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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2017年02月03日

9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える(2017.02.03)

新しいあり方へ
 

昨年のゴールデンウィークに、米国オレゴン州に「エシカル消費」の海外動向調査に行きました。さまざまな学びがありましたが、そのなかでも、もっとも大きなものは、畜産動物の「アニマルウェルフェア」に対する取り組みが大きく広がっていたことです。

私たち日本人は、平均して1年に300コの卵を食べる、世界第3位の「卵食べ国民」です。卵用の鶏は平均して1年に330コほどの卵を産みますから、私たち1人1人が、「どこかに1羽自分用の鶏」を持っている計算になります。さて、"あなたの鶏"はどのような環境で飼育されているのでしょう? ご存じでしょうか?

東京オリンピックパラリンピックの持続可能性委員会でも、調達ワーキングで畜産物の調達コードを定めようとしています。私は昨年秋に、調達ワーキングの委員会に出席して、海外の動きを伝え、ロンドンやリオの五輪に比べて遜色のないアニマルウェルフェアのレベルを確保してください、と訴えました。

日本ではあまりにこの問題についての意識が低いのではないか、という問題意識から、都市大の研究室および幸せ経済社会研究所で、消費者向けおよび食肉を扱う企業向けの調査を行いました。

その結果をプレスリリースとして発表しましたので、お伝えします。

グラフなどはサイトかPDFをご覧ください
http://ishes.org/news/2017/inws_id002105.html
http://ishes.org/docs/20170202_Press%20Release.pdf

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」
~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える~

東京都市大学環境学部 枝廣淳子研究室
2017年1月31日

東京都市大学環境学部枝廣淳子研究室(横浜市都筑区)は本日、「アニマルウェルフェアに関する意識と取り組み」プロジェクトの結果を公表しました。 このプロジェクトは、欧米で取り組みが進んでいる「アニマルウェルフェア」(動物福祉:動物が意?ある存在であることを?解し、たとえ短い一生であっても、動物の生態・欲求を妨げることのない環境で、適正に扱うこと)の考え方について、一般の人々の認知度や企業の取り組みの現状を調査するものです。

1.一般の人々の認知度に関する調査結果*本意識調査は2016年12月16日(金)~2016年12月19日(月)にインターネット調査法を用い、株式会社マクロミルのモニター323人を対象に行いました(年代、性別および大都市/中小都市・地方の割合は国勢調査の日本人口比に合わせています)。

■9割近い人は「アニマルウェルフェア」という言葉を聞いたことがない(図1)

まず、一般の人々にアニマルウェルフェアという言葉を聞いたことがあるかを尋ねたところ、意味を知っていた人は323人中1人しかいませんでした。9割近い人は「アニマルウェルフェアという言葉を聞いたことがない」のが日本の現状であることがわかりました。

■約9割の人は多くの母豚が飼育されている環境を認識していない(図2)

日本で肉用豚を産むために飼育されている母豚の多くは、「妊娠ストール」と呼ばれる屋内の幅60cm、長さ2mほどの母豚とほぼ同じ大きさのオリの中で飼育されており、身体の向きを変えることもできません。

 母豚の飼育環境について尋ねたところ、正しい選択肢を選んだ回答者は約13%のみで、約9割の人が母豚の飼育環境に関する認識がなく、また、約6割の回答者は、母豚はもっと広い飼育環境で飼われていると考えていました(図2の赤字)。

2.企業に対するアンケート調査結果

一般の人々を対象とした意識調査とは別に、食肉や卵を扱う48の企業や組織を対象にアンケート調査を実施しました。その結果、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、西洋フード・コンパスグループ株式会社、 株式会社大地を守る会、パルシステム生活協同組合連合会など48組織中12組織から回答を得ることができました(回収率は25%)。

「担当者がいない」「対応を検討しはじめた段階」「取引先との関係があるので難しい」などの理由から回答しないまたは社名を公表しないとした企業も多くあり、アニマルウェルフェアが企業にとって、対応が難しい問題であることがわかりました。回答数は少ないものの、アンケート結果から以下のような傾向が見られました。

 アニマルウェルフェアを「事業に関わる課題として認識しているか」という質問に対しては、10社(83.3%)が「認識している」と回答しており(図3)、アニマルウェルフェアを事業上の課題として認識している企業が多いことがわかります。しかし、ガイドラインなどを公表している企業は2社(16.7%)に留まり(図4)、具体的な対応や取り組みには至っていない企業が多いことがわかりました。

 また、自由回答には、「特に取り組みは行っていないが、消費者も理解・必要性を感じていない」「日本国内の市場はまだまだ無関心で、商業ベースには乗らないため、現状では目標・ターゲットを設定することは不要」といった声が挙がりました。 先の一般の人々向けの意識調査では、アニマルウェルフェアの考え方を説明した上で、「日本の畜産業界もアニマルウェルフェアを重視する方向に変えていくべきだと思うか」を尋ねたところ、「思う」「どちらかといえば思う」との回答者をあわせると約6割に達しています。

 これらのことから、行政や企業・NGOなどからの働きかけによって消費者の意識や理解を広げ、そうした消費者の声や行動を通して、企業のアニマルウェルフェアの取り組みを進めていくことが必要であると考えられます。

 調査で例として挙げた母豚の妊娠ストールは、EUではすでに使用が禁止されており、世界の大手食肉会社も自主的に使用禁止を打ち出しています。東京オリンピック・パラリンピックでの食材の調達基準への反映も含め、日本での取り組みが加速度的に進むことを期待しています。

企業へのアンケート調査についての詳細は、枝廣研究室のウェブサイトをご覧ください。http://www.yc.tcu.ac.jp/~edahiro-web/

<調査協力>幸せ経済社会研究所

【本リリースに関するお問い合わせ】
東京都市大学環境学部 枝廣淳子研究室
URL:http://www.yc.tcu.ac.jp/~edahiro-web/

E-mail:edahiro@tcu.ac.jp
 ※迷惑メール対策のため、お手数ですが(@)を@に変更してお送り下さい

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

この問題については、これからも発信と取り組みを進めていきます。関連する業種や企業の方、一緒に勉強しながら考えていきませんか?

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