「孤独」「孤立」は、深刻かつ悪化しつつあると言われる社会問題の1つです。
今月の幸せ研の読書会では、こういった社会課題に対するアプローチとして注目を集めている「社会的処方」について学び、地域や自分たちに何ができそうか、みんなで考えてみます。
地域のつながりや、孤立・孤独の問題などに関心のある方、ぜひご参加下さい。希望が見えてくるのでは、と思います!
3月13日 18:30~20:30 オンライン読書会
『社会的処方: 孤立という病を地域のつながりで治す方法』
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~
「はじめに」から抜粋すると、
―――――――
社会的処力とは、薬を処方することで患者さんの問題を解決するのではなく、「地域とのつながり」を処方することで問題を解決するというもの。
―――――――
イギリスでは、病を抱えた患者さんが薬だけでなく、自律的に生きていけるように社会的に支援する処方の仕組みが多く存在しています。
まずは、社会的処方とはどんな仕組みなのか知ることから始めましょう。そこから、自分自身や身近な家族や大切な人と社会のつながりを考え、日本における社会的処方についても、一緒に考えを広げてみませんか。
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~
国も対策を進めるべく、2024年4月1日に「孤独・孤立対策推進法」が施行されました。
日常生活あるいは社会生活において孤独を覚え、または社会から孤立していることにより心身に悪影響を受けている人への支援などに関する取組みついて、その基本理念、国や自治体等の責務、国民の理解・協力、関係者の連携・協力などを定める法律です。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinhou/suisinhou.html
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)に設けられている「社会技術研究開発センター」(RISTEX)では、社会が直面する問題を解決するための研究開発・支援を行っています。
https://www.jst.go.jp/ristex/
ここでも、2021年度から「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築)」が設定されています。
https://www.jst.go.jp/ristex/koritsu/program/
「人・組織・コミュニティ間の多様な社会的つながり・ネットワークを実現し、社会的孤立・孤独を生まない社会の創出を目指し」、「さまざまな社会構造の変化を踏まえ、社会的孤立・孤独のメカニズムの解明、孤立・孤独のリスク評価手法(指標など)および社会的孤立・孤独の予防施策開発と、そのPoC(概念実証)までを一体的に推進」するとのことです。
このプログラムの1つとして進められているのが、内平隆之教授(兵庫県立大学 環境人間学部)を研究代表者とする「孤立・孤独予防に資する近隣社会環境の多様性の可視化による戦略的プレイスメイキング」です。
https://www.jst.go.jp/ristex/koritsu/projects/14.html
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~
<プロジェクト概要>
孤立・孤独の根本原因は社会環境の機能低下と、それを育む余力のない現代社会
個人の努力に介入する一次・二次予防に比べて、社会環境に介入するゼロ次予防の方法は発展課題です。
共助においては、自治会等の高齢化が進み、公助においても職員・予算に限りがあるため、社会的孤立・孤独予防に資する社会環境に介入できる余力がない現状があります。さらに、社会との接点のとり方や空間への訪れ方の好みが人によって異なるにもかかわらず、社会環境がそれらを幅広く受け止めきれず、取りこぼしてしまっています。
<つながりが感じられ、コミュニティが形成される「場所」を共創するゼロ次予防モデルの開発>
本プロジェクトでは、場所からコミュニティへ、つながりを感じる助けとなるプレイスメイキングの方法を公民学連携で共創し、近隣社会環境の多様性を活かして空間的に処方することで、孤立・孤独を抱えがちな性格の人たちが公共空間に立ち寄りやすく、ハイリスク者も誘いやすい社会の実現を目指します。
本プロジェクトのプレイスメイキングとは、誰もがアクセスできる公共の場で行われる、場所との通いを構築するための近隣社会環境への介入方法を指します。社会的孤立・孤独リスクの可視化と評価手法の開発として、孤立・孤独ゼロ次予防モデルと一次予防モデルを開発し、近隣社会環境の多様性に基づく予防格差を可視化し、公共空間や場所性を活かす合理的根拠を提供します。
その上で、社会的孤立・孤独に陥りやすい性格傾向を持った少数派の空間的・社会的・情報的選好に配慮し、近隣社会環境の多様性を活かした戦略的なプレイスメイキングを実現するために、公助と共助の連携をエリアコーディネートする中間支援組織を支える仕組みを研究開発します。
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~
ながーいご紹介になりましたが、この「孤立・孤独予防に資する近隣社会環境の多様性の可視化による戦略的プレイスメイキング」というプログラムの一環として、姫路市での市民・事業者向けの「システム思考&ワークショップ」のお手伝いをさせていただいています。今年度は6回の連続講座に多くの地域のキーパーソンが参加され、議論を深めました。来年度にも続く予定なので、楽しみにしているところです。ここでの成果などもぜひお伝えしていきたいと思います。
さて、世界でもさまざまな「つながりを取り戻す」取り組みが広がっています。幸せ研のニュースから、楽しくなる記事をいくつかご紹介します!
