本日6月5日(水)、『プラスチック汚染とは何か』(岩波ブックレット)が岩波書店から発売されます。
プラスチック問題の本質、現状、世界の動向、企業の取り組み、私たちがすべきことなどを、豊富なデータや事例と共に88ページにまとめたハンディなブックレットです(670円)。
だれもが使っているからこそ、だれもが考え、取り組むことのできるプラスチック問題を契機に、真の意味での持続可能な社会とはどのようなものなのか、私たちはその実現に向けて何に取り組むべきなのか、対症療法を超えた議論の一助にぜひ役立てていただけたらうれしいです。
目次と「はじめに」をご紹介します。
【目次】
はじめに
第1章 プラスチックとはどんな物質なのか ―増える消費と廃棄
第2章 海洋プラスチック汚染 ―その現状と影響
第3章 プラスチック汚染を減らすために―世界の取り組みの動向
第4章 プラスチックごみ問題を考える視点と枠組み
第5章 日本の課題
おわりに
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「はじめに」
ここ数年、海洋プラスチック汚染の問題の顕在化によって、プラスチックごみ問題が世界中で注目を集めるようになった。これは世界規模で起こっている深刻な環境問題であり、とくに海洋プラスチック汚染は「21世紀最悪の環境問題の一つ」とも言われている。私たちの健康や産業・経済に関わる問題でもある。
今日、世界全体の海洋ごみのうち最大の割合を占めているのがプラスチックである。その正確な数値はわからないものの、海域によっては「外洋に蓄積しているごみの99.9%がプラスチックである」との報告もあるほどだ。合成物質であるプラスチックが海洋環境に蓄積し続けるにつれて、環境や社会・経済への悪影響も増大しつつある。
また、「魚料理を食べようと思ったら、中から小さなプラの破片が出てきた」「ペットボトルの水や塩からも微小なプラが発見された」など、私たちの身体にもその汚染が入り込んでいる可能性が報告されている。しかし、海洋環境にせよ、人体にせよ、汚染の影響がどのぐらいのものなのか、私たちにはまだその全体像がわかっていない。
他方、世界ではプラスチック問題に対する取り組みが急速に進んでいる。各国政府や自治体の取り組みのほか、SDGs(国連の「持続可能な開発目標」)の一つとして、また、次の競争優位性の戦場として、企業の取り組みも盛んになってきている。
プラスチック問題は「環境問題」であると同時に「資源問題」でもある。欧州では「サーキュラー・エコノミー」(循環経済)に転換していくうえでの「産業政策」としても取り組まれている。
プラスチックの何が、なぜ問題なのか? それに対して何をすべきなのか? このブックレットでは、海洋プラスチック問題だけではなく、プラスチック汚染全般への取り組みを考えていく。
~~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~
いまオーストラリアに出張中ですが、町中のフードコートなどでも、フォークやスプーンなどのカトラリーは、プラスチック製ではなく、木製のものを多く見かけます。
ノルウェー政府年金基金(GPFG)の運用を担うノルウェー銀行投資マネジメント部門(NBIM)が、世界中の投資先となる企業の取締役会に対し、プラスチックごみの汚染対策など、海の環境保全の取り組み強化と、関連情報の開示を企業に求める新たな方針を決定など、投資家も企業の「プラスチック問題への取り組み」を投資基準に入れ始めています。
今回のプラスチック問題への企業の対応を見ていると、「新たな環境・社会課題の台頭をいちはやくキャッチし、経営や事業戦略に反映するしくみがあるかどうか」という、各企業の体制の有無や程度が感じられる気がします。この体制こそが、どの企業にとっても、今後の生き残りと繁栄の鍵を握っていると考えています。