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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2015年05月27日

JFS ニュースレター より「屋根貸し」太陽光発電事業、全国に拡大中(2015.05.27)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

世界184カ国に情報発信をしているJFSから、「屋根貸し」のしくみで広がりつつある太陽光発電についての記事を発信しました。海外の方々だけでなく、国内の私たちにとっても興味深い展開なので、ご紹介します~。

~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

JFS ニュースレター No.152 (2015年4月号)

「屋根貸し」太陽光発電事業、全国に拡大中

建物の屋根のスペースを有効に活用する太陽光発電事業「屋根貸し」が、自治体主導で日本全国に広がっています。「屋根貸し」は、2012年7月の固定価格買取制度(FIT)導入を機に新たなビジネスモデルとして注目され、制度導入初年度の2012年度には、全47都道府県のうち約15%が取り組みました。その後も「屋根貸し」の取り組みは広がっており、2014年度には約50%に増えています。

「屋根貸し」の仕組みは、次のようになっています。発電事業者は、施設所有者から屋根を借り、自己費用で太陽光パネルを設置します。そして、FITを利用して売電収入を得る一方で、施設所有者に屋根の賃料を支払います。FITでは、10kW以上の太陽光パネルで発電された電気については、一定の価格で20年間買い取ることを電気事業者に対して義務付けています。そのため、「屋根貸し」の賃借期間は一般的に20年間となります。

施設所有者としては、今まで使っていなかったスペースを、投資をすることなく収益を生み出す資産にできることが、最大のメリットです。太陽光パネル設置時に防水工事を行うことで屋根や家屋が長寿命化したり、災害等の非常時に太陽光パネルを非常用電源として使うことができたり、等の付帯的なメリットもあります。

発電事業者としては、太陽光パネル設置用の土地を新たに購入するよりも、初期投資費用を低く抑えられることが、大きなメリットになります。FITがあるので、賃料を支払っても、20年間は収益を上げることができます。

最初に、2012年7月から全国に先駆けて「屋根貸し」に取り組んでいる、神奈川県の事例をご紹介しましょう。公共施設への太陽光パネル導入促進、地元の施工業者等の参加による地域経済活性化を目的として、県有施設の「屋根貸し」からスタートしました。

2012年9月からは、民間施設を対象にした「屋根貸しマッチング事業」を開始し、2014年度からマッチングの対象に「土地」を追加。2014年10月からは、住宅を対象とした屋根貸しマッチング事業として『複数住宅「屋根貸し」マッチング事業』を実施するなど、太陽光パネルの更なる普及を図っています。

「屋根貸し」では10kW以上の出力が要求されますが、地上に比べて効率の良い傾斜屋根に太陽光パネルを設置する場合でも、約100平方メートルの面積が必要になります。民間住宅の屋根は100平方メートル未満のものがほとんどですので、個別に「屋根貸し」をすることはできません。県が取り纏めて、住宅所有者と発電事業者を繋ぐことで、これまでは対象外だった民間住宅の屋根を、有効に活用できるようになったのです。

「屋根貸し」は20年の長期間に亘るものなので、雨漏りなどのトラブルが発生したり、建物の老朽化による修繕が必要になったり等、対応すべきさまざまな事態が想定されます。契約の際に、施設所有者と発電事業者の双方がどのように対処するかを、あらかじめ定めておく必要がありますが、その煩雑さが、事業に関わることへの敷居を高くしている側面もあります。神奈川県では、モデル契約書を公開したり、セミナーを開催したりすることで敷居を下げ、スムーズに契約が進むようサポートしています。

神奈川県が先駆けとなって始まった「屋根貸し」のビジネスモデルは、全国各地に広がっています。2011年3月に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県では、被災して住宅を失った人のために建設した災害公営住宅を利用して、「屋根貸し」を実施しています。

災害公営住宅を整備するのは各市町ですが、「屋根貸し」は県が取り纏め、発電事業者を公募型プロポーザル方式で募集します。2014年度の公募では、2014年9月末時点で実施設計が終了している16市町、53地区の546棟が対象で、計画総出力は約4,300kW。

事業者は、市町の職員や外部有識者を含めた委員による審査を経て選定。県および市町と事業者は、太陽光発電事業の実施に係る協定を締結し、市町が災害公営住宅の屋根を事業者に貸し付けます。事業者は、災害公営住宅の屋根を使って発電事業を実施し、建設や撤去工事期間を含めた20数年間、市町に屋根の使用料(賃料)を支払います。また、停電時には、棟ごとに設置される設備から発電した電気を、入居者が無償利用できるよう措置します。

長野県では、市民・企業・大学等と行政機関がつながる協働ネットワーク「自然エネルギー信州ネット」を立ち上げました。県がプロデュースする「屋根貸し」プロジェクト、"おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト"において、県、発電事業者、自然エネルギー信州ネットが三者協定を締結し、長野県内における自然エネルギーの普及を目指しています。

プロジェクトでは、小規模な屋根も活用できるよう、県内に分散している公共と民間の屋根をブドウの房のように束ねるイメージで、分散型メガワット発電を推進しています。売電収入の一部を自然エネルギー普及活動に還元するために、プロジェクト経費に充当。自然エネルギー信州ネットが技術的情報を分析・整理し、事業マニュアルも公開することで、事業ノウハウの全県への普及を図ります。

民間事業者が実施する太陽光発電公開試験場では、モジュール設置角度変更等の試験による発電状況を公開。また、太陽光パネル設置現場で、工事着手直後、設置工事途中、設置後に見学会を開催して工事手法も公開する等、積極的にノウハウを発信することで、県内企業の参入や市町村の屋根貸しを促します。

同じ長野県にある上田市では、NPO法人上田市民エネルギーが主導する「屋根貸し」が展開されています。『相乗りくん』と名づけられた取り組みは、これまでご紹介したものとは少し仕組みが異なります。

『相乗りくん』に参加するには、3つの方法があります。1つめは、屋根の空きスペースを貸す「屋根オーナー」としての参加です。屋根オーナーになるためには、自宅の昼間の電力をまかなえる太陽光パネルを自費で設置する必要があります。初期投資が必要ですが、貸したスペース分のパネルもあわせて設置することで、単価が割安になるというメリットがあります。また、貸しスペースのパネルは、12年後には自分のものになります。

2つめの方法は、相乗りして太陽光パネルを設置する「パネルオーナー」としての参加です。全国どこからでも参加可能で、パネル設置費用を負担することで、パネルオーナーになることができます。金額は10万円を下限に、5万円単位で自由に設定できます。パネルオーナーは、契約後10年間の売電収入を得ることで、利益を上げられる仕組みです。売電収入は、その後の2年間はNPO法人の運営費に充当され、それ以降は屋根オーナーのものになります。

3つめの方法は、『相乗りくん』事業をサポートする賛助会員、「相乗りくん」サポーターとしての参加です。一口3,000円の年会費を支払うことで、事業を支えます。直接は事業に関わらないので、利益は得られませんが、自然エネルギーの普及に寄与することができます。

「屋根貸し」の取り組みは、自治体が主導して始まり、民間企業や市民を巻き込みながら広がりを見せています。一方で、日本では、再生可能エネルギーの導入が太陽光発電に偏っており、他の方式の導入があまり進んでいないことが課題になっています。「屋根貸し」の取り組みが広がっていく中で、新たなアイデアが生まれ、多様な再生可能エネルギーの導入につながることを期待します。

スタッフライター 田辺伸広

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