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~
英国デボン州のトットネスで2012年に開催されたワークショップをきっかけに「カボチャ栽培協同組合」が設立されました。
カボチャは育て易く、少ない資源で多くの収穫が期待できる上、維持管理や水やりが楽です。何より冬の非常食になる素晴らしい作物です。コミュニティ協同組合にカボチャ栽培はぴったりでした。
協同組合の特徴は、その配当システムです。組合員は年間を通して週末に集い、カボチャの栽培や収穫をはじめ、多くの作業で協力します。その後、各人の労働時間の合計によって報奨金の分け前が払われます。このシステムにより、リスクや利益は組合員全員で平等に共有されます。
作業は年間を通じて段階的に進められ、下地準備(3~5月)、温室作業(4~6月)、植え付け(6月)など、いつどこで何を活動するかといった計画がグループメールで配信されます。気が向いた人がやってきて作業をします。おやつも用意されます。
10月中旬にはいよいよ収穫です。収穫したカボチャのうち小さいものはCSA(地域支援型農業)に卸し、この利益は翌年の種や肥料代に充てられます。その後、メインのカボチャを全員の合意で配分し、各自持ち帰ります。11月には会場を借りて仕事納めのカボチャパーティーが開かれます。親睦も深まり、栽培の写真や情報で新会員の勧誘にもつながります。
(有光圭子)
この記事の原文はこちら(英語)
https://www.shareable.net/how-to-set-up-a-squash-growing-co-op/
※この記事は2024年4月にShareableに掲載されたRoland Hague氏による記事(How to set up a squash growing co-op)の要約です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●世界に広がる「本以外のものを貸し出す図書館」:シェアラブル『物のライブラリーの現状2024』報告書を発表
シェアリングエコノミーを推進する非営利メディア「シェアラブル」は、2024年2月『物のライブラリーの現状2024』報告書を発表しました。
物のライブラリー(LoT: Library of Things)とは、物をコミュニティで共有するためのインフラです。楽器、ガーデニング用品、キャンプ用品など様々なものを図書館のように貸し出すことで、より環境に優しく物質的なニーズを満たします。公式に設立されたLoTだけでも、世界中に約2,000館あります。
本報告書は11カ国82のLoTの運営責任者やボランティアなどから得たアンケート調査結果を元にしています。
報告書の主なポイントは以下のとおりです。
・LoTは、コミュニティによって見た目や雰囲気が異なる
・多くのLoTは、数少ないボランティアと、倉庫のような小さなスペースで、地域社会に変化をもたらしている
・一般的に、LoTには3つのタイプがある
(1)完全にボランティアにより運営される、予算額年間1万ドル未満、平均会員数200人未満の小規模なLoT(これが大多数を占める)
(2)店舗を構え、多額の年間予算があり、1名以上の有給のライブラリー管理者を擁する大規模な独立系LoT
(3)公立図書館と連携している公立のLoT
・財政的には、会費、助成金、寄付に最も大きく依存している
・ほとんどのLoTは、運営開始後5年未満で、週1~3日の開館である
・大半のLoTは貸出以外のサービスも提供している
シェアラブルは、本報告書が多くの関係者の役に立つことを願っていると述べています。
※この記事はShareableに掲載された記事(New report: The State of Libraries of Things 2024)の要約です。
(新津 尚子)
この報告書について詳しくはこちら(英語)
https://www.shareable.net/new-report-the-state-of-libraries-of-things-2024/"
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シェアリングエコノミーを推進する非営利メディア「シェアラブル」は2023年12月12日、電力の緊急事態に備え、持ち運び可能な蓄電池を地域でシェアリングするネットワークを作るためのツールキットを公開しました。
この緊急時用の蓄電池ネットワークでは、会員が緊急事態で電力が必要になった際、蓄電池を充電・保管している会員に連絡して届けてもらいます。緊急事態が終わったら、蓄電池を利用した会員は、他の会員が緊急事態で必要となるまで蓄電池を充電・保管するといったしくみです。
無料公開されているツールキットは、シェアラブルと、「ピープル・パワー蓄電池共同体(People Power Battery
Collective)」が協力して作成したものです。この組織は、カリフォルニア州にあるピープル・パワー太陽光発電協同組合(People Power Solar Cooperative)のプロジェクト・グループで、電力の緊急事態にある人々を支援するためにバックアップ電源の提供を目的としています。ツールキットは、2023年に実施されたオンライン連続講習を元に作られました。
ツールキットには、地元で蓄電池ネットワークを作りたい人が、自分たちで容易に学ぶことができるよう、イラスト付きのテキストや動画、書式例などが含まれています。内容は、「コミュニティは全て異なる」を前提に、地域の特性に合ったネットワークづくり、蓄電池の維持管理やシェアリング運用の仕方のほか、ネットワークがうまく機能するために考慮すべきポイントなども盛り込まれています。
(たんげ ようこ)
「緊急時蓄電池ネットワーク・ツールキット(Emergency Battery Network Toolkit)」はこちら(英語)
https://www.shareable.net/emergency-battery-network-toolkit/
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~
ちっちゃくてもつながりを創っていくこと。それがだれかのお薬になるかもしれません! そんな可能性を探してみませんか?