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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2019年01月20日

事業を通じた社会課題解決による持続可能な成長をめざす味の素グループの取り組み (2019.01.20)

新しいあり方へ
食と生活
 

味の素グループのASV活動(Ajinomoto Group Shared Value:事業を通じた社会的課題解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創出することで経済価値を向上し、成長につなげる活動のこと)をさらに前に進めていくためのお手伝いをさせていただいています。

具体的には、ASV活動の発展・進化に必要なESG投資やSDGsの視点などについて社員の皆さんの理解を深めていくために、味の素グループ内表彰制度(ASVアワード)の社外審査委員としての協力や、経営層・社員とディスカション等です。

ASVアワードの審査で、同社の世界各地でのさまざまな取り組みを知ることができ、企業が社会課題に取り組むとはどういうことなのか、しかも、企業価値につながる取り組みにしていくには何が大事なのか、いろいろと考えることができました。

食品メーカーだからこそのASVの取り組みについてぜひ広く知ってほしい!と思い、幸せ経済社会研究所から毎月世界に向けて発信している英語ニュースレターで発信した内容をお伝えします。

(英語版はこちらからお読みいただけます)
https://www.ishes.org/cgi-bin/acmailer3/backnumber.cgi?id=20181225

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

味の素グループ、事業を通じた社会課題解決による持続可能な成長

総合食品メーカーの味の素グループは、ミッション「私たちは地球的な視野にたち、"食"と"健康"そして、明日のよりよい生活に貢献します」、ビジョン「先端バイオ・ファイン技術が先導する、確かなグローバル・スペシャリティ食品企業グループを目指します」を実現するため、ASV(Ajinomoto Group SharedValue)を戦略の中核と位置づけ、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。

ASVは2014-2016中期経営計画で表明されたもので、「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」という社会課題に関わる領域での貢献を具体的にし、課題を解決するための行動を4つのストーリーにまとめています。

【ASVを通じた価値創造ストーリー】
1.先端バイオ・ファイン技術とそこから生まれたおいしさ設計技術により、おいしくからだに良い食で、健康づくりに貢献します

2.食を通じて、家族や人と人がつながり、多様なライフスタイルを実現できる社会づくりに貢献します

3.モノづくりから消費の場面に至るまで、社会とお客様と共に地域・地球との共生に寄与します

4.グローバルトップクラスの多様な人財が、お客様起点で地域と価値を共創します

味の素グループでは、ASVをより良いものにしていくためには、従業員一人ひとりの理解と実践が重要との考えから、2016年度に「ASVアワード」を創設し、優れた取り組みを表彰。2017年度ASVアワードの実施にあたっては、幸せ経済社会研究所所長の枝廣が、社外審査委員として協力しています。

具体的には、どのような取り組みが進められているのでしょうか? ここでは、国内外の取り組みをそれぞれ1つずつご紹介します。

○東北地方における「減塩・適塩」の取り組み

東北地方では、古くから塩分が多く摂取されています。塩分摂取量が多いのは、寒冷な気候が影響していると言われています。以前は、雪深い東北で生きていくためには、食料を塩漬けにして保存することが必須でした。その味に慣れていく中で、塩分を多く摂取する東北の食文化が育ったということです。

塩分摂取量の多さは、脳血管疾患につながることが指摘されています。厚生労働省が実施した2012年の人口動態調査によると、都道府県別での脳血管疾患による死亡率の上位3県は、いずれも東北地方でした。

こうした状況を背景に、味の素株式会社東北支社(以下、東北支社)では「減塩・適塩」を広める取り組みを2014年から行っています。

最初に取り組んだのは、「だし活!健活!減塩推進事業」。だしのうま味を活かすことで減塩による物足りなさを感じさせないメニューを青森県に提案し、行政や流通と連携して健康的な食の普及を目指す活動をスタートしました。その後も地元のスーパー等を対象にした勉強会を開催したり、減塩メニュー普及のためのイベント企画に協力したりするなど、継続的に活動に参画しています。

岩手県では、地元の量販店と連携して、県に「減塩・適塩」の重要性を理解してもらうための働きかけを行いました。2015年7月、岩手県は毎月28日を「いわて減塩・適塩の日」と定め、県民の意識改革を進めるための取り組みを始めています。

東北支社では、「だしを使った上手な減塩法」をテーマとしたセミナーや、「芋の子汁」等の地域の旬素材を使ったメニューの提案を実施。流通と連携してチラシ紙面や店頭スペースを使ってアピールしたり、県のキャラクターを活用したイベントを行ってマスコミに取り上げてもらったりすることで、生活者への浸透を図っています。

岩手県に住む男性の1日あたりの食塩摂取量は、厚生労働省の調査結果を見ると、2016年には2012年の12.9グラムから10.7グラムに減少、女性も11.1グラムから9.3グラムに減少し、全国平均とほぼ同じ値になっています。

取り組みを進めるにつれ、「減塩」製品のプロモーションを展開する延べ店舗数が年々増加。2017年度には2015年度の3.8倍になりました。それに呼応するように家庭用「減塩」製品の売上も、2017年度は2014年度比で145%に伸びています。

