7月1日よりレジ袋の有料化が始まりましたね。「もともとマイバッグ派だったよ」という方も、「これを機にマイバッグを持つようになった」という方も、「レジで、しまった!忘れた!と叫んじゃった」という方もいらっしゃることでしょう。
国内のプラスチックごみに占めるレジ袋の割合は2%程度と言われていますので、レジ袋有料化は、プラごみ問題へのとっかかりではあっても、「ザ・解決法」ではありませんよね。
プラごみ問題をより広く、かつ、手軽にわかっていただくために、昨年『プラスチック汚染とは何か』(岩波ブックレット)を出版しました。
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このブックレットのエッセンスから、世界的な関心事である海のプラごみの問題を、「ひとくち説明バージョン」でまとめてみましょう。
1.「2050年までに海の中のプラごみの重量は、海の中のすべての魚の総重量より大きくなる」と言われるほど、海洋プラごみが増えている。
2.海面に浮かんでいるプラごみは全体の1割とも1%とも言われ、海の中のあらゆるところにプラごみが存在している(水深5000メートルを超える深海からもプラごみが見つかっている)
3.海洋プラごみは、ウミガメや魚を死なせたり、海の生態系に大きな被害をもたらしている
4.プラごみは、海の中で破砕されて5ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通して人体にも入っており、健康への影響が心配されている
5.海の中のプラごみの約8割は、陸上のプラごみが海に入ったもので、その多くは川などから流れ込んでいる
6.とくに、ごみの回収・処理の設備や制度の整っていないアジア諸国から出されて海に流出するプラごみが多いといわれている
7.日本は、ごみの回収・処理の設備や制度はあるが、プラごみの半分を占める容器包装プラごみの人口1人あたりの排出量が世界で2番目に多いのは日本である
8.海上で集めたプラごみを調べたところ、日本語のついたものが一番多かったという研究もある
(オーシャン・クリーンアップ・ファウンデーションの「巨大な太平洋ごみ海域」研究で、18隻の船を用いて652回にわたって海面から集めたごみを分析した結果、ラベルや表示が認識できたプラごみの表示は9カ国語。うち、最も多かったのは日本語で、約3分の1を占めていた。2位は中国語)
9.日本としても、日本人としても、取り組むべき大きな問題である!
まさにこのテーマで、コロナ状況下の2~3月に籠もって監訳を進めていた書籍が出版されました!
~~~~~~~~~~~~ここからご紹介~~~~~~~~~~~~~
海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」
グンター・パウリ (著), マルコ・シメオーニ (著), 枝廣淳子 (監修), 日経ESG (編集)
(日経BPブックナビより)
プラスチックはもう使ってはいけないのか?
海洋プラスチック問題が世界的課題になるなか、ダボス会議で「21世紀のリーダー」の1人に選出され、「ブルーエコノミー」や「ゼロエミッション」の提唱者でもあるサステナビリティ分野の起業家グンター・パウリ氏が、プラスチックの生産方法と利用の仕方を変え、経済を回す新しいビジネスモデルを提言しているのが本書である。
プラスチック問題の解決によって、海ばかりでなく地域も再生するシナリオを描いている。
環境ジャーナリストの枝廣淳子氏が監訳した。
プラスチック問題は国連のSDGs(持続可能な開発目標)にとって重要なテーマであり、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を進める企業にとって必須の書籍である。
<目次>
まえがき ビジネスの力を世のため人のために
プロローグ 島とプラスチックと科学の進化
はじめに プラスチック・ソリューション運動
第 1 章 思い知った汚染の深刻さ―環境活動家マルコ・シメオーニ
第 2 章 新しいビジネスモデルを提案―環境起業家グンター・パウリ
第 3 章 必要なのは知的な設計
第 4 章 メッセージを掲げた船で世界を巡る
第 5 章 プラスチックと土壌の「目標と原則」
第 6 章 廃棄するか、ごみを活用するか?
第 7 章 難燃剤などの化学物質の"カクテル"を安全な代替物へ
第 8 章 ごみに価値を与え、プラスチック汚染を終わらせる
第 9 章 自然界の海藻を活用する
第 10 章 1 + 1 = 3、新しいシステムが多くの便益を生む
第 11 章 100年ビジョンで考え、レガシーを残すキャプテンになる好機
日本版解説 写真で見る、自然エネルギーで走る船の旅
日本版解説 「使い捨て」から「使い回し」へ
ゼリ・ジャパン理事長、サラヤ代表取締役社長 更家悠介
~~~~~~~~~~~~ご紹介ここまで~~~~~~~~~~~~~
海洋プラごみやマイクロプラスチックについて、「問題だ」という指摘する書籍はたくさん出ていますが、「じゃ、どうやって解決していけばよいのか?」を、抽象的なレベルではなく、具体的な現場レベルで説明する書籍はあまりありません。
この本を監訳していて本当に面白かったのは、グンタ・パウリさんたちが、このグローバルな大問題に対して、具体的な行動レベルでの解決策を提案しているからです。
世界中を探し回って、解決につながる技術を見つけ、実用化を進めていたり、実際にアジアの途上国でプロジェクトをやってみたり、実際にどのくらいの広がりで取り組めば、現在の大問題を解決に導けるかを計算したり。データと数字の裏付けのある、壮大な解決策の提案です。その内容はたしかに「革命」的だと思います!
「夢みたいな話だ」と思うかも知れません。でも、夢でもなんでも、解決につながる手がかりがあるのだとしたら、まずは一度読んで、考えてみませんか?
海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」
グンター・パウリ (著), マルコ・シメオーニ (著), 枝廣淳子 (監修), 日経ESG (編集)