[enviro-news 2747] 海士町の「ビジョンづくり」のプロセスから生まれたもの(1)で、海士町の漁協・藤澤裕介さんのお話を紹介しました。今回は、海士町の玄関口に建つマリンポートホテル海士の経営に携わっている青山敦士さんのお話を紹介します。
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●観光協会職員→マリンポートホテル海士社長・青山敦士さん
甲子園にも出場した元高校球児の青山敦士さんは北海道出身。14年前に海士町に移住し、観光協会のスタッフとして働いているときに、あすあまが始まることになり、手を挙げてメンバーになりました。
青山さんは「ここ数年海士町が変わろうとしている変革のタイミングで、あすあまのメンバーのソーシャルキャピタル、関係資本がすごく効いてきているという実感があります」と言います。
あすあまのプロセスが始まったころ、青山さんは観光協会の立場でマリンポートホテル海士の検討委員会を立ち上げたところでした。1994年にできたこのホテルは3セクが経営しており、客室は40室。海士町の玄関口である菱浦港を見渡す丘の上に建っています。
ハードの老朽化にどう対応するか、というのが当初の検討事項でした。ただ、同じタイミングで経営者の引退という話が出てきたため、町役場の職員(あすあまメンバー)やホテルの従業員が一緒に「町に必要なホテルとは」と、ハード・ソフト両面での検討を1年間続けたそうです。
その結果、観光協会で丸10年勤めた次のキャリアとして、青山さんが社長を引き受けることに。2017年のことです。「自分はホテルマンでもなかったですし、葛藤はありましたが、最後はあすあまのメンバーが後押ししてくれました」。
「1年目のシーズンは、仕事を覚えるのに必死でしたが、その冬にたまたまJALさんから、2018年3月の1ヶ月間限定で、ファーストクラスの機内食を出してみないか、という話をいただいたんです」。地域の魅力発掘のためのプロジェクト「地域紹介シリーズ」の一つとしての話でした。マリンポートホテル海士の年間の利用客数は約1万人なのに対して、JALファーストクラス機内食への食材提供は1ヶ月で最低9,000食は必要です。また極めて高い品質が求められる上、3月は食材の種類があまり豊富ではない時期でもあります。
解決すべき課題は山のようにありましたが、青山さんはそれでも、このプロジェクトに挑戦しようと心を決めました。「それが海士町の新しい未来を切り開く突破口になってくれるように感じられたからです。食材の考え方も、一次産業の現状や課題、担い手の問題なども、あすあまの中で、いろいろなことに対する危機感が育まれていました」。
大変なことはいろいろありましたが、まずは「自分たちがこれまで当然だと思っていた考え方(メンタルモデル)を変えることが大変でした。それまでは、経費削減のために、「島外からいかに安い食材を仕入れて利益を出すか」が重視されていたのに対し、JALプロジェクトで求められたのは真逆の「いかに地元の食材を使って、付加価値を付けるか」だったのです。
それまでは問屋に電話して、「何キロをいつまで、いくら?」と価格交渉していたのが、今度は、生産者が「これ以上出せない」というところを、「何とか30キロ出してくれ」「今回は120円で買うから、こういう管理をしてくれ」という交渉。こうした交渉や説得をホテルスタッフが粘り強く行ってくれたおかげで実現したといいます。
そういう中で、ホテルマンにとっても、「地域の食材を使う出口を自分たちは担っているんだ。今回はたまたま機内に出すが、これをホテルの中でもやっていくん」だという原体験になったそうです。
JALプロジェクトがきっかけとなって招聘したホテルの料理長のアドバイスも得ながら、ホテルの食材の44パーセントまでは海士町の食材が使えるようになり、2019年度にはその数字を77パーセントまで上げられました。宿泊客からの評価も高く、客単価も大きくアップするという実績もあがってきました。
この「地消地産型ホテル」への大きな転換には、みんなで「ありたい姿」を話し合ったり、域内経済循環を議論したりしたあすあまのプロセスと、またチャレンジを応援してくれる仲間が土台の1つとして役立ったとのこと。
