今日の朝日新聞(東京、大阪、名古屋版)に広告が出ていますが、光文社新書より、東洋経済の考え方・中国古典の知恵を人生に活かすためのヒント満載の本が出ました。
日経新聞では14日付に広告が掲載されており、朝日新聞の九州・北海道版は明日17日に広告が出ます。
『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』 (光文社新書) 864円
田口佳史・ 枝廣淳子 (著)
先日出版された『人生のピークを90代に持っていく!』と同様、数年前から進めていた企画ですが、やっと世に送り出せて本当にうれしく思っています。
東洋思想や中国古典は、リーダーシップ論や戦略論としてはよく取り上げられ、書籍もたくさん出ています。私は、8年ほど前に本格的に勉強を始めてから、「これは、現役で働いている人たちはもちろん、子どもから若者、子育て世代、退職後の方々の人生の役に立つ!」と思い、人生論として、よりよい生き方の指南として、ぜひ伝えたい!と思うようになりました。私の師でもある東洋思想・中国古典の第一人者である田口佳史先生に何度もお話をうかがって、一緒につくりあげた1冊です。
ぜひご一読いただきたく、「はじめに」と「目次」をご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
はじめに
「いけいけドンドン」の時代が終わり、これまで「絶対」だと信じてきた価値も揺らいでいる。何か大事なものを失ったのではないか、このままではいけないのではないかとの漠とした不安が頭をもたげては、むりやり見ないふりをして過ごしている毎日──。
この混迷の時代に、どうすれば、「今日もいい一日だった」と、充足感のある自分らしい人生を生きていけるのだろうか?──とまどい、模索する人々が増えている。
日本の子どもたちは幸せなのだろうか? 価値観が多様化した社会の中で、子どもたちをどのように育てればよいのだろうか? 日本の将来を切り拓いていく力を持った子どもたちが育っているのだろうか? 幸せで力のある人間に育てる方法がわからず、他人との比較や学校の成績といった狭い視野で、子どもの豊かな人生の芽を摘んでしまっている親も多いのではないか。
子ども時代を人生の「春」とすれば、「夏」は、20代~40代ぐらいだろうか。人生でも最もエネルギーに満ち満ちているこの時期、「人生100年時代」も念頭に置いた上で、どのように自己を鍛錬し、成長していけばよいのだろうか。
そして、40代後半から50代の「秋」。人生100年時代には、多くの人がここからあと50年生きていくことになる。この時期にしっかりと後半生の準備を進めるにはどうしたらよいのか。自分の軸をどのように持つことができるのか。
「冬」、60代~70代以降。いかにこの冬の時代の楽しさを味わいながら、「死」と向き合っていくことができるのか。
混迷の時代に、まわりの要望や時流に翻弄されることなく、自分らしく納得のいく人生を歩んでいくためには、自分なりの確固たる「軸」や「芯」が必要である。東洋思想は、そのような「軸」や「芯」を形成していく上で、大きな土台となり、刺激となり、教えとなる。
東洋思想とは、儒教や道教をはじめとする中国哲学やインド哲学、日本哲学など、アジアで生まれた思想だ。スティーブ・ジョブズが禅に傾倒していたことはよく知られている。また、近年シリコンバレーをはじめとする欧米企業では瞑想や禅をベースとしたトレーニングが盛んになっている。西洋近代思想の行き詰まりを打開する可能性を東洋思想に求める人が増えてきているのだ。そして、東洋思想には私たちの生き方の行き詰まりをも打開してくれる力がある。
環境やエネルギー問題、地方創生に関わっている人間がなぜ東洋思想? と思われるかもしれない。
私が環境問題に取り組み始めたのは、20年以上も前のことだ。温暖化、生物多様性......と次々と地球環境問題が姿を現す状況に、「こうした〝問題〟は実は、『根本的な問題』の〝症状〟のひとつだ。こうした多くの問題を引き起こしているのは、有限の地球の上で無限の経済成長を求める現在の経済や社会の構造ではないか。幸せとは何か、地球の持続可能性を損なうことなくみんなが幸せになれる経済や社会とはどういうものかを考えずして、環境問題を解決することはできない」と思い至り、2011年に幸せ経済社会研究所を設立し、活動を始めた。
「あるべき経済や社会の姿とはどのようなものか」を考えることは、「私たちはどう生きるべきか」を考えることにもつながる。こうした問いへの答えを求めて、7年前から東洋思想の第一人者・田口佳史先生のもとで中国古典を学び始めた。この時代を幸せに生きていく知恵と真に持続可能な社会を築くためのヒントはここにある! という確かな手応えを感じつつ、勉強を重ねている。
本書は、田口先生に私がさまざまな角度や切り口でお話をうかがい、「人生100年時代を幸せに生きる糧に」と一緒に編み上げたものである。
子ども時代は子ども時代の、青年期は青年期の、成人期は成人期の、そして今後多くの人々が人生の長い時間を過ごすことになる老成期には老成期の、課題と豊かな可能性がある。人生の春夏秋冬を、田口先生はどのように生きてきたのか? 東洋思想から得られるものは何か? その生き様と先生の語る東洋思想の真髄は誰にとっても有用な手引きとなると信じている。
