長年にわたって世界の環境オピニオンリーダーとして活躍してきたレスター・ブラウン氏が引退を発表しました。
いつかこの日が来ることはわかっていましたが、レスターとの出会いから環境の世界に入り、その後もメンターとしてずっと見守り応援してくれてきたレスターの引退は、本当に寂しく思います。
プレスリリースを翻訳チームの翻訳でお届けします。
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http://www.earth-policy.org/press_room/
アースポリシー研究所 活動終了に向けた今後の予定を発表
2015年6月、創設者レスター・ブラウンが数十年に及ぶ現役生活から引退
ワシントンD.C.: 地球環境保護活動の第一人者であるレスター・ブラウンによって創設された世界有数のシンクタンク、アースポリシー研究所(EPI)は、6月末に閉所予定であることを発表した。50年以上にわたり地球環境問題に取り組んできたブラウンも、同時に引退する予定だ。
「80歳になり自分の人生についてじっくり考えました」とブラウンは語る。「そのうえで、スタッフや協力者、支援者の皆さんに深く感謝するとともに、2015年7月1日をもってEPIの所長の座から退き、同研究所の業務を終了することにしました」
ブラウンはこう続けている。「EPIは、2001年の発足時に設定した目標を達成したと信じています。そして私にとっては今が方向転換するときであり、もう組織の管理という責任を負う時期ではなくなったのです。何か有意義な形でさらに貢献できる問題については、研究と執筆を続けるつもりです」
ブラウン氏の母校であるラトガーズ大学は、2015年後半に「レスター・R・ブラウン著書閲覧室」を設置する予定である。EPIの理事とスタッフは、同大学の計画を伝えられることを大変嬉しく思っている。何より、そこには英語版の原書だけではなく、およそ600冊の翻訳版もすべて揃うのだ。また、EPIのウエブサイトearth-policy.orgの管理業務も引き継ぎ、アーカイブとしての維持管理を行う予定だ。
EPIのスタッフや理事、寄付者は、長年にわたるブラウン氏のリーダーシップに感謝の意を表すとともに、私たちの文明が直面している環境と資源の問題に対する注意の喚起と革新的な解決法の提供において、彼ならではのグローバルな役割を称賛した。
EPIは、創設以来13冊の本を出版しており、2015年春には、14冊目の『仮邦題:大きな転換――化石燃料から太陽・風力エネルギーへの移行』の出版を予定している。また何百という数の、プランBアップデート、エコ・エコノミー指標、データハイライト、ファクトシート、ブックバイト(訳注:EPIの本や研究の一部を抜粋・編集したもの)を発表してきた。プランBとブラウンの取り組みについては、スクリーンスコープ社が製作した2011年放送のPBSのドキュメンタリー番組「仮邦題:プランB――文明を救うための動員」でも特集されている。
ブラウン氏の著書は50冊を超え、43カ国語に翻訳されている。その中にはEPIから出された、『エコ・エコノミー』(2001)、『プランB――エコ・エコノミーをめざして』(2003)、『地球に残された時間――80億人を希望に導く最終処方箋』(2011)、『レスター・ブラウン自伝――人類文明の存続をめざして』(2013)も含まれる。
EPIの理事会は、長年にわたるブラウンのリーダーシップと貢献に感謝しながら、その決断を承認し、決議を可決した。決議にはこのように記されている。「私たち人類が生命を支える地球のシステムを衰退させていくなかで、ブラウンと仲間たちは、50年間、人類に差し迫る持続可能性の問題をほぼ余すところなく、確かな根拠に基づき執筆してきた。
その取り組みの特徴は、揺るぎない正確さと群を抜く能力で、人口の急増、逼迫するエネルギー需要、欲に任せた水の消費、熱帯雨林と漁場の縮小、砂漠の拡大、農地にかかるストレスがもたらす影響を予測したことだ。
こうした課題であっても、ブラウンは常に未来への希望に満ちた行動計画を提案した。ブラウンが文筆家、牽引者、先駆者として驚異的に走り続けたのちも、その生涯をかけた仕事は、『人は何を達成できるか』を問いかけてくる。中国の思想家、老子の言葉が思い出される。『功遂げて身退くは天の道なり』
EPIの共同創設者で副所長のリー・ジャニス・カフマンも、支援者に対してこれまでの努力と貢献に感謝の意を表した。「スタッフや理事会、寄付してくださった方々から、何年にもわたりご支援いただいたことを心からありがたく思っています」とカフマンは話す。
「これまで長い間重要な役割を担ってきた理事のジュディ・グラッドウォール、レイサ・スクリャービン、ビル・マンスフィールド、スコット・マクベイ、ハミッド・タラバティ、ジェレミー・ワレッツキーの各氏には、EPIの解散にあたり引き続き現在も尽力いただい ています。特に理事長のジュディには、今回の動きに関して、知恵を絞ってい ただいたことに感謝しています」