東北支社では、岩手県で確立した、行政・マスコミ・流通と連携して「減塩・適塩」の意識を浸透させる仕組みを東北の他県にも展開し、価値創造を更に進めようとしています。

○ベトナムにおける栄養改善の取り組み

世界では、官民連携で途上国の栄養改善を実現しようという動きが起きていて、ビジネスセクターへの期待が高まっています。2010年には、途上国の栄養問題の解決に取り組む世界的な枠組み、SUN(Scaling Up Nutrition)がスタート。2018年10月現在、アジア、アフリカ、中南米の途上国60カ国が、SUN countryとして参画しており、ベトナムも加わっています。

ベトナムにおける栄養に関する課題は、栄養不足と過剰栄養の混在です。国民の栄養に対する知識や問題意識の不足が原因と考えられます。小学校の給食についても栄養バランスのガイドラインがなく、健全な発育に役立つ給食が実施できていない状況でした。

そこで味の素グループでは、「ベトナム栄養関連制度創設プロジェクト(VINEP:Vietnam Nutritional System Establishment Project)」「学校給食プロジェクト(SMP: School Meal Project)」という2つのプロジェクトを立ち上げ、ベトナムの栄養課題の解決に取り組んでいます。

VINEPは、正しい栄養知識を持ち、伝える人を養成するために2011年、ベトナム国立栄養研究所(NIN: National Institute of Nutrition)と味の素株式会社が合意してスタート。2012年にハノイ医科大学への4年制栄養学士コース設立が教育訓練省により認可され、2013年に開校すると、2017年には第一期生43名が卒業し、ベトナム初の栄養士が誕生しました。

並行して関連法規整備にも取り組み、2015年に保健省・内務省により栄養士ジョブコードが制定。毎年ワークショップを開催したり、粘り強く当局への働きかけを続けたりしたことが功を奏したものです。これにより、前述の栄養士の多くが病院・行政機関などで職を得ることができました。2017年からは、より具体的で統一的な栄養施策実施基準の制定に向け、新たな動きが始まっています。

更に、栄養教育の拠点となる大学を増やすために必要な教員を養成するために「栄養教育センター」をつくり、研修教育制度を充実させていくことが予定されています。なお、2017年4月、VINEPは味の素(株)より(公財)味の素ファンデーションへ移管されました。

SMPは、2012年に立ち上げられました。地域の食文化に合わせた献立を8週間分掲載したメニューブックや、食育冊子等を作成、配布。モデルキッチンを各地に設置しながら、献立開発用ソフトウェアの開発も進めました。

2017年1月には、調理施設のある小学校3,880校に献立ソフトが導入されることが決定。現在、小学校へのソフト活用のための説明を進めており、2019年までには4,061校、約142万8千人の子どもたちに、栄養バランスの高い給食を届けられるよう、活動は続きます。

味の素グループでは、こうした取り組みの経済面でのメリットについて、自社への信頼感が高まることや、製品の良さが正しく理解されることでのブランド価値向上、自社製品を使用したレシピ開発による販売増加などを挙げています。

味の素グループ統合報告書2017には、ASV価値創造モデルとして、「ASVは、社会課題の解決を通じて創出された経済価値を事業活動へ再投資することで、更なる社会課題の解決に貢献するという好循環を作り出し、サステナブルな成長を実現するための戦略的な取り組みです。」と記載されています。

今回ご紹介した事例を含め、様々な取り組みが展開され、価値創造モデルを体現しているASV。今後どのように進化し、社会課題の解決への取り組みを自社の価値向上につなげていくのか、要注目です。

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【参考資料】
味の素グループのASVおよび統合目標設定までの歩み
https://www.ajinomoto.com/jp/ir/esg/asv_history.html
味の素グループ統合報告書2017
https://www.ajinomoto.com/jp/aboutus/pdf/integrated_report_2017.pdf

行政・流通との連携で、だしのうま味を活かした減塩を広める
https://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2016/f1.pdf
平成28年国民健康・栄養調査報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h28-houkoku.html
平成24年国民健康・栄養調査報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h24-houkoku.html
平成24年(2012)人口動態統計(確定数)の概況 ⇒ 参考表(都道府県別順位)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/index.html
東北の食文化
https://www.tfu.ac.jp/tushin/with/200408/11/01.html
脳卒中全国ワーストから脱却 岩手県が「いわて減塩・適塩の日」を設定
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2015/004326.php

SUN (Scaling Up Nutrition) Business Network について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/kokusaitenkai/eiyo_dai1/siryou12_2.pdf
食・栄養分野における日越官民連携の事例
http://njppp.jp/wp/wp-content/uploads/9d593d843ff555730490230dcfb1119d.pdf
VINEP:ベトナム栄養制度創設プロジェクト
http://www.theajinomotofoundation.org/vinep/
味の素グループサステナビリティデータブック2017(p. 21)
「食の知見やノウハウを提供し、課題解決に役立てる」
https://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2017/f1.pdf#page=11

 

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