幸せ経済社会研究所から、毎月世界に配信している「幸せ研ニュースレター」、今年の最初の号では、未来への希望を込めて、「少年議会」についてご紹介しました。
若者だけではないですが、日本人の政治離れや、"一億総批評家"で、社会の課題を自分事化して取り組む人が減っている?など、これからの社会を創っていく上で、変えていかなくてはいけないことがいろいろありますよね。「それは困る」「だれか、なんとかしてくれなきゃ」と批評家になるのではなく、このように具体的に取り組んでいくこと、本当に大事だと思います。
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●若者のための議会でリーダーシップを育む! 山形県遊佐町の「少年議会」の取り組み
現在、社会が抱える問題の中には、子どもたちの世代に、より深刻化すると考えられるものがたくさんあります。その未来の社会を担っていくのは子どもたちですが、選挙権があるのは18歳以上という国がほとんどです。
では、選挙権がない子どもたちの声は、政策にどのように反映できるのでしょうか。世界中にひろがるFridays for Future(未来のための金曜日)のように、デモ行進によって、若者の思いを政策に反映させていく方法もその一つです。
あるいは、制度として「子どものための議会」を設けている自治体もあります。例えば、約13,000人が暮らす山形県遊佐町には「少年議会」を通して、子どもたちの声を町政に反映させ、子どもたちのリーダーシップを育む仕組みがあります。
選挙で選ばれる少年町長と少年議員などからなる少年議会には、年額45万円の政策予算も割り当てられています。今月号の幸せ研ニュースレターでは、2003年から行われている遊佐町の取り組みについてお届けします。
○大人の議会顔負け! 少年議会の仕組み
遊佐町の少年議会はどのように運営されているのでしょうか。2020年度の少年議会の活動報告書から、その様子を再現してみましょう。
2020年6月29日、遊佐町役場の議事所で第18期第1回の少年会議が行われました。議会では、6月に中学校・高校で行われた選挙を経て、少年議会のメンバーとなった遊佐町内に在住・在学する中学生から高校生までの17名の議員たちが、所信表明を行いました。
この年の少年議会は、少年町長1名、少年副町長1名、少年議員10名、少年監査2名、少年事務局長1名、少年事務局次長2名、性別は女性12名、男性5名という構成です。また議会には、大人の町長と役場の課長も出席し、答弁や激励を行います。
第1回少年議会の後は、8月27日の第2回少年議会での政策提言と一般質問(町への要望)に向けた準備を進めます。政策や一般質問の内容は、中高生を対象に行なったアンケートの結果も参考にすることで、若者の声を広く少年議会の政策に反映させる仕組みです。
なお、2020年のアンケート調査では「遊佐町にどんな町になってほしいか」という質問に対して、「スポーツが盛んな町」「いろいろな人・場所との交流が盛んな町」「若者の意見を積極的に取り入れる町」といった回答が得られました。また、将来遊佐町に住み続けたくないと回答した人(18%)を対象に、その理由を複数回答で聞いたところ、「スポーツをしたり、遊ぶ場所が少ないから」という回答が最も多いことがわかりました。
第2回少年議会(8月27日)では、政策提言として、「町議会議員との意見交換会の定例化」「町のよいところを探す宝探しの実施」「小中高生に少年議会の活動について知ってもらうための少年議会ガイドブックの作成」の3つの少年議会独自の政策が発表されました。
また、一般質問では、まちづくり協議会への若者の参加、町内の公園の整備と増設・防球ネットの設置、町民体育館の利用料の無料化が町への要望として出されました。なお、少年議会に割り当てられている政策予算は45万円ですが、町への提言に伴う予算は、別に所轄課で予算化されるそうです。
第2回少年議会の後は、政策を実施していきます。9月29日には町議員との意見交換会を行いました。町議会議員との意見交換会は2019年にも開催したそうですが、その際の反省を活かし、より実現可能性のあるアイデアが生まれる場になるように企画したそうです。
10月には宝探しのための事前インタビューを行いました(本番は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止、事前インタビューの内容をパネルにまとめまちづくりセンターに展示しました)。ガイドブック「少年議会のトリセツ」も11月に表紙の写真を撮影し、完成させました。