「また、EPIの設立時、財政面で支援してくれたロジャーとビッキーのサント夫妻、そのほかにもゲラート、ゴールドマン、ヒューレット、ジョーンズ、ラナン、マクブライド・ファミリー、シェナンド、ターナー、ウォレス・ジェネティック、ウィーデン、ウィンズロウの各基金、さらに、米国教育基金や国連人口基金にもこれまでいただいた財政支援に対して感謝を申し上げます。
また、個人で寄付してくださった皆さんにもいろいろとお世話になりました。特に、フレッド・スタンバック)、ヘンリー・イングワーセン、ハリエット・クロスビー、枝廣淳子、ジョン・マクブライド、ラニー・ソーントンの各氏にはそのお心遣いを感謝いたします」
「これまでEPIが取り組んできた膨大な仕事は、優秀なスタッフなしでは不可能でした」とカフマンは話す。「私たちの志が実現できたのは、彼らの絶え間ない努力のおかげなのです。特に、EPIにさようならを告げるときまで共に活動を続けてくれるミリセント・ジョンソン、ジャネット・ラーセン、J・マシュー・ロニー、エミリー・E・アダム、ジュリアン・シンプソンの各氏には感謝の念が絶えません。EPIのスタッフの皆さんがこれからも、非常に差し迫った総合的な諸問題に対してそれぞれの分野ですばらしい貢献を続けていくのは間違いありません」
レスター・ブラウンは、ニュージャージー州のトマト農家として社会への一歩を踏み出した。しかし、1956年に国際青年農家交換プログラム主催のプロジェクトに参加し、インドで農家生活を体験すると、彼の世界観とキャリアの方向性が変わった。1959年、ブラウンは、国際アナリストとして米国農務省の海外農務局に入り、その後、海外の農業政策に関して農務長官オーヴィル・フリーマンの顧問を務める。1966年、長官から国際農業開発局の局長に任命されると、発展途上国42カ国で農務省の技術支援プログラムを実施した。
1969年に入ると、ブラウンは政府を離れ、海外開発評議会の設立に尽力した。1974年、ロックフェラー・ブラザーズ基金の支援で、地球規模の環境問題を専門的に扱う初の研究機関、ワールドウォッチ研究所を設立。著書『仮邦題:持続可能な社会を築く』で、持続可能な開発というコンセプト、つまり、『仮邦題:29日目』やそれ以前の著書で提唱してきたコンセプトにさらに磨きをかけた。ワールドウォッチ研究所を去ると、2001年5月にアースポリシー研究所を設立、環境面で持続可能な経済を作るためのビジョンとロードマップを提供してきた。
アースポリシー研究所は、W・W・ノートン社のドレーク・マクフィーリーとエイミー・チェリーの両氏をはじめ、出版関係者からの長年にわたる支援にも感謝を表している。特にW・W・ノートン社は、レスター・ブラウンが執筆した数々の書籍を40年にわたり出版してくれた。
ブラウンの著作は世界各地でも出版されており、EPIは各国で出版に協力してくれた方々、例えば、中国のリン・ツシン氏、イランのハミッド・タラバティ氏とファルザネー・バハール氏、イタリアのエジディオーニ・アンビアンテ社ジアンフランコ・ボローニャ氏とチームの皆さん、日本の織田創樹氏、ルーマニアのエディチュラ・テニカ氏、スウェーデンのラース、ドリスのアルムストローム夫妻、韓国のユル・チェ氏が創設したドヨセ・ブックス社、トルコのTEMA財団、英国のアーススキャン社、ハンガリーのデイビッド・ビロ氏、ブルガリアのペイパー・タイガー社のシリル・イワノフ氏、フランスのピエール=イブ・ロンガレッティ氏とフィリップ・ヴィエイユ氏、スペイン語版ではコロンビアの「持続可能な開発のための研究センター」のジルベルト・リンコン氏、オランダのモリツ・フルーンMGMC社、ギリシャのエディシオ・クロニコ社のマキス・ファントウリス氏にも感謝を示している。
――以上――
ブラウン氏とアースポリシー研究所の取り組みに関する詳しい情報は、http://www.earth-policy.org/を参照。
アースポリシー研究所について
アースポリシー研究所は、持続可能な未来を考え、現在からその未来へはどのようにすればたどり着くのかそのロードマップを提供するために設立された研究機関である。アースポリシー研究所に関する詳しい情報は、earth-policy.orgを参照。
(翻訳:三好、保科)
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レスターの人生にご興味のある方へ。
『レスター・ブラウン自伝――人類文明の存続をめざして』
翻訳させてもらったこちらも本も、ぜひどうぞ!
『地球に残された時間――80億人を希望に導く最終処方箋』
レスター・R・ブラウン (著) ダイヤモンド社
また、レスターのアースポリシー研究所からの最後の書籍は、まもなく原書が発売される予定です。タイトルは
"The Great Transition: Shifting from Fossil Fuels to Solar and Wind Energy"
(「大転換――化石燃料から太陽・風力エネルギーへの移行」)
日本語版は、翻訳を担当させていただくことになる、うれしく思っています。
どうぞお楽しみに!