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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2024年10月11日

「社会的共通資本」~サステナビリティと経済学を考える

大切なこと
新しいあり方へ
 

「社会的共通資本」という考え方があります。
https://www.ishes.org/keywords/2015/kwd_id001666.html

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


社会的共通資本とは、経済学者の宇沢弘文氏(1928-2014年)が提唱した概念で、すべての人びとが、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力のある社会の安定的な維持を可能にする自然環境と社会的装置のことで、これを社会共通の財産とする考え方です。

社会的共通資本は、自然環境(大気、水、森林、河川など)、社会的インフラストラクチャー(道路、交通機関、上下水道など)、制度資本(教育、医療、金融など)という3つの範疇にわけて考えることができます。大気、道路など具体的に何を含むかは、それぞれの地域や国の自然的、歴史的な要因などによって異なります。

こうした社会的共通資本は、社会の共通の財産として、社会的な基準に従って管理されなければならないと宇沢氏は言います。たとえば教育は、子どもたちが持っている資質を伸ばすことを、また医療は病気やけがの人を助けるものです。どちらも一人一人の市民が、人間らしい生活を営むために重要な役割を果たすものなので、国家によって官僚的に支配されたり、市場の基準によって利潤追求の対象にされるべきではない、というのが宇沢氏の考え方です。

また社会的共通資本は、分権的な市場経済制度が円滑に機能し、実質的な所得分配が安定的となるような条件でもあります。

参考文献:宇沢弘文, 2013, 『経済学は人びとを幸福にできるか』, 東洋経済新報社

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

この出所である『経済学は人びとを幸福にできるか』という書名からも、経済学は人々の幸福と地球の持続可能性に役立ってきたのだろううか? と考えざるを得ません。

サステナビリティと経済を鋭く問い続けた故・宇沢弘文氏の跡を継いで、愛弟子・松島斉氏がサステナビリティの視点から「新しい資本主義」と「新しい社会主義」というシステム構想を展開しています。松島氏の書かれた新刊『サステナビリティの経済哲学』を次回の読書会で取り上げます。

【第150回】 2024年10月22日(火)開催
オンライン読書会 『サステナビリティの経済哲学』を読む

本書の前書きから少し紹介します。「これはぜひ読んでみたい!」と思われるのではないでしょうか。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

これからの経済学には、サステナビリティにどのように貢献することができるかが、経済学という学問の社会的責任として問われることになる。経済学のかなりの部分は無限の経済成長を前提とするパラダイムを推進することで発展してきた。

そのため経済学には、環境への影轡や社会的不平等といった多くの副作用を現実社会において引き起こしてきたという罪深い側面がある。学問にも社会的責任が問われるということだ。よって、学問としての経済学自体がサステナビリティを真剣に考慮することができる方向へと進化していかなければいけない。

本書全体を通じて、サステナビリティという重要なテーマを深く掘り下げて、経済学の理論やディシプリンを豊かにしていくアプローチを示していきたい。そのため、経済学の歴史的発展とその現代的課題、サステナビリティの重要性と経済学での扱い、異分野との対話、実用的な解決策と政策提言、批判的思考と学術的イノベーションといった、様々な要素を扱うことになる。これらの要素を組み合わせることで、経済学の学問領域を拡張し、サステナビリティに対する深い理解とその実践に向けた指針が提供されることになる。

よって本書は、サステナビリティの経済学のための実践的な哲学書であり、新たな地平を開くための経済学研究の批判的啓蒙書である。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

地球と人間文明の持続可能性のためには、現在の経済の仕組みとそれを支えている経済学が変わらなくては、とずっと思っていました。そのビジョンと道筋をどのように描くことができるのか? 本書を道しるべに、ぜひ一緒に考えてみませんか。

【第150回】 2024年10月22日(火)開催
オンライン読書会 『サステナビリティの経済哲学』を読む

この幸せ研の読書会では、コツコツと毎月1冊ずつ読んできましたが、次回で150回なんですね! これからも少しずつでも考え続けていきたいと思います。

 

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