先日、ある企業での社内研修で、「多様な人材の活用が、企業の成長力の源泉になる」というテーマで、お話&ミニワークショップをさせていただきました。
CSRの一環として、「女性の登用」「障害者の雇用」等、CSR報告書に記述する企業も増えてきています。社内にダイバーシティ推進のための組織やさまざまなプロジェクトを立ち上げている企業もあります。
いろいろな企業のいろいろな多様な人材への取り組みを見ていて、取り組み自体というより、「なぜわが社がダイバーシティに取り組むか」という思想・動機の面で、「守りのダイバーシティ」と「攻めのダイバーシティ」の2種類があるなあ、と思っています。
「守りのダイバーシティ」とは、「やらなくてはならないからやる」というものです。「社会的にやらないわけにいかない時代だから」「他社もやっているから」「CSR報告書に載せないわけにはいかないから」「この会社は何もやっていないと、女性の求職者にそっぽを向かれると困るから」「女性社員に辞められると困るから」「消費者/生活者の女性に嫌われると困るから」などなど。
数年前ですが、米国でそういう国際会議に出たときに、「なぜダイバーシティを推進しているのですか?」とあちこちで聞いてみたところ、「訴訟が起きると困るから」という理由がけっこうありました。
これも「守りのダイバーシティ」ですね。
でも一方で、「多様性は力の源泉だから」と心からそう思って取り組んでいる企業もありました。
これが「攻めのダイバーシティ」です。
日本ではどうでしょうね? 御社ではどうですか?
先日の社内研修では、「多様性が力の源泉である」のはなぜか、そして、「単に多様性がある」と「多様性を力に変える」ことは別物であり、私たちは「多様性を力に変えるためのスキル」を身につけていく必要があり、企業は「多様性を力に変えていくためのしくみ」を持つ必要がある、として、スキルのいくつかと、それを伸ばす場について具体的にお話ししたのでした。
多様性が創り出す力にはいろいろなものがありますが、その1つとして、「レジリアンス」についてご紹介しました。
「レジリアンス」は、復元力・再起力などと訳されますが、何かあっても立ち直れるしなやかな強さのことです。企業経営環境はますます激変することが予測される時代に、このレジリアンスを高めておくことは中長期的に企業の持続可能性・成否にとっての鍵を握ると考えています。
ダイバーシティの講演や話をするとき、よく「男性だけの会議と、男性と女性が参加している会議と、どちらが多様性が高いと思いますか?」と聞きます。
男女がいた方が多様性が高いのでは?と思われたかもしれません。
でも、男性だけであっても多様な意見や立場、考え方がでる会議もあれば、男女が参加していても、同じような意見しか出ない(出さない)会議もあるでしょう?
これが「単に多様性があるかないか」と「多様性を活用する」違いです。
社内研修では、もう一歩進めて、「一人ひとりの多様性を高めること」の重要性も話しました。
いつも同じような考え方しかできない自分は、「個人内多様性」は低いでしょう。
いろいろな立場から考えることができる、いろいろな発想ができる自分であれば、自分自身もラクに豊かに、しなやかに強くなれる、と思うのです。
そういうつながりで、「自分にいろいろな方向から考えさせる」シックスハットという発想法についても紹介しました。創造力と多様性は密接につながっているのですよね。単なるモノではなく、価値を創造していくことがこれからの企業にとって必須である時代、攻めのダイバーシティに転換していけるかどうか、が大きな鍵の一つではないかと思っています。
「多様性を力に」
そのためのスキルや作法、場も含め、考えつづけていきます。