新しい年が始まりました。
元日に発生しました能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
つらい出来事の多い年明けとなってしまいましたが、そんな中で、1月3日の朝日新聞のオピニオン欄で「答えを急がない力」=ネガティブ・ケイパビリティが取り上げられ、私の受けた取材内容も記事の一部になっていました。見てくださった方もいらっしゃるでしょうか。
著書『答えを急がない勇気 ~ネガティブ・ケイパビリティのススメ~』が出版されたのは去年の2月末でした。
その後、取材を受けたり、講演でも紹介したり、企業研修にも採り入れていましたが、9月にはNHK「クローズアップ現代」でも取り上げられ、関心が高まっていることを感じています。
本書の「はじめに」から、最初のところを紹介します。
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答えを急いではいけない時がある
ネガティブ・ケイパビリティ
もし、今私たちが突然、
「確実なことが何もなく、どうにも対処のしようがない」
「かつて経験したことがないために、解決の糸口がどうしても見つからない」
「先行きがまったくみえない」
そんな状況に直面してしまったら、いったいどうしたらいいでしょうか?
なす術もなく、不安と焦りを抱えながら呆然と立ち尽くしてしまう。
遮二無二行動を起こして、早く解決しようと奔走する。
まわりを見渡して、みんなと行動を合わせながら、様子見を決め込む。
人によって対応は様々だと思います。
こうした時に、困難な状況にもうろたえず、適切に対処するためのヒントとなるものとして重要なキーワードとなるのが、「ネガティブ・ケイパビリティ」です。
聞きなれない方も多いと思いますが、それと気づかずに発揮されている例も意外に多く、これからお話しすることのいくつかは、「あ、それならやっているよ」と思われることもあるかも知れません。
「ネガティブ・ケイパビリティ」を発揮できる人は、不可解な物事を目の当たりにしたり、対応の手段がわからなくても、動じることがありません。内心では動揺していたとしても、不安や焦りにじっと耐えることができるのです。
動揺するこころにじっと耐えながら、物事の本質をしっかりと見定めようと努めます。いろいろな考えが渦巻きますが、判断を保留し続けます。結論を急ぎません。
「わからない」ことや自分にとって不都合なことも受け容れ、「答え」の手掛かりが見つかるのを待ち続けることができるのです。困難を乗り越えたり、これまでになかった独創的なアイデアを思いつくのは、これができる人々です。
本書ではこうした「ネガティブ・ケイパビリティ」の特徴や事例を、順を追ってお話ししていきます。
~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~
こういう時代だからこそ、「即時決断、即時行動」が求められる時代だからこそ、「待つ」ことが評価されない社会だからこそ、ときどきは立ち止まって、じっくり考え、結論や判断に飛びつかずにいる力が求められているのだと思うのです。
でも、ネガティブ・ケイパビリティは、「優柔不断」や「結論の先延ばし」とは違うのです。逆に、「これが答えだ」と思った瞬間に陥ってしまう思考停止を避け、考え続けることは非常にエネルギーがいることでもあります。だから、ケイパビリティ(能力)なのです。
「次に進む前に、立ち止まってしっかり振り返りをしたい」「自分は本当にどこに向かおうとしているのか、確認したい」という思いの方が増えているように思います。明日開催の「自分合宿」も満席となっています。
次のタイミングは?という方には、こちらもご案内したいと思います。
3月9日(土)~10日(日)開催:
変化の担い手のためのスキルアップ講座「システム思考をベースに変化の理論(TOC)をつくる」
以前から開催しているTOCセミナーに、バックキャスティングでビジョンを描くパートを加えましたので、構想から変化のデザインまでじっくりと体験していただけます。
今年は、「本当にこれでよいのか?」「本当に大事なことは何か?」と立ち止まって考える機会や場を、これまで以上に提供していきたいと思っています。企業や組織向けの合宿研修もそうですし、幸せ研の読書会でも、新しいあり方の模索を学び、考え続けていきたいと思っています。
1月の読書会は、新しい経済のコンセプトとして運動が広がっている「公共善エコノミー」を取り上げます。
https://www.ishes.org/news/2023/inws_id003475.html
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~
「公共善エコノミー」とは、未来に向けた新しい経済のコンセプトとして、2010年にオーストリアで始まった運動です。
「利益よりも、人と地球を優先する経済システム」として、コモングッド(公共善)を指標としようという考え方です。国際的な社会運動として、現在世界35カ国で広がっており、多くの企業や自治体も、この運動の支援や実践を進めているとのこと。
今回の読書会には、同書の翻訳者の池田憲昭さんと、公共善エコノミー日本支部の立ち上げを進めているメンバーの方々も一緒に参加してくださる予定です。直接いろいろなお話や解説をお聞きできる貴重な機会です!
経済のあり方を変えなければ、地球も人間も社会ももたないーーーその意識は広がってきています。必要なのは、これまでの経済に変わる「新しい経済」のあり方です。同書からは考え方だけではなく、実践からも学ぶことができます。「新しい経済のあり方」に向けてのヒントがいっぱい得られることと思います。
ぜひ一緒に考えましょう!ご参加をお待ちしております。
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「2023年を振り返って~持続可能性に関わるアンケート」、1月20日が〆切です。ご協力よろしくお願いします。
環境や持続可能性に関心のある方々が、どのようにこの時代を見ていらっしゃるか、何を感じ、考えていらっしゃるか、ぜひ社会にも発信していきたいと思っています。
レジリエンスについての本を書いたのは、2015年3月でした。
『レジリエンスとは何か~何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる』
http://amzn.to/1zcdreh
9年も前だったのだなあ、と思いつつ、レジリエンスの重要性はますます大きくなってきていることを感じています。
温暖化の悪影響の顕在化に伴って災害が増えていく時代だからこそ、社会の余裕やゆとりが失われて、ストレスに対する耐性やバッファーが失われていく時代だからこそ、暮らしや地域のレジリエンスも、一人ひとりの心のレジリエンスも、大事にはぐくんでおかなくては・・・。
そのためにもレジリエンスやネガティブ・ケイパビリティについて、対症療法ではなく、根本的な解決策を考えるためのシステム思考について、語り続けていきたいと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いします。