を繋ぐものだ。

その一例が、遠方の新疆ウイグル自治区と人口400万人を抱える河南省の省都、鄭州を結ぶプロジェクトで、2014年初頭に完成した。2020年までに20万メガワットの風力発電を電力系統に流すとの政府の公式目標の実現に重要な役割を果たすのが、こうしたインフラプロジェクトである。

風力発電の設備容量で世界5位のインドは、2013年に1,700メガワットを追加し、累積で2万メガワットのラインを突破した。追加容量は前年より25%少なかったものの、来年以降は劇的に増える見込みだ。

2014年1月、政府は国家太陽光発電導入計画の趣旨に沿い、国家風力エネルギー導入計画を年央には立ち上げると発表した。この計画の狙いは、電力系統の性能を高めたり、風力発電の有利な場所に投資を呼ぶためのインセンティブを設けることで、発電容量を8年以内に10万メガワットにすることにある。

開発はアジアの他の地域でも盛んだ。パキスタンでは2013年に風力発電容量が倍増し、100メガワットになった。2014年に50メガワット規模のプロジェクトが2件稼働すると、容量はさらに倍増する。タイも同じく2013年に倍増した結果、220メガワットの容量を保有するに至っている。またフィリピンには2014年完成予定のプロジェクトが7件あり、完成時には現在の13倍になる450メガワットまで増える見込みだ。

近年中国が急伸するまで、世界の風力発電を主導していた地域は欧州だった。ドイツの風力発電の総設備容量は、2013年に3,200メガワット増えて3万4,000メガワットとなり、世界第3位である。同国北部の4州では常に電力の半分以上をウィンドファームから得ている。

国内の電力需要を満たすうえで風力発電の占める割合を比べると、上位には欧州諸国が並ぶ。デンマークは、風力発電が電力の1/3を占め、2020年までに50%とする目標に向かって着々と進んでいる。ポルトガル、リトアニア、スペイン、アイルランドはそれぞれ20%前後である。実際スペインでは2013年、風力は原子力から電力源第一位の座を奪うまでその差あと1パーセントポイント弱というところまで追い上げた。そして欧州一の経済大国ドイツは、電力の8%を風力で賄っている。

スペインやイタリアやフランスなど、欧州の中でも大規模な風力発電市場を抱える国々の一部では伸びが減速する中、市場規模が小さい国では加速している。ポーランドとルーマニアはいずれも2013年に風力発電の設備容量が36%増加し、それぞれ3,400メガワットと2,600メガワットとなった。トルコでは、プロジェクトの承認手続きに時間がかかるものの、風力発電の設備容量が28%増となり、3,000メガワットに迫っている。

風力の巨大な潜在力があるにもかかわらずこれまでほとんど開発が行われていない地域の一つが、中南米である。ブラジルは、電力の8割を大規模水力発電が占めることでよく知られるが、中南米最大の風力発電の設備容量を有する国でもある。2013年に950メガワット増えて現在は3,500メガワット近くになっている。

ブルームバーグ社のデータによると、政府の入札では2011年から全売電契約の半分以上を風力発電会社が獲得してきたという。この国では2014年から2019年までの間に約1万メガワットの風力発電所が設置される可能性がある。メキシコ、チリ、アルゼンチン、ウルグアイでも2013年に風力発電が増えている。

アフリカでは、2013年に風力発電の設備容量を増やしたプロジェクトは、全土にわたってわずか1件しかない。それはエチオピアの120メガワットのアシェゴダ・ウィンドファームである。最終工事が終わって90メガワットの運転が始まり、この国の風力発電の設備容量は170メガワットとそれまでの2倍以上になった。南アフリカでは2,100メガワットの風力発電が開発中で、2014年だけでそのうち750メガワットが導入される予定だ。

洋上風力発電は、世界中で導入された風力発電の設備容量のうち、わずか2%強を占めるにすぎない。しかしながら、1年間に導入された設備容量は2013年まで7年連続で記録を更新し、洋上風力は急成長しつつある。

世界の洋上風力発電の設備容量7,100メガワットのうち、半分以上が英国のものである。同国の領海内には2013年に新たに730メガワットが設置された。デンマーク、ドイツ、ベルギーではそれぞれ190メガワット以上、中国でも39メガワット導入された。洋上風力発電を初めて導入したのがベトナムとスペインである。米国も初めて導入したが、そのプロジェクトは、メーン州の沖合に極めて小型の実証タービンを一基設置したものであった。

【グラフ】各国で導入されている洋上風力発電の累積設備容量(2013年)

洋上風力発電は依然コスト高な発電技術の一つであるが、陸上風力発電は多くの場合、風力資源の豊富な地域では石炭や天然ガスや原子力に対して、コスト競争力が極めて高い。風力発電機メーカーがタービンの効率を着実に向上させ、1機当たりの発電容量が増えるにつれ、コストは下がり続けている。米国では、風力発電の平均価格が2009年から4割減となっている。

世界の風力発電の新規設置容量は、2013年に伸びが鈍化した後、2014年には勢いを取り戻しておそらく記録を更新するだろう。GWECは、4万7,000メガワットになる可能性があると見ている。そのおよそ半分が中国と米国で建設されるものである(中国は米国の約3倍に相当)。

風力業界、電力消費者、そしてきれいな空気や水を大切に考える人たちにとって、これは朗報だ。しかし、気候変動の影響についてますます切迫した科学的な警告が出されるようになっていることからわかるのは、炭素を排出しない再生可能エネルギー源への移行を、世界はこの先一層加速させる必要があるということである。

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地球の気候を安定化させる計画については、『仮邦題:今こそプランBを』
"Time For Plan B"をお読みください。
データおよびさらなる情報源についてはwww.earth-policy.orgをご覧ください。

メディア関連の問い合わせ
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電子メール rjk[at]earthpolicy.org
電話 (202)496-9290 内線12

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註:為替換算は1ドル=102円

(翻訳:酒井、五頭)

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