もう1つ、青山さんがあすあまを1つのきっかけに進めたプロジェクトがあります。海士町には高校までしかないので、高校を卒業すると島外に出て行ってしまう子どもが多いという現実があります。あすあまで、「仕事があれば島に残れる、または戻ってこれる子どもが増える」と議論したことがありました。
そのとき、「ホテルが、地元の島前高校生たちの就職の受け入れ先になれないか」という話も出ていました。そういった問題意識もあり、地元の島前高校が地域に開かれた高校にしていきたいという取り組みを始めることをきっかけに、マリンポートホテル海士が高校生と一緒に1年間の授業をつくるチャレンジを行うことになったのです。
島前高校には、「いろいろな地域の人の話を聞いて、地域に対する提案を行う」といった授業がたくさんあります。青山さんもそういう機会に参加して、観光のアイデアのプレゼンをしてもらっていたそうです。ただ、ホテルとしてもっと本気でとことん高校生と向き合おうと、「ホテルのスタッフの目標や夢を高校生が応援する」というユニークな仕立てにしたそうです。
具体的には、高校3年時に週に3コマある「生活教養ビジネス」を1年間、ホテルが一緒にやりました。毎週火曜日のその授業時間になると、高校生18人がマイクロバスでホテルにやってきます。ホテル職員6人~7人に対して、それぞれ生徒3人がついて、そのホテルスタッフのプロジェクトを伴走します。
ホテルスタッフは、全員「マイプロジェクト」を作っていたので、それを高校生に応援してもらいます。
青山さんは、「島内外の情報発信」をマイプロジェクトにしていたので、それを高校生が一生懸命応援してくれました。「青山さんが考えている情報発信って何ですか」「そもそも、なぜ情報発信をやりたいんですか」などと質問してくれる。そして、最終的には、「そのプロジェクトのために高校生として何ができるか」を考えて動いていく、という授業です。
ホテルにやってきた高校生たちは、そのようなヒヤリングをしたり、それ以外の時間にはルームメイクや掃除などをスタッフと一緒に行います。次の日にもう1時間同じ授業があり、今度はホテルスタッフの誰かが高校に行って続きをやる、というように、行ったり来たりしながら授業を進めました。
高校生にとっては、誰かを応援することに真剣にチャレンジしてみる。その中で、「社会人もこんなことに悩むんだ」「ホテルって遠い産業だと思っていたけど、こういうことなんだ」と身近に感じてもらえます。また、高校生から質問を受けることが、ホテルスタッフにとってコーチングにつながるような成果を生み出したことは、面白かったし、非常に大きかったといいます。
「ホテルスタッフも自分も、最初はみんなカッコつけようとしたんですよね」と青山さん。「たとえば、僕は、「青山さん、経営者としての課題は何ですか」と聞かれる。「それはこういうことだ」と話すのですが、「いろいろ聞いたんですけど、結局本当の課題って何ですか」と言われる。すると「そうだね。本当の課題って何だろうか」みたいになる。そうして、とおり一遍のこと、表面上の答えじゃなくて、高校生に対して真剣に言葉を絞り出す。本当の意味でのコーチングのような効果が、ホテル側にすごくあったと思います」。
その裏では、高校側では「高校生の問いの力を磨く」ことを願っていました。「どういう角度で質問するか」ということを高校生と考えるなど、そのための支援を学習センターのスタッフや高校側が一生懸命してくれたそうです。また、 この授業を受けた高校生の多くは就職組でしたから、次の春から自分が働く時に、1つのキャリアモデルになったのではないかと青山さんはいいます。
青山さんはあすあまを振り返ってこのように語ります。「海士町としても非常に大きな課題に直面しているこのタイミングで、あの時のメンバー一人ひとりがみんな、官民それぞれで重要な役割を担っています。メンバーが共通の土台を持っていることの安心感は非常に大きい。官民のそれぞれ重要な人物が、お互いに絶対に明後日の方向は向いてないという安心感の下で、「そっちの分野は頼むぞ」という信頼感を持って動けているのは、非常に大きいと思います。僕ら自身が、その中でしっかり行動していくことと、次世代のメンバーにもどうやってそういう環境をつくっていけるかは、これから摸索していかないといけないところです」。
