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2018年08月03日

「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」始まる (2018.08.03)

新しいあり方へ
温暖化
 

本日午前中、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」の第1回会合が開催され、参加してきました。

この懇談会は、未来投資会議での安倍首相からの「パリ協定に基づく長期戦略策定に向け、金融界、経済界、学界など各界の有識者に集まってもらい、これまでの常識にとらわれない新たなビジョン策定のための有識者会議を設置する」との指示を受けて設置されたもので、今日の会合には安倍首相も最初から最後まで参加されました。

座長は、北岡 伸一氏(東京大学名誉教授、独立行政法人国際協力機構理事長)が務められ、残りの9人の委員は以下の方々です。(五十音順)

内山田 竹志氏(トヨタ自動車株式会社代表取締役会長)
枝廣 淳子 (大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役)
進藤 孝生氏(新日鐵住金株式会社代表取締役社長)
隅 修三氏(東京海上ホールディングス株式会社取締役会長)
高村 ゆかり氏(名古屋大学大学院環境学研究科教授)
中西 宏明氏(一般社団法人日本経済団体連合会会長)
水野 弘道氏(国連責任投資原則協会理事、年金積立金管理運用独立行政法人理事兼CIO)
森 雅志氏(富山市長)
安井 至氏(東京大学名誉教授、元国際連合大学副学長、一般財団法人持続性推進機構理事長)


官邸のウェブサイトに、今日の会合での安倍総理の冒頭の挨拶が載っています。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会

平成30年8月3日、安倍総理は、総理大臣官邸で第1回パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会を開催しました。

総理は、冒頭の挨拶で次のように述べました。

「環境と経済をめぐる情勢は、ここ数年で一変しています。ESG(環境、社会、企業統治)投資は、この5年で1,000兆円以上増加し、グリーンボンドの発行量も50倍に拡大するなど、世界の資金の流れが大きく変わりつつあります。

もはや温暖化対策は、企業にとってコストではありません。競争力の源泉であります。環境問題への対応に積極的な企業に、世界中から資金が集まり、次なる成長と更なる対策が可能となる。正に環境と成長の好循環とも呼ぶべき変化が、この5年余りの間で、世界規模で、ものすごいスピードで進んでいます。

この好循環をどんどん回転させることで、ビジネス主導の技術革新を促していく。これまで温暖化対策といえば、国が主導して義務的な対応を求めるものでしたが、こうした時代の変化を捉えた大きなパラダイム転換が求められています。我が国も日本企業の強みをいかしながら従来の延長線上にないイノベーションを創出し、我が国経済の力強い成長につなげていく発想が必要であります。

こうした観点から、パリ協定に基づく長期戦略の策定に向けてこれまでの常識にとらわれない新しい政策の方向性を御提言いただきたい。今回は従来からの議論の枠を超えて、大所高所から御議論いただける皆様にお集まりいただきました。

ファイナンスの動向やビジネスの実態、特に世界の動きを大きく俯瞰しながら、今後の国際的な潮流を牽引できるような、新たなビジョンを示していただきたいと考えています。

我が国は、来年、G20の議長国となります。国際社会全体が、この気候変動の問題に足並みをそろえて立ち向かうべく、日本として、しっかりとリーダーシップを発揮していきたいと考えておりますので、委員の皆様には、是非、忌憚のない活発な御議論をお願いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます」

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回は1人2分の持ち時間での意見表明でした。議事要旨や資料などは追ってウェブにアップされるそうですので、またお知らせしますね。

私の発表資料はこちらに置いてあります。発表した意見の内容をお伝えします。
https://www.es-inc.jp/insight/archives/doc/advisorypanel080318.pdf

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

資料3-1を用意させていただいておりますので、そちらをご覧いただきながらお聞きいただければと思います。

長期戦略の必須要素として、総理のご発言から3点、大事な部分だと思っております。

この3点目の「野心的な目標」に関しては、「2050年に80%削減」という目標の基準年をきっちり出して、どれぐらいの規模を野心的にやっていこうとしているか出す必要があります。そして、その先は「実質排出量ゼロ」に向けての大きなビジョンが出せればと思っております。

私たちが長期戦略を考えていく、「長期」とはどういう未来かについて、3点、大事だと思う点を挙げております。

1つ目は、エネルギー情勢懇談会でも繰り返し確認したことですが、今後の未来は不安定で不確実であることです。そうしたときに、決め打ちで手を打っていくということは難しいので、レジリエンスを高めた形で経済の成長もしくは社会の進捗を図っていく必要があります。

レジリエンスを高めるためには、短期的な効率・利益の最大化ではなくて、長期を見るということと、集中型ではなくて、小さい規模でもたくさんの産業や新しい企業を興していくことを考えることが重要と思っています。

2点目は、日本は人口減少、高齢化が進みますので、特に地域の力を高める成長戦略が大事だということです。もちろん、最先端の大企業がもっと先に行くことも大事ですが、一方で「人口の8%の地方の人々が48%の国土を守っている」現状から、こういった人々ちがここに住み続けることができる、そういった地域の活性化につながる成長戦略を考えたいと思っています。

3点目は、人々の幸せの定義は変わりつつあるということです。これまでの、給料が増えればいい、GDPが増えればいいという価値観ではなくて、持続可能性・人間性・社会性を大事にする生き方を求める人が増えております。これに沿った形の成長戦略、つまり何を成長させるべきなのか、ということも議論できればと思っています。

1つの例として、私もお手伝いをしています北海道の下川町の話をさせていただきたいと思います。SDGs未来都市にも選ばれている所です。「見える化」ということで地域の経済を見える化する努力をされています。それによって、地域の経済のどこに穴が空いているか、大きくはエネルギーだということで、豊富にある森林バイオマスを使って、熱の自給を進めています。

それによってすでに、化石燃料費の削減として、2億円以上のお金を域内にとどめることができています。加えて、熱や森林資源を使って、小さいけれどもさまざまな産業が起こっています。それによってどんどんと人々が移住をして、今は社会増という、1つの成功事例になっています。

地域の経済状況も人々の豊かさの実感も向上するような、そういった成長戦略をつくることができればと思っております。

以上です。ありがとうございました。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~

来年のG20に向けて何度か懇談会が開催されることになっています。

「成長戦略」の「成長」とは単なるGDP増大という意味での経済成長ではない、大企業がどんどん先進技術を開発して国際競争力を増すことも大事だけど、レジリエントで幸せな暮らしや地域をつくっていくことも大事、という思いを胸に、精いっぱい考え、発言しようと思っています。またお伝えします。

 

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