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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2023年02月20日

『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』が刊行されます!

大切なこと
 

1年ちょっと前の2022年1月27日に、このようなメールをいただきました。ご本人の許可をいただき、共有させていただきます。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

枝廣淳子様

はじめまして、唐突なご依頼のご連絡をお許しください。
私は出版社イースト・プレスの山内壮と申します。

この度『ネガティブ・ケイパビリティ』に関する書籍の刊行を企画しておりまして、適任の著者様を探しておりましたところ、枝廣様のお名前を拝見いたしました。

弊社は様々なジャンルの書籍を刊行しておりますが、この度上記概念について改めて取り扱うことが、今の時代性にも必要であると考え、この度の企画に結び付きました。

以前『ネガティブ・ケイパビリティ』についてセミナーを開催されたこともおありのようで、同概念について、既にある程度以上の知識もお持ちであるとお見受けします。何より『ネガティブ・ケイパビリティ』を育む方法について意見を出し合うといったセミナーを開催されておられた事が、本書企画意図にもまさにピッタリでした。

また、本企画の根本として、専門家の間だけでなく、可能な限り広く一般の読者にも届けたいと考えており、多様な活動をされておられる枝廣様がまさに適任と考えました。

VUCAの時代と言われ、またコロナ禍で先行きが見通せず、様々な形で未来を不安に思う人々が増える中、同概念についてまとまった書籍を刊行し、未来に希望を見出す方法や生き方があるというメッセージを届けたいと思っています。

既に多くのお仕事を抱えておられる中、大変恐縮ではございますが、まず是非一度、本企画についてご検討頂けないでしょうか。

もし可能でしたら、一度直接お話し合いの機会を給われましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


このご縁から、『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(イースト・プレス社)が生まれました! 今週末か来週初めに、書店に並びます。
Amazonでの予約も受付中です。
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プロジェクト、プロブレム(問題)、プロポーザル(提案)、プロミス(約束)、プロモーション(昇進)・・・

ビジネスの世界には、「プロ」で始まる単語があふれています。このpro-という接頭辞は、「~を前へ」という意味。さまざまなものを、前へ前へと進めていく。そこには立ち止まったり、考え直したり、後戻りしたり、という余地はありません。どんどん進んでいく!しかないのです。

そういう時代だからこそ、コスパならぬ、タイパ(タイム・パフォーマンス)が重視される社会だからこそ、ネガティブ・ケイパビリティ、つまり、「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいられる能力」、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」が重要なのだと思うのです。

ネガティブ・ケイパビリティとは、「不確実性を許容する高度な能力」です。だからこそ、困難な状況下でも考え続けることができ、多様で矛盾した考えを受け入れることができる。「知的寛容さ」と表現する研究者もいます。

私は自分のこれまでの活動を通して、一人ひとりの、企業や組織の、地域や社会の、ネガティブ・ケイパビリティがとても重要だと感じています。世界でもネガティブ・ケイパビリティに関する研究が盛んになりつつあります。これからますますネガティブ・ケイパビリティが重要となる時代が来る、と思うのです。

目次をご紹介しましょう。

はじめに 答えを急いではいけない時がある 
第1章 ネガティブ・ケイパビリティとはそもそも何なのか 
第2章 「わからない」という不安を受け容れる~2つのキーワードから
第3章 判断を性急に下さない~ホールドとサスペンド~
第4章 ありたい自分に近づき、他人に寛容になり、物事の本質が見えるようになる
第5章 ネガティブ・ケイパビリティを高める方法
第6章 「何もしない」ことの大切さ~人を育てる
第7章 「わからない」と正しく向き合う~リーダーシップとチームや組織の中で
第8章 共有ビジョンと"結論を出さないルール"の「場」~地域ぐるみでネガティブ・ケイパビリティを発揮する
第9章 東洋思想の叡智とネガティブ・ケイパビリティ
おわりに 本当に大事なものを見落とさないために


<おわりに>に書いているのですが、私は、翻訳、執筆、講演、研修、コンサルティング、まちづくりのお手伝い、現場での活動と、いろいろな活動を行っています。

見かけはいろいろでも、自分にとっては、行ってきたこと・行っていることの根っこはすべて1つ、「大事なものとのつながりを取り戻すお手伝いをする」ことです。人は自分と自分の大事なものとのつながりが切れたとき、メンタルな問題を抱える。私たちと地球とのつながりが切れたときに、環境問題が生じる。地域とのつながりが切れたときに、地域社会の問題が起こる、と思っているからです。

本書を書き進める中で、「大事なものとのつながりを取り戻す」ためにも、ネガティブ・ケイパビリティが必要だ、という思いを強くしました。見失ってしまった大事なものとのつながりを見つけるためにも。そして、そのつながりをもう一度つなぐためにも。

そして、本書を書くプロセスそのものがネガティブ・ケイパビリティを発揮する旅となりました。

最後に私の好きな「カエルの話」を。
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月夜の美しいある晩、2匹のカエルが散歩に出かけました。ところが、はしゃいでとび跳ねているうち、誤ってミルク壷に落ちてしまったのです。

2匹は必死に壷から出ようとピョンピョンもがきましたが、なにせ壷が深い上、壷の内側はツルツルで、足場にもなりません。

1匹のカエルは「どんなにやったって、どうせ無駄さ」とピョンピョンするのをやめてしまいました。そして、沈んでいきました。

もう1匹は「なにくそ。最後まであきらめないぞ」と何度も気が遠くなるなか、必死にもがきつづけていました。すると不思議なことに、気づくとカエルは固い地面の上に立っていたのでした。ミルクをあまりにかき回したので、ミルクが固まってバターになっていたのです。そこでそのカエルは、難なくミルク壷から跳び出して、家に帰りましたとさ。
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このカエルにはネガティブ・ケイパビリティがあったんですね! 先が見えなくても、不安でも、それでもそこに留まり続け、頑張り続けた。だから助かったんですね。

ネガティブ・ケイパビリティの本を書こうとしていた私も、リサーチして集めた数百本にものぼる論文や情報、数十冊の関連書籍、自分のこれまでの経験や思考のかけらなどからなる、深いミルク壺の中でピョンピョン必死にもがいていた気がします。

ポジティブ・ケイパビリティをできるだけ発揮して、他の仕事をできるだけ効率よく短時間で片付けて(テキパキと処理していくポジティブ・ケーパビリティも大事なのです!)、時間や心の余裕を作ってはミルク壺に降りていく。調べれば調べるほど、考えれば考えるほど、広がっていく情報や思考のかけらに、「どこまで広がるのかな?」「いつかはまとまるのかな?」「何か出てくるのかな?」と思いつつ、ピョンピョンと。

そうして、いろいろな方の力を借りながら、何ヶ月もかき混ぜかき混ぜして、"バター"ができました。この本です。こういう時代だからこそ、ぜひ知っていただきたい、身につけていただきたい、と願っています。本書がみなさんのネガティブ・ケイパビリティと幸せのお役に立ちますように!


判断や決断が急かされる時代だからこそ、しっかり立ち止まり、じっくり考え抜く力を
『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(イースト・プレス社)

 

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