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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2019年03月23日

エネルギー基本計画での「分散型エネルギー」の位置づけとは (2019.03.23)

エネルギー危機
大切なこと
 

日本のエネルギー政策は、「エネルギー基本計画」をもとに展開されます。現在のエネルギー基本計画は、昨年7月に定められたもので、そのまえの1年ほど議論をつづけたエネルギー情勢懇談会の提言がベースになっています。私もエネルギー情勢懇談会にメンバーとして参加し、とくに「地域の視点」を強く訴えました。

エネルギー情勢懇談会の提言、ならびに、その後制定されたエネルギー基本計画の大きなポイントとして、メディアに取り上げられたのは「再エネの主力電源化」と「原発依存度を可能な限り低減する」ということでした。

議論に参加してきた私は、それももちろん大事だけど、中長期的に大事なことがほかにもある、と思い、メールニュースでも紹介しました。こちらにあります。

「エネルギー情勢懇提言、エダヒロの3つのポイント!」

特に中長期的に非常に大事な3つのポイントとして、
・「未来は不確実」を前提にしたこと
・単体電源を選ぶ時代から、システム全体のコストを考える時代へ
・地域・分散型エネルギーへの力点

があると、メールニュースなどで書いたのですが、今回は、そのなかでも「分散型エネルギー」がエネルギー基本計画のなかでどのように位置づけられているかを確認したいと思います。

ちなみに、前回のエネルギー基本計画(平成26年4月)でも「分散型」への言及はありますが、今回のエネルギー基本計画(平成30年7月)では力の入れ方がまったく違います。

「分散型」という言葉を検索してみると、前回では22回言及され、今回は46回言及があります。

前回は、分散型エネルギーに関する言及箇所は、「関心が高まった」「有効性が認識される」「期待される」という文脈がほとんどで、「大事だと思うが、今後の話だよね」という印象です。

では、今回のエネルギー基本計画ではどのように分散型エネルギーを位置づけているのでしょうか。

46回言及されているすべては紹介できませんが、大事だと思う箇所をいくつか抜粋して紹介します。

ちなみに、エネルギー基本計画は資源エネルギー庁のウェブサイトから入手できますので、詳細はぜひそちらをご覧ください。

第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/180703.pdf

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

<第5次エネルギー基本計画より、「分散型エネルギー」に関する箇所の部分的抜粋>

地域に賦存するエネルギー資源を有効に活用し、自立・分散型のエネルギーシステムを構築することは、地域の経済活性化、防災などの強靱化につながる。

地産地消型の再生可能エネルギーの普及やコージェネレーションの普及、蓄電池等の技術革新、AI・IoTの活用などにより、需要サイド主導の分散型エネルギーシステムの一層の拡大が期待される。

3.再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組(2)地域との共生を図りつつ緩やかに自立化に向かう地熱・水力・バイオマス の主力電源化に向けた取組

地域に賦存する地下の蒸気・熱水を活用した地熱発電、小河川や農業用水などを活用した中小水力、地域に賦存する木質を始めとしたバイオマス、太陽熱・地中熱等の再生可能エネルギー熱等は、コスト低減に資する取組を進めることで、コスト面でもバランスのとれた分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性がある。また、地域に密着したエネルギー源であることから、自治体や地域企業や住民を始め、各地域が主体となって導入が進んでいくことが期待される。

加えて、再生可能エネルギーを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながるものであるとともに、緊急時に大規模電源などからの供給に困難が生じた場合でも、地域において一定のエネル ギー供給を確保することに貢献するものである。

これらについては、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくよう、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行っていく。また、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推し進める。

さらに、分散型エネルギーシステム内で余剰となった蓄電池の電力も含めた電力を系統に供給することを弾力的に認めるため、逆潮流に関わる運用を柔軟化し、このために必要な系統安定化のための技術革新を進める。