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そのマリンポートホテル海士では、新しい取り組みが始まっています。ホテルのFacebookよりご紹介します。
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【生産者の方々の想いが詰まった島の特産品販売、始めます】
~島からのお届け物。海士の「てしごとマルシェ」~
https://www.oki-ama.com/page6
こんにちは、レストランの笠原です。1ヶ月以上ぶりの投稿となります。
新型コロナウイルス感染症の影響で、全国全地域あらゆる困難に立ち向かわれている状況かと思いますが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。
公式HPに掲載の通り、島内への感染拡大を防ぐため、マリンポートホテル海士は一旦6月末まで通常営業を停止しています。ホテル創業以来初めての、お客様が1名もいらっしゃらない、とても寂しいGWでした。
春から初夏にかけた美しい季節、ご来島を楽しみにしてくださっていたお客様には本当に申し訳なく、一刻も早い事態の収束を願うばかりです。
ホテルが休業していることで、日頃お世話になっている生産者の方々からの食材仕入れもできず、行き場をうしなった食材たち。
ホテルのレストランで召し上がっていただくことはできませんが、せめて、旬の食材や、生産者の方々が丁寧な「てしごと」で作り上げた、自信を持っておすすめする、海士の美味しい特産品を全国に届けたい・・・そのような想いから、生産者の皆様と(株)島ファクトリーにご協力いただき、島の特産品詰め合わせ『海士の「てしごとマルシェ」』の販売をスタートします。
急なご依頼にも関わらず快くご協力くださった生産者の皆様、島ファクトリーの皆様、本当にありがとうございます。
食材の背景にある、生産者の方々一人一人のストーリー、食材にこめられた想い、食材と食材を組み合わせたおすすめの食べ方など、丸ごとお届けできればと思っています。
海士町の生産者を応援したい
お家で旬の島食材を堪能したい
離れて会えない家族・友人に届けたい
ご興味のある方は、ぜひ、ホテル公式HPの下記URLから詳細をご覧ください。
https://www.oki-ama.com/page6
末筆にはなりますが、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
コロナに負けず、未来に海士町へご来島、ホテルにご滞在いただけることを、スタッフ一同願っています。
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そして、熱海からも!お知らせです。
熱海の休業になっているホテルや旅館や飲食店へ行くはずだった海産物を、水産会社からお得価格で直接お届けする「海からの贈り物」プロジェクト、前回ご紹介したところ、多くの方にお買い求めいただいたとのこと、ありがとうございます!
売り切れになっちゃったイカの生干し、再入荷!(すごーくおいしいので本気でオススメ!) また、熱海の栄養たっぷりの海で育ったサクラマス(熱海マス)のカマとハラモが追加されました。大きな温泉レジャー施設のレストランで使われるはずだったそうです......。カマもハラモも1kg入って500円!とのこと。
おいしいコロナ支援、いかがですか? 3000円以上は送料もサービス。しかも、「エダヒロから聞いた」ことをお伝えいただくとオマケの品もついてきます!
<海の贈り物プロジェクト>
1.宇田水産のネットショップにアクセスしてください。 https://bit.ly/2YwEdWF
2.お好きなものをお好きなだけ注文下さい。3000円以上で送料無料です。
3.「お届け先」を記入するページの下の「メモ欄」に「エダヒロから聞いた」という意味の暗号、「おー、海へ!」と入れて下さい。(お忘れなく♪)
4.注文を確定し、おいしい「海からの贈り物」が届くのをお待ちください。
※宇田水産の定休日は、毎週水曜日と、第2・最終の日曜日です。
※基本的に、定休日以外は、午前中にいただいたご注文はその日の宅急便で送り出すことができます。
※コロナ状況や交通事情等により、お届けが多少遅れることもあるかもしれませんが、ご理解・ご容赦ください。
Stay safe & happy!