豪雨、予測のできない台風の進路、高温など、温暖化の深刻な影響の顕在化もあって、「気候非常事態宣言」を出す自治体が増えています。
私たちがまとめている「気候非常事態を宣言した日本の自治体マップ」はこちらです。
https://www.es-inc.jp/ced/
メディアの方々にも活用いただいており、「うちの自治体も宣言したので載せてください」と自治体の方からご連絡をいただくようになりました。マップを見ると、中国・四国地方には旗が立っていないようですが、もし「うちも出してます!」という自治体があったら、教えてくださいね!
8月9日にIPCCの第6次評価報告書(科学的根拠:第1作業部会)が公表され、科学的根拠をもって、「昨今の熱波や大雨、洪水などの極端現象に気候変動が影響を与えている」ことが示されました。この報告書のメッセージはしっかり押さえておきたいところです。また、気候変動と生物多様性の関連についても、いろいろな動きや報告書などが出てきています。
そのあたりをしっかり学び、考えていこう!という異業種勉強会を9月15日に開催します。オブザーバー参加もできますので、他の企業の方々と一緒に学び、考えてみませんか。
「IPCC 第6次評価報告(科学的根拠:第一作業部会)の解説と生物多様性の現状~科学的見地からの報告と解決策に向けて」
スピーカー:国立環境研究所 地球システム領域 副領域長/連携推進部社会対話・協働推進室長 江守正多氏
https://www.es-inc.jp/network/forum/2021/nwk_id011090.html)
さて、気候非常事態宣言について、東京都公立大学法人理事長をなさっている山本良一先生の記事をご快諾を得て紹介します。世界の動向、特に大学の取り組みをご覧下さい。
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環境新聞 2021年8月25日(水)付
東京都公立大学法人理事長山本良一氏に聞く、
日本の大学も「スコープ3」の評価・削減を
http://www.kankyo-news.co.jp/ps/qn/guest/news/showbody.cgi?CCODE=83&NCODE=2104
34カ国の約2000自治体が宣言
――初めに、世界の気候非常事態宣言の状況については。
オーストラリアの民間組織のCEDAMIAは気候非常事態宣言の世界の統計を集計しているが、それによると、7月22日現在、34カ国の1999の自治体が宣言を行い、それらの住民の総数は10億人を突破している。また、国・地域では15カ国およびEUが宣言を行っている。日本では2019年9月に長崎県壱岐市が初めて宣言を行って以来、95の自治体がこれに続いている。日本の国会も20年11月に衆議院および参議院で宣言が可決されている。このように、気候非常事態を認識し、少なくとも50年までにカーボンニュートラルな脱炭素社会を実現することが、世界のコンセンサスとなっている。
大学にも道徳的・社会的責任
――大学における気候非常事態宣言については。
近年の前例のない気候危機・環境危機に直面し、大学などの高等教育機関においては、サステナビリティの研究・教育・実践がその道徳的責任、社会的責任を果たすことになると考えられ、将来世代や市民などからの要求に応え、大学も気候非常事態宣言を行うようになった。そうした中、世界で最初に宣言を行ったのはイギリスのブリストル大学で、19年の4月だった。30年までのカーボンニュートラルを目標とし、1年以内に化石燃料から完全にダイベストメント(投資撤退)すると表明した。これに続き、世界の大学が次々とこれに続いた。
宣言のやり方には、単独で行う方法と集団で行う方法の2種類がある。大学については、残念ながらCEDAMIAのような統計はないが、集団での例を見ると、世界の7千以上の高等教育機関を会員とする「大学とカレッジのための環境協会」(EAUC)が19年7月に宣言を行った。これは19年9月に開催された国連気候行動サミットに向けてのキャンペーンで、EAUCは「グローバル気候非常事態レター」を国連宛てに書き、世界の高等教育機関にそれへの署名を求めた。このレターでは、署名のための条件として、30年、遅くとも50年までにカーボンニュートラルを達成することなど3つのプランが提起されており、これには世界の300以上の大学が署名した。
EAUCはまた、今年のCOP26に向け、「SDG Accord/Race to Zero」キャンペーンを行っており、こちらには現在715の大学・研究機関が署名している。このうち、「Race to Zero」に署名しているのは430大学(8月3日時点)で、イギリスが103校と最も多く、次に中国の44校、アメリカの36校、カナダの32校と続き、日本は千葉商科大学の1校のみとなっている。
日本には788の大学があるが、単独では私立の千葉商科大学(19年10月)、聖心女子大学(20年5月)、創価大学(21年4月)の3校が気候非常事態宣言しており、東京都公立大学法人も先月、国公立大学では初となる気候非常事態宣言を行った。
大学等コアリションは模範示す必要あり
――欧米の大学における気候非常事態宣言やカーボンニュートラル行動計画などの内容については。
大学のカーボンマネジメントにおいて、科学的アプローチを採用しており、スコープ1、2のみならず、スコープ3の排出量も評価・削減することが主流となっている。スコープ3については、世界で初めて気候非常事態宣言を行ったイギリスのブリストル大学など多くの大学が評価しているが、中でも同じイギリスのニューカッスル大学の30年カーボンニュートラルを目標とした気候行動計画では、建設活動、購入した製品サービス、ビジネストラベル、投資の各分野について目標を設定し、削減策が詳しく記述されている。科学的かつシステマティックに分析され対策が立てられている点で、私は模範的だと評価している。
一方、日本の大学の環境報告書では千葉大学などを除き、一般にスコープ1、2、3を区別しておらず、スコープ1、2の総和を記載していると思われるものがほとんどではないか。これでは科学的なアプローチとは言えず、日本の大学でもスコープ3の排出量をきちんと評価してカーボンニュートラル実行計画を策定しないと、後々、混乱を招くことになりかねない。国内の188の国公私立大学や研究機関などが参加した「カーボン・ニュートラル達成に貢献する大学等コアリション(連合)」が先月29日に発足したが、高等教育機関として、まず足元から模範を示す必要があろう。そのためにも、スコープ3の評価算定や検証・認証のガイドラインを環境省など国が早急に整備することを求めたい。
