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2021年08月29日

第6次エネルギー基本計画(素案)のポイント(2021.08.29)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

8月4日、経済産業省は新たなエネルギー基本計画案を示しました。7月21日に出された「第6次エネルギー基本計画(素案)」とほぼ同じもので、今後パブリックコメントなどを経て、秋頃に閣議決定される予定です。

3~4年ごとに定められるエネルギー基本計画は、日本の中長期的なエネルギー政策の指針となるものですので、内容を見ておきましょう。

エネルギー基本計画(素案)
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_005.pdf

エネルギー基本計画(素案)の概要
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_004.pdf


2030年の電源構成は以下のように示されています。
・再エネ36~38%
・原子力20~22%
・石炭19%
・LNG20%
・石油等2%
・水素・アンモニア1%

今回「水素・アンモニア」という新しいエネルギーが顔を出しています。主に、天然ガス火力や石炭火力に混焼するなどして、その分、化石燃料の消費量を減らそうというものです。

上記のエネルギーミックスに対しては、現行のものに比べると進んでいるものの

・再エネ目標は他国に比べてまだ低い

・原発20~22%のためには、30基・稼働率80%が必要だが、これまでの稼働率(1990~2010年度:73.3%)や、現在再稼働が9基、21基が廃炉になっている等の現状からも、実現は不可能ではないか

・石炭19%は、カーボンニュートラルをめざす世界の情勢に逆行している

などの批判が寄せられています。

たとえば:
https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-07-21/basic-energy-plan-draft
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20210721.php
https://foejapan.wordpress.com/2021/08/03/6thenergyplan/ 


エネルギーミックスほど注目されていませんが、「エネルギー需要」の見通しも大変重要だと思います。「概要」の17ページにグラフがあるので見てください。

エネルギー基本計画(素案)の概要
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_004.pdf

2030年のエネルギー需要は、「省エネの野心的な深掘り」によって減少しているのはよいのですが、その内訳を見ると、「電力が約30%程度、熱・燃料が約70%程度」となっています。

「再エネ」というと「電力」をイメージする人が多いと思います。再エネ電力は重要であり、もっと増やす必要がありますが、仮に電力がすべて脱炭素化できたとしても、エネルギー需要全体の3割に過ぎないのです。

「熱・燃料」の脱炭素化・再エネ化が鍵を握っているということなのです。ぜひこれからは電力だけでなく、「熱・燃料」のカーボンニュートラル化・再エネシフトにも注目・プッシュしていただけたら、と思います。

このあとは、概要の資料から、目次および自分が大事だと思うポイントを抜粋して挙げておきます。概要はスライド20ページほどなので、よかったらお目通しください。
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_004.pdf

●第6次エネルギー基本計画(素案)目次

はじめに
~気候変動問題への対応~
~日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服~
~第六次エネルギー基本計画の構造と2050年目標と2030年目標の関係~

1.東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩み
(1)福島復興はエネルギー政策を進める上での原点
(2)今後の福島復興への取組

2.第五次エネルギー基本計画策定時からの情勢の変化
(1)脱炭素化に向けた世界的潮流
(2)気候変動問題以外のエネルギーに関係する情勢変化

3.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)の確認
(1)あらゆる前提としての安全性の確保
(2)エネルギーの安定供給の確保と強靭化
(3)気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保
(4)エネルギー全体の経済効率性の確保

4.2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応
(1)2050年カーボンニュートラル時代のエネルギー需給構造
(2)複数シナリオの重要性
(3)電力部門に求められる取組
(4)産業・業務・家庭・運輸部門に求められる取組

5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(1)現時点での技術を前提としたそれぞれのエネルギー源の位置づけ
(2)2030年に向けたエネルギー政策の基本的考え方
(3)需要サイドの徹底した省エネルギーと供給サイドの脱炭素化を踏まえた電化・水素化等による非化石エネルギーの導入拡大
(4)蓄電池等の分散型エネルギーリソースの有効活用など二次エネルギー構造の高度化
(5)再生可能エネルギーの主力電源への取組
(6)原子力政策の再構築
(7)火力発電の今後の在り方
(8)水素社会実現に向けた取組の抜本強化
(9)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー・鉱物資源確保の推進
(10)化石燃料の供給体制の今後の在り方
(11)エネルギーシステム改革の更なる推進
(12)国際協調と国際競争
(13)2030年におけるエネルギー需給の見通し

6.2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産業・競争・
イノベーション政策と一体となった戦略的な技術開発等の推進

7.国民各層とのコミュニケーションの充実
(1)エネルギーに関する国民各層の理解の増進
(2)政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実