(4)再生可能エネルギー由来水素の利用拡大に向けた技術開発の推進と地域資源を活用した地方創生

様々な資源から作ることができるという水素の特性を活かし、いくつかの自治体では、地域の未利用資源(副生水素、再生可能エネルギー、下水汚泥等) を水素に換え、FCVやFCフォークリフト等で活用する、地産地消型の水素サプライチェーンの構築の取組が進んでいる。こうした取組は、低炭素化や地域のエネルギー自給率の向上といったエネルギー・環境政策上の意義に加え、地域の雇用や産業の創出といった地方創生にもつながる。

このため、地域における水素を活用した分散型エネルギーシステムの将来的な需給や市場規模を想定し、中核である水電解システムの低コスト化、水電解システムの規模の最適化、部品や技術の共通化等に取り組むとともに、低炭素な水素利活用に係る先進的な取組を進める自治体を後押しし、地域発での水素社会の実現を進める。

再生可能エネルギーやコージェネレーション、蓄電池システムなどによる分散型エネルギーシステムは、危機時における需要サイドの対応力を高めるものであり、分散型エネルギーシステムの構築を進めていく。

10.エネルギー産業政策の展開

太陽光発電や燃料電池を含めたコージェネレーション、EV・定置用蓄電池等の分散型エネルギーリソースの普及とエネルギーマネジメント技術の高度化に伴い、分散型エネルギーシステムの拡大が進んでいる。

地域のエネルギーを地域で有効活用する地産地消型エネルギーシステムは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギーシステムの強靭化に貢献する取組として重要であり、また、コンパクトシティや交通システムの構築等、まちづくりと一体的にその導入が進められることで、地域の活性化にも貢献し、「地域循環共生圏」(第5次環境基本計画。2018年4月17日閣議決定)の形成にも寄与する。

地産地消型エネルギーシステムの中核は、"熱"を中心とする地域のエネルギー資源の有効活用と、それを実現するためのエネルギーマネジメントにある。熱エネルギーは遠隔地への供給が困難であるため、地消することが必要である。

また、エネルギーを地消する際には、熱を複数の需要家群で融通し、無駄なく活用する、いわゆるエネルギーの面的利用の取組や、エネルギーの供給条件等に応じて柔軟に需要側のエネルギー消費量や消費パターンをコントロールする、いわゆるディマンドコントロールの取組など、高度なエネルギーマネジメント技術を活用した取組を推進することが重要である。

こうしたエネルギーシステムの分散化の動きは、ディマンドリスポンス等の活性化につながり、エネルギー供給構造の効率化が図られる。また、非常時にも、エネルギーの安定的な供給を確保することが可能となり、生活インフラを支え、企業等の事業継続性も強化する効果が期待される。

地産地消型エネルギーシステムの普及に向けては、国、自治体が連携し、先例となるべき優れたエネルギーシステムの構築を後押しするとともに、CEMS(一定のコミュニティ単位のエネルギー需給管理システム)、スマートメーターからの情報をHEMS(家庭単位のエネルギー需給管理システム)に伝達する手法(Bルート)等の基盤技術、エコーネット・ライト(Echonet-Lite(HEMS と家庭内機器との間の通信規格))等の標準インターフェイス等、これまでの実証実験等の成果を最大限活用しつつ、エネルギーシステム構築のための関係者調整等のノウハウ等の共有化を図る。

また、分散型エネルギーリソースの普及は、こうしたリソースをIoTにより遠隔制御し、電力の需給バランスの調整に活用するバーチャルパワープラントを構成する土台となる。地産地消型エネルギーシステムの普及を進めるとともに、新たなエネルギーサービスを展開するエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスの創出を図る。

第3節 各選択肢が直面する課題、対応の重点
(5)省エネルギー・分散型エネルギーシステムの課題解決方針

再生可能エネルギーの小型化や高効率化、蓄電池や燃料電池システムの技術革 新、輸送システムの電動化、そして需給制御を地域レベルで可能とするデジタル 化技術やスマートグリッド技術の進展は、これらを効果的に組み合わせることで、電力・熱・輸送のシステムをコンパクトに統合した効率的で安定、かつ脱炭素化 につながる需要サイド主導の地域における分散型エネルギーシステムの成立の可能性を高めていく。

