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2019年04月13日

公民連携で町を再生~紫波町オガールプロジェクト (2019.04.13)

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少し前に岩手県紫波町の素敵な取り組みを英語にして世界に発信しました。その日本語版をお届けします。わくわくしますよー!

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

公民連携で町を再生~紫波町オガールプロジェクト

東北地方の北東部に位置する岩手県。人口約30万人の盛岡市と10万人の花巻市の中間に、紫波町はあります。町の中央部にある紫波中央駅前には官民複合施設のオガールプラザがあり、図書館と地域交流センターからなる情報交流館を中心に、子育て支応援センター、産直販売所、カフェ、居酒屋、医院、学習塾が入居。ほかにもフットボールセンター等さまざまな施設が展開されています。人口3万人強の町ながら、複合機能を有する拠点として年間100万人近い来訪者を集めています。

1998年、紫波町は紫波中央駅前の土地10.7ヘクタールを県住宅供給公社から購入。多目的体育館などを整備したものの、ほとんどの部分が手つかずのまま10年近く放置されていました。長い間眠っていた土地は、2007年から始まった都市再生プロジェクト(オガールプロジェクト)によって魔法をかけられたように生まれ変わります。しかし、このプロジェクトを成功に導いたのは、決して魔法などではなく、公民連携による地道な取り組みの積み重ねでした。

今月号のニュースレターでは、人口わずか3万人ほどの町に驚くような変化をもたらした、公民連携の取り組みをご紹介します。

○公民連携に至る道筋
紫波町では、経営品質の高いまちづくりを行うことを目的に、企業・町民・行政が一体となった町長直轄の諮問機関を2003年に立ち上げました。2005年、全国の再開発事業の現場を行政側として見てきた豊富な経験を持つ岡崎正信氏が委員に加わったことをきっかけに、公民連携に向けた動きが始まります。

岡崎氏は、行政が主導するまちづくりに限界を感じていました。中心市街地活性化や区画整理といったスキームで都市を再生できるのは、人口が増加している場合であり、人口減少の局面には通用しないと考えていたからです。

2010年からの30年間の予測によると、紫波町では人口が約7千人減少し、高齢化率は24%から3735%に上昇。高齢化に対応するためのさまざまな行政サービスを町民から求められることが予想されますが、人口減少による税収減が見込まれることもあり、要望に応えきれなくなることが想定されます。そこで、町が2005年から推進している協働の考え方に基づいて、民間企業や市民団体、住民が積極的にまちづくりに関与する公民連携のスキームを取り入れることを提案しました。

しかし、岡崎氏自身、公民連携で何をすれば良いのか、具体的なアイデアは持ち合わせていませんでした。2006年9月から東洋大学大学院で公民連携について学び始めると、翌年2月には町長をはじめとする町役場の幹部職員が参加する勉強会を開催。彼が所属するゼミのメンバーと、紫波町における公民連携実現の可能性について意見を交わしました。

2007年3月に町長が議会において「公民連携によるまちづくり元年」を宣言。4月に紫波町と東洋大学との間で公民連携の推進に関する協定を結ぶと、5月には町民60人からニーズをヒアリング。着々と準備を進めてプロジェクトの輪郭を作り上げ、公民連携の取り組み、オガールプロジェクトを8月に開始することを町長が決断しました。

紫波町では、プロジェクトを迅速に展開するために、2008年1月に公民連携室を立ち上げ、紫波町庁舎内に設置。公民連携の認知度を高めるとともに、民間側の参加を狙い、町民や民間企業の意向調査を実施しました。また、ウェブサイトの開設やブログを通じた情報提供も行っています。

それから、町民がプロジェクトを自分事として捉え、自ら参画しようという意欲を持ってもらえるよう、町長や町役場の幹部職員が町民と意見交換をするワークショップを100回以上にわたり実施。1)町民の意見を聞く、2)聞いた意見を集約し、取り纏めた内容を確認する、3)プロジェクトのゴールのイメージを提示する、4)公民連携の基本計画案を説明する、というステップを踏むことで、町民の理解や関心を深めていきました。