そして12月18日の最後(第3回)の少年議会では、活動報告を行いました。2020年度の少年議会の活動は6月18日の第1回から12月18日の第3回の少年議会までの半年間です。活動を通して得られた課題は、次の少年議会に引き継がれていきます。
若者たちは、少年町長や少年議員を経験することにより、遊佐町に関心を持つようになり、自信と責任が生まれているそうです。地域の人々からも、挨拶の仕方や人前での発言が「頼もしくなった」「上手になった」との声が聞かれます。行政も、若者の提言を町議会と同等の重みを持って受け止めて反映させています。
○少年議会を立ち上げた理由
なぜ、遊佐町では少年議会という仕組みを持つようになったのでしょうか。遊佐町で少年議会の事業(正式名称:少年町長・少年議会公選事業)が誕生したのは2003年度のことでした。2022年度には第20期という節目の年を迎えます。
少年議会が誕生する前、遊佐町では、人口減少・少子高齢化とともに、職住分離、生活形態の多様化が問題となっていました。このため、地域の中心となる若者の育成や、若者の活躍の場を作るための環境づくり、若者の力・意見を取り入れたまちづくりが求められていました。
こうした問題の解決のために作られたのが少年議会です。日本の他の自治体でも少年議会を設けているところがありますが、遊佐町の少年議会は、選挙や所信表明演説、政策提言や一般質問など、大人の議会と同様の、しっかりとした仕組みで運営されているのが特徴です。
少年議会の定員は、少年町長1名、少年議員10名です(立候補者が多い場合は、副町長、少年監査、少年事務局長、少年事務局次長が設けられます)。選挙権・被選挙権を持つのは、町内在住・在学の中学生と高校生で、定員以上の立候補が得られた場合は、有権者全員が投票します。定員を下回る年も多いそうですが、2020年は17名の少年町長と少年議員が活動を行いました。
○これまでに実現してきたこと
少年議会では、2003年度の第一期からこれまで、様々なことを実現してきました。例えば、帰宅時間帯の電車増便の要望や町内の街灯設置の要望は、JR東日本や町に要望を出すことで、一部が実現されています。
遊佐町のイメージキャラクター「米~ちゃん(べぇ~ちゃん)」も、第2期(2004年度)の少年議会によって実現しました。中学生・高校生からの「遊佐町をもっとPRしてほしい」という意見に応えて、少年議会がイメージキャラクターを募集したのです。第7期(2009年度)には、妹のライちゃんなど3世代6人家族の「米〜ちゃんファミリー」に発展しています。その他、被災者支援やボランティアの実施や、ミュージックフェスティバルの開催も行っています。
また、少年議会では特産品の開発も行ってきました。山形県の郷土料理である「芋煮」を手軽に食べられるようにと開発した「芋煮コロッケ」や、遊佐ブランド推進協議会と連携して開発したカレーパン「もちっと!米〜かりー」は、形や素材・トッピングで遊佐町の5大自然(山・海・川・砂丘・平野)を表現しているそうです。
2021年度の少年議会でも、「遊佐町のお米を使った米~ちゃんせんべい」「遊佐産のパプリカでパプリカキャンディ」「遊佐で作られている野菜を混ぜ込んだパン(遊佐丸)」の3つの特産品を企画し、試作をしています。
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遊佐町のように子どもたちの議会を設けることによって、将来を担う子どもたちの意見を政策に反映させるだけではなく、子どもたちが地域の一員であるという責任感をもつことで、リーダーシップを育むことができます。
世界をみると、フランスのように国として「子ども議会(Parlement des enfants)」を毎年開催している国もありますが、より小さな自治体というレベルで「子どものための議会」をつくる取り組みは、多くの地域の参考になるのではないでしょうか?
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私も関わりのある島根県海士町でも、「子ども議会」を開催しており、子どもたちからのいろいろな意見などが実際の施策にも反映されています。
http://www.town.ama.shimane.jp/gyosei/torikumi/4019/post-38.html
以前、お邪魔したときに、町長や課長さんたちが「本物の議会以上に緊張する」とおっしゃっていたのが印象的でした。少年議会・子ども議会は、子どもたちのためだけでなく、大人たちにも"効く"のですね!
ほかにも類似の取り組みをご存じだったら、ぜひ教えてください!