昨日久し振りに「一日一題」をアップしました。追加情報と共に共有します。
http://www.es-inc.jp/1dai/index.html
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中小企業の炭素税・排出量取引に対する考え方は?
3月17日に経産省と日本商工会議所が全国の中小企業を対象とした温暖化対策に関するアンケート調査(801社が回答)の結果を発表しました。
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170317002/20170317002.html
中小企業の温暖化対策の現状の取り組みや課題等が掲載されている報告書を見ていて、「おや?」と思いました。
いろいろな側面から温暖化対策について聞いている中に「規制的手法(大型炭素税や国内排出量取引制度)導入への考え方」という質問があり、「反対」か「賛成」かと聞いています(「反対」が選択肢の先頭に来ているところに、質問者の思い?が見える気がします......)。
回答のグラフとともに、「規制的手法(大型炭素税や国内排出量取引制度)の導入に関しても、反対(約 4 割) が賛成(約 2 割)を上回っている」と力強く(?)結論づけていますが、実際の数値は、「反対」15%、「どちらかというと反対」21%、「どちらとも言えない」36%、「どちらかというと賛成」17%、「賛成」4%、「わからない」7%です。
私が「おや?」と思ったのは、思いのほか、「賛成」「どちらかというと賛成」、そして「どちらとも言えない」が多いな、と思ったからです。「反対」「どちらかというと反対」をあわせても36%、全体の3分の1ちょっとなのです。
この調査の後段に、「中小企業の実態や意識を調査した結果、地球温暖化問題に関心があり、対策に取り組む意欲があっても、費用捻出が難しく、専門人材の不足や具体的な取組内容への理解の不足等により、地球温暖化対策に取り組めていないことが明らかとなりました」とあります。
私の実感でも、大企業に比べると中小企業はコスト意識が高いことが多いのですが、それでも21%が「炭素税や排出量取引制度を導入すべき」と考えており、さらに36%は「どちらとも言えない」と、積極的な反対ではありません。
昨今の温暖化の影響や被害の実感の高まり、パリ協定、調達を通してもCO2排出量が企業の競争力の源泉の1つになりつつあることなどを背景に、中小企業の間にも、たとえ、(何もしなければ)コストアップにつながるとしても、CO2排出量削減に最も効果的である「値札を変える」しくみを入れるべきではないか、という考えが浸透しつつあるーー私にはそう思えるのです。
また、この報告書から、省エネや再エネ、リサイクルなどの温暖化対策を「自社のビジネス戦略」「新たな環境ビジネスの展開」に位置づけている積極的な中小企業も少なくないことがわかります。
これまで経産省や経団連は「企業の競争力をそぐ」として、炭素税や排出量取引の導入に反対してきました(実際には、炭素税や排出量取引が導入されている他国で、企業の競争力がそがれたという報告はあまり聞きません。一方、導入後にCO2は減り、かつ経済成長率は高まっているという報告はいくつもあります)。
政府の委員会などでも、「特に中小企業が困るから、炭素税や排出量取引は導入できない」とよく聞かされてきました。本当にそうなのでしょうか?
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上記で、「(炭素税や排出量取引)導入後にCO2は減り、かつ経済成長率は高まっているという報告はいくつもあります」と書いたのは、たとえば、以下のような報告が得られているからです。
○カナダのブリティッシュ・コロンビア州2008年に1トンあたり10カナダドルの炭素税を導入、2012年までに1トンあたり30カナダドルに引き上げ。「税収中立」で、所得税や事業税といった他の税を減税して、化石燃料価格の上昇を相殺している。
炭素税の施行以来:ガソリンなどの石油商品の一人あたり消費量は15%(全国値の3倍)減少、経済は国内の他の州と同じペースで成長を続けている
2016年12月12日に、カナダのトリュドー首相 全国規模のカーボン価格付け策導入を公表。カーボン税か排出権取引を行う。
○アイルランド2010年、天然ガスと石油の消費に対して炭素税を設け、同国の温室効果ガス排出量のおよそ40%がその対象に。2013年までに、経済は成長したが、排出量は約6%減
その後、炭素の価格付けの対象を拡大し、泥炭と石炭を含めた。「私たちはただ、税収入を大幅に上げ、行動を変える価格シグナルを設けただけです。私たちは今や、自ら定めた環境上の目標をいくつも突破しています」。
○米国地域温室効果ガス・イニシアチブ(RGGI)の排出量取引制度に参加している北東部と中部大西洋岸の9州では、制度が開始された2009年以降2013年までに、電力部門の排出量は18%減少している。
一方、この9州全体の経済成長率は、排出量の削減がわずか4%だった残り41州を上回っていた。
上記のデータはレスター・ブラウン氏から教えてもらったもので、少し前のものです。今はさらに多くの「本当に炭素税や排出量取引は経済を損なうのか?」についてのデータが出ているのではないかと思います。