○公民連携基本計画こうしたプロセスを経て紫波町は2009年2月、公民連携基本計画を策定しました。計画の目的は、"町民の資産"である町有地を活用して、財政負担を最小限に抑えながら、公共施設整備と民間施設等立地による経済開発の複合開発を行うことです。公民連携手法による役場、図書館の建設と町有地を活用した経済開発を行います。

計画の理念は「都市と農村の暮らしを『愉しみ』、環境や景観に配慮したまちづくりを表現する場にします」。町の中心部が「こんな町に住みたい」という住環境、「こんな町で働きたい」という雇用の場となり、紫波の暮らしに共感する人が訪れ、その良さを享受してもらえる場になることがふさわしい、としています。

開発の考え方を「町中心部の賑わいが町全体へ波及し、中心部と各地域のつながりを重視した、持続的に発展する町を目指します」として、大きく3つのポイントとそれぞれについて2つの目標を掲げています。

1)農村(田園)と都市(街)が共生するまち
-農産物や農村の良さにふれることのできる市街地の形成
-都市機能の集積と使いやすく人々が集う市街地の形成

2)若者、高齢者、すべての人が希望を持ち、安心して暮らせるまち
-定住促進を図るための住環境が充実した市街地の形成
-多様な雇用が生まれ、若者が学び・働き・挑戦できる環境の充実

3)人にも地球にも「やさしい」まち
-環境への配慮を実践する市街地の形成
-すべての人にやさしい市街地の形成

○オガールプロジェクトの成果
策定した基本計画を実行に移していくために2009年6月、町出資のまちづくり会社「オガール紫波株式会社」が設立されました。町に代わって、プロジェクトの計画、開発、運営を一体で進めます。公民連携室と協力し合うことで、町役場のスピーディーな意思決定を促したり、行政の経験に基づくアドバイスを運営に活かしたりすることで、公民連携ならではの成果につなげます。

オガールプロジェクトの公共空間におけるデザインには、さまざまなガイドラインが設けられています。民のアイデアを公がサポートし民が実施、という仕組みにより基本計画に沿ったまちづくりを担保します。民間による施設整備の資金調達では、投資のプロをアドバイザーに迎え、事業計画の実効性が厳しく問われる証券化の手法を採用。町は、他自治体での同規模の図書館整備と比較して、安価に施設を取得することができました。

プロジェクトの中軸となるのが、「稼ぐ」ビジネス支援図書館です。人口減少の局面では、商業を中心に据えた市街地活性化はうまくいかないという確信に基づいた施策です。どんな時代になっても人が集まる場所になることが必要条件。そのために、消費を目的としないパブリックな場をつくったのです。

オガール紫波のウェブサイトには施設紹介として、「『知りたい』『学びたい』『遊びたい』を支援する図書館。紫波に根ざした多様な企画展の開催や『夜のとしょかん』などイベントも充実。産業支援にも力を注いでいる。」とあります。「夜のとしょかん」は、ゲストスピーカーを呼んでさまざまなテーマでディスカッションを行う取り組み。図書館は、単に本を借りて情報を得るだけではなく、情報交流もできる場になっています。

図書館を中軸に、スポーツ施設や子育て支援施設、役場等を併設。消費を目的としない人にとっても魅力的な空間を作り、普遍的な集客装置としての役割を果たしています。そこに、地元の食材を入手できる産直施設やカフェ、居酒屋等を配置。産直施設の年間売り上げは、開業2年目に4億円規模に到達しました。オガールプロジェクトが生み出した雇用は250人、交流人口は100万人と、大きな成果を上げています。

「オガール」は、成長を意味する紫波の方言「おがる」と、駅を意味するフランス語「gare(ガール)」を組み合わせてつくられた言葉です。そこには、紫波中央駅を紫波の未来を創造する出発駅にするという決意と、このエリアを出発点として紫波を持続的に成長していく町にしたいという願いが込められています。公民連携の取り組みがどのように発展していくのか、今後も目が離せません。

【参考資料】
紫波町公民連携基本計画
http://www.town.shiwa.iwate.jp/material/files/group/9/08888196.pdf
オガール地区 デザインガイドライン - 紫波町
http://www.town.shiwa.iwate.jp/material/files/group/9/77499684.pdf

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