東洋思想・中国古典は、これまで、戦略論やリーダーシップ論など、経営者やリーダー向けに説かれることが多く、「それだけではもったいない」と思っていた。若者や子育て中の親、企業人や主婦、高齢者など、幅広い層の人々にとっても、この混迷と混乱の時代を、しなやかに強く凜々しく生きていくための教えやヒントがいっぱいあるからだ。本書が混迷の時代に生きていく一人ひとりの「軸」や「芯」の形成の一助となることを心から願っている。
田口先生はよく、「愉快な人生」と言われる。そう、愉快な人生を送ることができたら、本当に幸せだろう。しかし、世の中は厳しく、時代は先が見えず、刹那的な「愉快な瞬間」はあっても、「愉快な人生」なんてあるのか、と思う人も多いかもしれない。でも本書を読んでいただければ、人生のどの段階からでも「その後の愉快な人生」をつくり出すことができるのだ! と思っていただけると思う。
しなやかに強く、軽やかに幸せな人生、愉快な人生に向けて一歩でも二歩でも進んでいただけたら、著者としてこれ以上うれしいことはない。
<目次>
はじめに
第1章 「春」──幸せな子どもの育ち方
愉快な人生の土台をつくる/「教える」とは「引っ張り出す」こと/「慈愛」と「義愛」/慈愛と義愛から四端、そして四徳へ/発見イコール感動/素読のパワー/本がいらない、共鳴感/江戸時代の三位一体型教育/寺子屋は個別授業/江戸の教育の最初は「清掃・応対・進退」/清掃──三つの効用/応対/進退/「孝行」と「徳」──江戸時代の教育の背景にある人生観悩んだら、田口先生に聞いてみよう(1)
第2章 「夏」──青年期の自分の育て方
人間にはアクセルとブレーキが必要/「五欲」と「禽獣」/孔子はなぜ三大聖人の一人になれたのか?/アクセルとブレーキの判断基準は「調和」/不易の「調和」と易の「ライフサイクル」の調和が鍵/人間的成長とは、宇宙の調和を読み取れるようになること/宇宙の秩序の読み取り方/人間を磨く──古典を読む意味/自己を鍛える! 「立腰」「慎独」「克己」の効果とコツ/立腰/慎独/克己/精神の鍛え方──内面を見続ける/自反内省/自分の嫌なところを見つめる/生きること自体が修行/外側にあるものは内側・心の産物/「主客同一」/内面を見つめる──自分の体験/生死の境をさまよう重傷/職務質問を避けるために起業/食えないからやるしかない/思考能力の鍵は、「根源、長期、多様」/セカンド能力のところでファースト能力を発揮する──就職のコツ悩んだら、田口先生に聞いてみよう(2)
第3章 「秋」──人生の陰と陽を生きる成年期
人生の陰と陽の生き方/陰のときは「しめた」と思え/心の持ち方しだい/両極の悩みに悩んだ三〇代、四〇代/会社を畳む決断/一〇〇%成功する大人の勉強法/「精通する」という感覚を得る/「嫌なことよ、来い」/幸せのおおもとは心にある/ポジティブ思考との違い/「生きているということはトレーニングだと思え」──事上磨錬/幸せとは本人の心次第/老荘思想の危険地帯/経営計画はシナリオだ/未達はありえない/「道」は田舎の母のようなもの悩んだら、田口先生に聞いてみよう(3)
第4章 「冬」──人生の終章の生き方
「自分には能力も経験もない」という前に/生きるとは生涯現役であること/年季の入る生き方、入らない生き方/「動じない」人間になる/人生の午後には、自分のメッセージを作っていく/古典は体験の整理に役立つ/「死」とは「帰っていくこと」/『老子』の「生死論」との出合い悩んだら、田口先生に聞いてみよう(4)
終章 現代を生きるための東洋思想
ぶれずに柔軟な「東洋思考」とは/日本の地理的特性とそれが生んだ思想哲学/現在、私たちが直面している諸問題の根源/「越えてはならない一線」を社会が共有する/東洋と西洋の知の融合をめざして/経済成長をどう考えるか/経済成長一辺倒では、陰陽にならない/立派な人間になることの意味/ブレーキを持っているかどうか/心の満足のための産業とは?/人格について/人間として生きることを学ぶ/技術に精神はあるか?/国家を考える/たかだか三七〇年ぐらいの歴史しかない国家/国民国家のマイナス面が噴出する時代/横井小楠が唱えた、王道論の政治/本当の意味での「国民国家」/構想係がいなくなった明治政府
あとがき(田口先生)
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私なりの問題意識・視点で中国古典を読んでいると、いろいろと発見があってわくわくしてきます。たとえば、SDGsの17目標のほぼすべてに対する考え方や取り組みが、「書経」や「孟子」にも出ているのです! 「持続可能性」の要諦をずばりと伝える物語もあります。そのうち、「中国古典におけるSDGs」という本を書きたいなあと思っています(^^;
20代の頃から、中国古典・東洋思想に惹かれるものを感じ、「いつかはしっかり勉強したい」と思っていました。40代に田口先生に出会うことができ、そのもとで実際に勉強を始めて、「魂が悦ぶとはこういうことか」という時間を過ごす中で、「子育てや生き方に悩んでいる人たち、自分らしく生きたいと模索している人たちに少しでも伝えたい!」と思うようになりました。
その思いが叶って、本当にうれしいです。自分なりの「ぶれない軸」「愉快な人生」の参考になれば幸せです。
『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』 (光文社新書)
田口佳史 (著), 枝廣淳子 (著)