理解されていない行動変容への有効性
――欧米と日本で大学の取り組みに差が大きい理由は何か。
欧米では、日本と違い、環境やSDGsへの対応で大学を評価するランキングが数多くあり、受験生の確保など経営面からも激しい競争にさらされていることがあると思う。一方、大学に限らず、宣言を行うには民主的プロセスを伴うため、組織の納得を得た上で構成員の参加を期待することができるなどの有効性がある。しかし、日本では、脱炭素社会に向けての行動変容にこの宣言をうまく活用できることが、まだほとんど理解されていない。それが宣言の絶対数の違いにも表れていると思う。
――最後に、東京都公立大学法人における今後のカーボンニュートラル行動計画の策定に向けた抱負を。
イギリスのニューカッスル大学の計画をベンチマークとし、それに勝るとも劣らない他の大学の模範となるような計画を、早期に策定していきたい。
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日本の大学にも頑張ってほしい!ですね。ちなみに、東京都公立大学法人の非常事態宣言はこちらにあります。
https://www.houjin-tmu.ac.jp/about/environment/
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【国公立大学初】東京都公立大学法人 気候非常事態宣言を発出
~持続可能な社会の実現に貢献~
近年、人類の排出する大量の温室効果ガスによる地球温暖化が深刻化し、毎年のように異常気象に見舞われています。このような中、世界各国は気候危機を打開し、2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロの状態にする)の達成を目指すべく気候非常事態を宣言しています。
人類が深刻な気候危機に直面している現状に対し、東京都公立大学法人は、2050年までのカーボンニュートラルを目指し、率先して持続可能な社会の実現に貢献すべく、気候非常事態宣言を発出します。
東京都公立大学法人 気候非常事態宣言
本法人は、人類が深刻な気候危機に直面している現状に対し、2050 年までのカーボンニュートラルを目指し、率先して持続可能な社会の実現に貢献すべく、ここに気候非常事態を宣言する。
1.気候非常事態を打開するための緩和や適応のための実行計画を立案し、法人運営をはじめ、教育や研究、学校生活等に反映させる
2.政府や自治体をはじめ、他の大学法人や関連団体、一般市民や企業などと広く連携する
3.カーボンニュートラルの実現に向けて、その担い手となる人材を育成する
4.三つの教育機関が連携・協力するとともに、教職員や学生も協働しながら、法人全体で気候危機をはじめとした SDGs への取組を推進する
2021 年 7 月 16 日
東京都公立大学法人 理事長 山 本 良 一
東京都立大学 学長 大 橋 隆 哉
東京都立産業技術大学院大学 学長 川 田 誠 一
東京都立産業技術高等専門学校 校長 渡 辺 和 人
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聖心女子大学〈気候変動教育〉国内調査チームから、2020年11月までに気候非常事態宣言を行った44自治体を対象に行った「気候非常事態宣言を表明した自治体における気候変動教育に関する調査の【速報版】が届きました。宣言のきっかけや、気候変動教育の現状や課題などがわかります。最後に調査チームからの提言もあります。
背景に書かれた問題意識とともにURLをお伝えします。
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<背景>
近年、日常感覚で温暖化を実感するようになりました。この数年、国内外で起 きている異常または極端な気象をふり返ると、2020年に環境省が初めて「気候危機」という表現を白書で用いたのも首肯できます。こうした現象に応答するかのように、「気候非常事態」を宣言した自治体が急増しています。
2020年10月には菅義偉首相の所信表明演説において温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロにするという宣言がなされ、国会においても超党派の議員によって「気候非常事態宣言」の国会決議がなされるまでに至りました。世界では34カ国、2,006の自治体が気候非常事態宣言を表明し、日本国内においても104自治体が宣言しています(2021年7月現在)。
各国で急務とされる技術開発と法規制が持続的な成果に結実するには教 育が不可欠であると言われています。ところが、気候変動に対する関心は高まってきたものの、そのための教育については十分な備えができているとは言えないと国際社会では指摘されており、日本も例外ではありません。本調査は、気候危機の時代に応答する教育、すなわち気候変動教育の現状と課題について明らかにするために行われました。この速報版では調査結果の一部をお届けします。
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気候非常事態宣言を 表明した自治体における気候変動教育に関する調査(速報版)
https://nagatalab.jp/wp-content/themes/nagata-lab/pdf/results-of-a-study-on-cce-in-japanese-local-government-with-climate-emergency-declaration.pdf
最後に、昨年11月25日に行われた、日経SDGsフェス日本橋「気候非常事態ネットワーク設立記念シンポジウム」の動画がアーカイブ化されています。ご案内はこちらにありますので、よろしければご覧下さい。
https://www.es-inc.jp/news/2020/nws_id010772.html
気候非常事態ネットワークのウェブサイトはこちらです。
https://www.zeri.jp/cen//