バラトングループのメンバーでもあるマティス・ワケナゲル(グローバル・フットプリント・ネットワーク代表)からの、とっても先進的なスイスの動き、お伝えします!
原文はこちらにあります。
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今週末、スイスでは世界の歴史にとって重要な出来事がありました。結果自体は私たちが望んだものではありませんでしたが、それでもきわめて重要な出来事です。
スイスは「グリーン経済を実施するかどうか」を住民投票で問うたのです。世界でも初めてのことです!この「グリーン経済投票」は、資源効率と循環型経済の実施を推進しようというものです。そしてさらに、「スイスの資源消費を、世界中で行うことが可能なレベルにまで削減する」という具体的な目標を設定していました。現在、世界中の人がスイス人と同じ暮らしを送ったとしたら、地球が3コ必要になります。今回の住民投票では、「2050年までに地球1コ分にする」という目標を設定していました。
スイス憲法はすでに自然の能力の範囲内で生活する必要性を認め、第73条において「スイス連邦および各州は、自然およびその再生能力と、自然に対する人間の需要の間でバランスのとれた持続的な関係を達成するよう努めるものとする」と定めています。しかし、この目標を達成する期限は設けられていません。
この住民投票の取り組みは、議論を引き起こしました。その一部は、私たちのウェブサイトに掲載されています(http://www.achtung-schweiz.org/、スイスの欄を参照)。しかし、議論の中で最も混乱した点は、「積極的に行動するのは、スイスの自己利益にかなうものか?」でした。
前向きな出発点として、ほとんどの政党が、私たちの資源を注意深く管理する必要があること、最終的に私たちは地球の能力の範囲内で生活しなければならないこと――とりわけ「私たち」が人類を指すのであれば――を認識していました。この取り組みの提案者たちは、パリ協定で合意された「地球の気温上昇を2度未満に抑える」という水準を達成するためには、フットプリントの削減が必要だと主張しました。また、大半のイノベーションを勢いづけるのは野心的な目標であり、スイスの清浄な水や空気といった環境面での達成も積極的な政治目標があったからこそ加速されたのだ、とも論じました。
グリーン経済の推進運動は、不安をかきたてることなく、前向きで親しみやすく楽しい提案となるよう注意深く行われました。一方で反対派は、「この取り組みは、コストの高い"グリーン強制"だ」と、不安をあおる作戦をとり、「2050年という期限は短すぎ、そのような変革はスイス経済にとって過酷すぎる」と主張しました。
興味深いことに、経済主体の間では意見が分かれました。強硬な反対派がいる一方で、イケアなど「地球1コ分の経済)」の賛成派もいました。
さて、投票結果はどうだったのでしょうか?
当初はグリーン経済に対する前向きな関心が大きかったものの、いざ投票が近づくと、変化に対する不安が膨らみ、初期の優位性は少しずつ崩れていきました。それでも、投票者の36%は地球1コ分の能力の範囲内で生活することに「賛成」票を投じました。この取り組みへの賛成派が過半数を占めた州は1つだけで、ジュネーブ州でした。
このような投票を行った国があるということ、そして、これほど多くの人々が資源の利用方法を大きく変える必要性を認識しているということは、世界の歴史に残る前例となりました。しかし、この非常に重要な議論が世界のニュースでほとんど報道されていないのは残念なことです。「私たちにとって唯一無二である地球の能力の範囲内で、すべての人々にとってうまくいく未来をどうやって築いていくのか?」を考える時に私たちが議論すべきなのはこうした話題なのです。
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「地球1コ分で暮らす国になろうよ」。そんな国民投票が日本でも行われ、多くの人が「そうしなきゃね!」と投票する--その日が一日も早く来ることを夢見ています。