自家発導入を率先して進めてきた鉄道・通信・病院・基地なども、エネルギーセキュリティの観点から、革新的技術に裏打ちされた分散型エネルギーシステムの開発に取り組んできている。

地域とエネルギーセキュリティ、この双方の観点から、技術に裏打ちされ経済的で安定した分散型エネルギーシステムの開発を主導し、世界に提案するとの姿勢で臨む。

エネルギーインフラの再設計を実行し、総合力のあるエネルギー企業と地域に根差した分散型エネルギーシステムの経営を担える企業群を共に育成する。

分散型エネルギーシステムの世界は、各地域に根差した経営マインドにあふれる新興企業が担い手として登場する可能性がある。世界市場を舞台に活躍する総合エネルギー企業群と地域で分散型エネルギーシステムの開発を担う企業群、この世界と地域で活躍する企業群を生み出す事業環境を用意し、それぞれの強みを活かし、エネルギー転換・脱炭素化を加速する構造を作り出していく。

また、この過程で、送電網の次世代化、分散型ネットワークシステムの開発などエネルギーインフラの再構築を加速していく。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

いかがでしたか?

単なるお題目ではなく、技術開発にせよ、企業群への支援にせよ、市場形成にせよ、かなり具体的に打ち手を考え、力を入れる意思が伝わってくるのではないかと思います。

エネルギー基本計画における言及だけではなく、具体的な予算や、問題への対処なども含め、いろいろと動いているようです。たとえば、

地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金
https://www.hkd.meti.go.jp/hokne/enejigyo/data02.pdf

再エネの開発に伴い、各地で地元との軋轢が生じているケースも増えています。そちらについても、このような資料から見ることができます。

再生可能エネルギーの地域共生に向けた取組について
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/community/dl/01_01.pdf

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、景観や環境への影響等をめぐり、立地地域において調整が難航する事案も顕在化してきた。

資源エネルギー庁HPにて平成28年10月より「不適切案件に関する情報提供フォーム」の運用を開始。本年8月末時点で、延べ223件の通報が寄せられた。このうち自治体からは24件の通報があり、大半は法令違反、条例違反及び地元との調整に関するものであった。)

2030年に向けた政策対応(再エネ関係)
再エネの導入拡大が進むにつれ、電力系統へ受け入れるコストの増大、さらに、地域との共生や発電事業終了後の設備廃棄に関する地元の懸念に加え、小規模電源を中心に将来的な再投資が滞るのではないかといった長期安定的な電源に対する懸念も明らかとなってきている。日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源として持続可能なものとなるよう、円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

上記の資料を見ていただくと、通報のうちのいくつかの事例が掲載されています。また、政策対応としては、「安全の確保」「地元との共生」「適切な廃棄」への取り組みが進められているようです。

「地元経済の漏れ穴を見つけてふさごう!」という地域の取り組みが非常に大事だと思い、お手伝いさせていただいている私としては、多くの地域にとっての最大の漏れ穴であるエネルギーは、エネルギー問題だけではなく、地域経済問題だと考えています。地域資源をじょうずに持続可能に活用して、地域分散型のエネルギーシステムをつくっていくことは、しなやかに持続可能な地域経済にとっての大きな鍵の1つなのです。

その観点からも、分散型エネルギーを地域で広げていく取り組みや支援にこれからも力を入れていきたいと思っています。

最後に、お知らせです。

【お知らせ】環境メールニュースの配信元が変わります

この環境メールニュースはこれまで
「enviro-news@ml.asahi-net.or.jp」から配信をさせていただいていますが、2019年4月半ば以降から、配信システムが変更となります。詳しい日程が決まりましたら、改めてご案内をさせていただきますが、

新しい配信メールアドレスは
「enviro-news@es-inc.jp」(有限会社イーズ)となります。

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また近くなりましたらお知らせします。

 

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