(以下、抜粋)
●エネルギー基本計画(素案)の全体像

○新たなエネルギー基本計画(素案)では、2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマ。

○世界的な脱炭素に向けた動きの中で、国際的なルール形成を主導することや、これまで培ってきた脱炭素技術、新たな脱炭素に資するイノベーションにより国際的な競争力を高めることが重要。

○同時に、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服が、もう一つの重要なテーマ。安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進める。

○エネ基全体は、主として、(1)東電福島第一の事故後10年の歩み、(2)2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、(3)2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成。

●東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩みのポイント

○東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から10年を迎え、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが、エネルギー政策の原点。

○2021年3月時点で2.2万人の被災者が、避難対象となっており、被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、最後まで福島の復興・再生に全力で取り組むことは、これまで原子力を活用したエネルギー政策を進めてきた政府の責務。今後も原子力を活用し続ける上では、「安全神話」に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時 たりとも忘れることなく、安全を最優先で考えていく。

○福島第一原発の廃炉は、福島復興の大前提だが、世界にも前例のない困難な事業。事業者任せにするのではなく、国が前面に立ち、2041年から2051年の廃止措置完了を目標に、国内外の叡智を結集し、不退転の決意を持って取り組む。

○ALPS処理水については、厳格な安全性の担保や政府一丸となって行う風評対策の徹底を前提に、2年程度後を目途に、福島第一原子力発電所において海洋放出を行う。

○帰還困難区域を除く全ての地域で避難指示を解除し、避難指示の対象人口・区域の面積は、当初と比較して7割減となった。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、まずは特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた環境整備を進める。特定復興再生拠点区域外については、個別の要望等を伺いながら、避難指示解除に向けた方針の検討を加速する。

○浜通り地域等の自立的な産業発展に向けて、事業・なりわいの再建と、福島イノベーション・コースト構想の具体化による新産業の創出を、引き続き車の両輪として進める。加えて、帰還促進と併せて、交流人口の拡大による域外消費の取込みも進める。福島新エネ社会構想の実現に向け、再生可能エネルギーと水素を二本柱とし、更なる導入拡大に加え、社会実装への展開に取り組んでいく。

○東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2050年カーボンニュートラルや2030年の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。

●2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応のポイント

○2050年に向けては、温室効果ガスの8割を占めるエネルギー分野の取組が重要。

○電力部門は、再エネや原子力などの実用段階にある脱炭素電源を活用し着実に脱炭素化を進めるとともに、水素・アンモニア発電やCCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求。

○非電力部門は、脱炭素化された電力による電化を進める。電化が困難な部門(高温の熱需要等)では、水素や合成メタン、合成燃料の活用などにより脱炭素化。特に産業部門においては、水素還元製鉄や人工光合成などのイノベーションが不可欠。

○2050年カーボンニュートラルを目指す上でも、安全の確保を大前提に、安定的で安価なエネルギーの供給確保は重要。この前提に立ち、2050年カーボンニュートラルを実現するために、再エネについては、主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組み、水素・CCUSについては、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。

●2030年に向けた政策対応のポイント【基本方針】
安全性を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性の向上による低コ ストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合を図るS+3Eの実現のため、最大限の取組を行う

●2030年に向けた政策対応のポイント【再生可能エネルギー】
S+3Eを大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共 生を図りながら最大限の導入を促す。

【具体的な取組】
○地域と共生する形での適地確保
→改正温対法に基づく再エネ促進区域の設定(ポジティブゾーニング)による太陽光・陸上風力の導入拡大、 再エネ海域利用法に基づく洋上風力の案件形成加速などに取り組む。

○事業規律の強化
→太陽光発電に特化した技術基準の着実な執行、小型電源の事故報告の強化等による安全対策強化、地域共生を円滑にするための条例策定の支援などに取り組む。

○コスト低減・市場への統合
→FIT・FIP制度における入札制度の活用や中長期的な価格目標の設定、発電事業者が市場で自ら売電し市場連動のプレミアムを受け取るFIP制度により再エネの市場への統合に取り組む。

○系統制約の克服
→連系線等の基幹系統をマスタープランにより「プッシュ型」で増強するとともに、ノンファーム型接続をローカル系 統まで拡大。再エネが石炭火力等より優先的に基幹系統を利用できるように、系統利用ルールの見直しなどに取り組む。

○規制の合理化
→風力発電の導入円滑化に向けアセスの適正化、地熱の導入拡大に向け自然公園法・温泉法・森林法の規制の運用の見直しなどに取り組む。

○技術開発の推進
→建物の壁面、強度の弱い屋根にも設置可能な次世代太陽電池の研究開発・社会実装を加速、浮体式の要素技術開発を加速、超臨界地熱資源の活用に向けた大深度掘削技術の開発などに取り組む。

 

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