イーズ未来共創フォーラムの「一日一題」に、最近アップした3題です。どれも短い記事ですので、3連休最終日のひとときにどうぞ~。
○「働き方改革」は何のため?
○カナダの人口の3分の1が住むオンタリオで、「ゴミゼロ・オンタリオ法」成立!
○3Dプリンターは、製造のムダと社会のムダをどのくらい減らせるか?
「一日一題」では、テーマはいろいろですが、毎日の報道や動きを取り上げて、"30秒で読める"短い記事をアップしています。
http://www.es-inc.jp/
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
○「働き方改革」は何のため?
2016年07月15日
今朝の日経新聞のトップ記事は、「働き方改革で成長底上げ 残業時間に上限、雇用保険料下げ 財務・厚労省 女性や高齢者の就労支援」というものでした。
財務省と厚生労働省の働き方改革の原案によると、「残業時間に上限を設けるなどして長時間勤務を抑制するとともに、最低賃金の20円超引き上げや雇用保険料の大幅な引き下げで働き手の所得を増やす。女性や高齢者など働く人の裾野を広げつつ、働き方改革に取り組む企業も支援し、経済成長を底上げする」とのこと。 「年収130万円の壁」を超えられるよう、企業への助成金を増額するなどもあります。
「同一労働同一賃金」の指針を年内に策定するなど、格差是正につながりそうなものもありますが、この働き方改革自体が「経済対策の目玉」として位置づけられていることに違和感を覚えるのは私だけでしょうか。
働き方改革とは、経済成長のためなのでしょうか? 本来、人として幸せな人生を生きていくために、安心できる安定した地域や社会づくりのために、(今はそうなっていない)働き方を変えていくものではないでしょうか?
近年優れた教育などで注目を集めているオランダでは、ワークシェアリングが浸透しているため、多くの人が週休3日制で、夕方に仕事が終わり、家族みんなでゆったりと時間を過ごしたり、地域のボランティア活動に携わったりしているそうです。それでいて、経済が低調なわけではありません。
家族がいつも一緒にいられる環境になったため、保育園に行く子どもは2割と聞いて、日本との差を痛感しました。本人の幸せのためではなく、「経済成長のためには労働者が必要だ。労働人口が減っていく日本では、女性や高齢者を活用しなくてはやっていけない!」と、女性の"活躍推進"や高齢者の退職年齢の引き上げを進め、「そのためには待機児童をゼロにしなくては」と、保育園の拡充に走り回る日本は、オランダとは真逆の方向に突っ走ろうとしているように思われます。
「働きたいのに保育園が足りない」という人がたくさんいる現状は変えていかなくてはなりません。しかし、国が「国民や社会の幸せのため」ではなく、「国の経済成長のため」に、働き方改革を進めようとしている日本の現状と構造も、変えていかなくてはなりません。
「働き方を変える」→「経済成長」→「人や地域の安定や幸せ」につながるだろう、ではなく、「働き方を変える」→「人や地域の安定、幸せ」→その結果としての「経済成長」であってほしい、と思うのです。
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○カナダの人口の3分の1が住むオンタリオで、「ゴミゼロ・オンタリオ法」成立!
2016年07月16日
7月11日、カナダのオンタリオ州で「ゴミゼロ・オンタリオ法」(Waste-Free Ontario Act)が可決されました。トロントを州都とするオンタリオ州は、人口1200万人強のカナダ最大の州です。
この「ゴミゼロ・オンタリオ法」の目的は、埋め立てされるゴミを減らし、雇用を創出し、気候変動を緩和すること。現在は、毎年800万トンを越えるゴミが埋立場に送られており、1990年から2012年にかけて、埋立ゴミの量の増加に伴い、温室効果ガスの排出量も25%増えています。
「1000トンのゴミの埋め立てを回避するたびに、7人分の正規雇用、36万ドルの賃金、71万1千ドルのGDP増加につながります」とのこと。カナダ全体の人口の約3分の1を抱えるオンタリオ州での、「ゴミゼロ」への動きは、その規模からいっても、大きな影響を及ぼしてくれそうです!
ちなみに、「できるだけごみは燃やさない」と日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行ったのは徳島県・上勝町(人口約2,000人)。上勝ゼロ・ウェイストアカデミーのサイトによると、他のゼロ・ウェイスト宣言自治体には、福岡県大木町(人口約14,500人)、熊本県水俣市(人口約28,000人)があり、東京都町田市(人口約417,000人)と神奈川県葉山町(人口約33,000人)がゼロ・ウェイストを検討しているそうです。
カナダ最大州のオンタリオに匹敵するのは、日本最大都道府県の東京ですよね。 東京オリンピックパラリンピックに向けても、ぜひ「ゴミゼロ・東京都」への動きを! 都知事選の候補者にも、「世界中で進んでいるゼロ・ウェイスト自治体の動きを知っていますか? 東京都はどうですか?」と聞いてみたいですね。
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○3Dプリンターは、製造のムダと社会のムダをどのくらい減らせるか?
2016年07月18日
数日前の日経新聞に、商用車世界首位のドイツのダイムラーが「トラック予備部品の3Dプリンターでの生産を開始」という記事がありました。幸せ経済社会研究所の読書会で5月に取り上げた『限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭』で、3Dプリンターのもたらす大きな変革とその進みつつある実例にびっくりしたのですが、経済の主流でもこういった動きが加速していくのでしょうね。
3Dプリンターがあれば、世界のどこでも、オンラインで必要な"設計図"をダウンロードして、「必要なものを、必要なだけ、必要な時に、必要な場所で」、製作できるようになります。輸送も在庫も不要になりますから、これまでの生産のしくみと比べると、環境負荷を大きく減らせると期待しています。
また、『限界費用ゼロ社会』の説明で「なるほどなあ!」と思ったのは、従来型の生産は「Subtractive」(引き算方式)だったのが、3Dプリンティングでは「Additive」(足し算方式)になる、ということ。どういうことかでしょうか? これまでのやり方だと、たとえば、鋼板を作り、そこから金型で切り出して、さらに研磨などして、必要な部品を作ります。その製造工程のあちこちで、端材や研磨くずが出ます(多くの産業ではそれらをリサイクルするしくみをくふうしています)。
他方、3Dプリンティングでは、フィラメント(印刷にとってのインクにあたるひも状の樹脂などの原材料)のプリントを重ねていくことで、必要な部品を作ります。切り出すのではなく、重ねていく、足していくやり方です。こうすることで、原材料のムダを大きく減らすことができます。『限界費用ゼロ社会』には「必要な原材料は10分の1ですむ」とありました。
そのうえ、3Dプリンティングでは「1コからでも作れる」ことが大きな魅力となります。「大量に生産しないと高くなってしまう」これまでのやり方ではとは異なるしくみだからです。冒頭の日経新聞の記事の最後には、「顧客はオンラインで部品のコードを入力すれば消耗品などを簡単に注文できる。10年前の部品でも対応可能という」とありました。いまはメーカーもいつまでも金型や生産ラインを残しておくことはできないので、交換部品の保持期間を決めていますが、その必要もなくなるとしたら、「部品の生産が終わっているから」泣く泣く修理をあきらめていた、"もったいない"ムダも減らせそうですね!
これまでの「切り出し型」の製造方式から、「重ね塗り型」の製造方式に変わることで、環境負荷は実際にどのように変わるのでしょうか?
せっかくの新しい技術が本当に地球にも役に立つように、どこが問題になりそうか、何を気をつけたら良いのか、今のうちに知っておきたいですよね。LCA(ライフサイクルアセスメント)の専門家にぜひ計算してほしい!と願っています。