英国に来ています。近年の自分の関心事の調査・勉強のためです。地域経済、定常経済、政策への国民の関与、social impactの測り方ーー1週間では足りませんが、がんばって勉強してきます!
『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』(岩波新書)842円
『「定常経済」は可能だ!』(岩波ブックレット)562円
ハーマン・デイリー (著), 枝廣 淳子 (聞き手)
などを書いているように、地域の経済をどうしっかり保っていくのか、経済成長に頼らない経済にしていくにはどうしたらよいかがとりわけ重要だと思い、考え、学び、地域のお手伝いをしています。
今回は、ロンドンでの勉強のあと、マンチェスターに行って、以下の2つの団体の活動について取材をさせてもらう予定です。
Steady State Manchester
https://steadystatemanchester.net/
CLES (Centre for Local Economic Strategies)
http://www.cles.org.uk/
またレポートできたらと思います。幸せ研のウェブサイトにも、このような関連ニュースが載っています。
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「脱成長」を自治州議会で要求----スペイン・カタルーニャの動向l
2017年10月1日に、スペインからの独立の是非を問う住民投票が行われたカタルーニャ自治州からのニュースです。
住民投票に先立つ9月6日と7日、カタルーニャ自治州議会で、独立を支持する政党、民衆統一候補(CUP)が、「カタルーニャは経済成長を追求せずに、脱成長を目指すべき」という内容の要求を行いました。内容の一部をご紹介します。
無限の成長を追求することにより、破滅的な問題が世界中で生じています。壊滅的な気候変動のシナリオ、希少な資源をめぐる地政学的な緊張などが示しているのは、これまでの進歩の流れが、崩壊しつつあるということです。進歩・成長・発展の概念は再考されねばなりません。
脱成長は、使用すべき基本的ツールのひとつです。現在、カタルーニャ共和国の創造に向かっています。新たな共和国では、新自由主義の自殺的な成長モデルを手本にするべきではありません。
そのための新たな政府の基本方針は、以下の通りです(抜粋)。
製品に使用される自然資産(原料とエネルギー)だけではなく、輸送、流通、販売、廃棄物管理などの生産に関わる浪費も含め、消費主義・廃棄物・略奪を断固として減らすこと。
個人とコミュニティのレジリエンスを向上させるために、エネルギーと食の主権を確保することを目的として、全ての人々に知識と技術を普及させること。
直接民主主義のメカニズムを通して、経済・社会・文化・環境モデルの再定義に関わる全ての過程への市民の真の参加を保証すること。
(新津 尚子)
~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~
持続可能でレジリエンスのある経済のあり方、世界のあちこちで、さまざまな模索やプロジェクト、思索が進んでいます。できるだけお伝えしていきたいと思います。
さて、先月末に出版された
『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』(岩波新書)
おかげさまで、書評に取り上げていただいたり、「読みました!」とうれしいお便りをいただいて、うれしく思っています。
まえに、幸せ研のインタビューコーナーにも登場いただいた太田直樹さん
http://ishes.org/interview/itv13_01.html
が、ご自身のブログで、本書を紹介くださいました。快諾を得て、ご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岐路に立って、あきらめず、燃え尽きず進んでいくこと|エダヒロさんの本
「僕らはいま日本の将来の岐路に立っている」という記事は3万人くらいの人に読んでもらった。
では、どうしたらよいのか。そのヒントがたくさん詰まっている本「地元経済を創りなおす(岩波新書)」が出版された。
ちょうど、著者の枝廣さんがこの本の最後の校正をしているときにお会いして、日本の将来シナリオの話をした。まえがきには、京大と日立の共同研究の話から始まっている。
「いずれ、変化は必要だ」と多くの人が考えているでしょう。しかし、わずか10年足らずのうちに分岐点がやってくる。そのまえに、大きく地方分散シナリオに転換しなくてはならない。しかも、地域内の経済循環をしっかり回せるようにしておかないと、地方分散シナリオすらも持続不可能になってしまう。ー 地元経済を「いま!」取り戻さなくては、創りなおさなくてはならないのです。(まえがきより)
「 漏れバケツ」って何だ?
この本の白眉は、経済を地域に取り戻す具体論がある第5章と第6章だろう。第5章は、身近な「食べる」ことについて。例えば、中山間地域では、食料費1000円のうち、地元でつくっているのはわずか14円*1!ただ、頭では課題はわかっても、いざ、日々の消費や仕入れになると、なかなか行動を変えることができない。それをどうするか。
第6章は、地域経済の「最大の漏れ穴」であるエネルギーについて。日本のエネルギー政策の課題にもしっかり触れつつ、地域にエネルギーを取り戻すことによって、経済や雇用への大きなインパクト*2から、集落が活気を取り戻す様子まで、具体的に書かれている。
こうした取り組みをするためには、地域経済の「見える化」が大切になってくる。第2章から第5章まで、「漏れバケツ」モデルという聞きなれないものから、産業連関表という難しそうなものやRESASという最新のツールまで、実践者としての観点から、地域経済の分析と診断についての解説がある。
ファンキーに行こう!
楽しいのは第9章。英国にある人口8千人の小さな町、トットネスの話*3がある。かつて地元を支えていた造船業や乳業会社、芸術大学などが次々と撤退。国が変わっても、地方が衰退していく様子は変わらない。どうするのかと思ったら、トットネスでは明るいノリで、「地域経済を取り戻す(Re-Economy)」プロジェクトが次々と立ち上がった。英国最大のコーヒーチェーンが進出してきたときの、町の人の反対運動はファンキーだ。なぜそんなことが起こったのか。その理由が書かれている。
(ポスター) http://kozatori7.hatenablog.com/entry/2018/02/26/210959
注:トットネスで作られたポスターのClonestoppingは、コピーみたいな町にするな、という意味。もう一つは、当時ヒットした映画「Trainspotting」のポスター。
「トットネスの話は面白いけど、日本では難しい」と思ったら、第8章。水俣市や下川町で起こっていること読むと、ワクワクするだろう。
「地方を元気にしたい」と思っている人は、行政や民間で増えていると思う。ただ「あきらめ」や「燃え尽き」が広がっているようにも感じる。5年、10年の取り組みを、楽しみながら、しっかりした足取りで進んでいく力を、この本は与えてくれる。
*1:もちろん貨幣経済の外の、自給自足や物々交換はある。
*2:人口3350人、地域経済規215億円の下川町では、エネルギーの購入費として13億円が域外に漏れている。それを域内で賄うと、波及効果も含めて28億円の経済となり、100名の雇用を生み出す。
*3:枝廣さんに読んでいただいたワークショップの記事。人口8千人の世界トップ10のファンキーな町トットネス、日本の地方もハジけるかも - 太田直樹のブログ - 日々是好日
~~~~~~~~~~~
太田さん、素敵な紹介をありがとうございました!
昨年3月末にトットネスに取材に行き、「地方経済を創りなおす」にその取り組みを盛り込むことができました。今回のロンドン~マンチェスター訪問も、次につながる学びとご縁を持って帰国できたら、と思っています。