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エダヒロ・ライブラリー講演・対談

新しいエネルギーの未来へ向かって-私たちひとりひとりにできること- その2

「さつき会」総会(2013.06.30)
2013年10月31日
団体主催
講演
 

■若者の変化

定常型という言葉こそ使っていませんが、日本の若者の中で、、直感的にこれが大事だ、やりたいと思い、、広がる動きがあります。その一つが「100万人のキャンドルナイト」です。夏至と冬至の2時間電気を消し、ろうそくを付けて友達や家族とゆったり時間を過ごす。東京タワーの照明を消したりしています。私も発起人の一人として12年前に始めたものですが、1000万人もの人々が参加していると言われています。

日本から世界にも広がっているxChange(エクスチェンジ)という、着なくなった洋服を持ち寄って交換する活動があります。タグに「こういうふうに着てきたけれど、こういう理由で着られなくなった、こういうふうに着てもらえたら嬉しい」といったことを書いて、洋服に付けます。みんなとても嬉しそうにタグを読んでいるのです。つまりここで交換しているのは古着だけではなくて「思い」なのです。

アウトドアがブームになって、山ガールが増え、山ガールが増えると山ボーイも増える。走る人もすごく増えていて、2011年のフルマラソンの完走者が25万人。うち5万人以上が女性です(私も4年ぐらい前から走り始めて、東京マラソンを含めてフルマラソンを6回ぐらい走っています!)。

 

■「3脱」の時代

お金はかからない、けれども幸せな時間を志向する人たちが増えてきている。私はこういう動きを「3脱」とまとめています。1番目は「暮らしの脱所有化」です。物を所有することで私たちは暮らしを成り立たせてきた。私が大学生の頃は、男の子は車を買ってデートに出かけました。けれども今の若者たちは車を持つのは格好悪いと言っている。レンタカーやカーシェアリング、相乗りというように、みんなで共有したり、貸し借りすればいいと思っています。

2番目は「幸せの脱物質化」です。物を持つこと、物を買うことというように「物」が幸せの原点だった。しかし人との触れあいや自然との時間を大事にすることに幸せを感じる人が増えてきた。年齢が上の世代の男性たちは、こうした感覚をとても嫌がります。「みんながそうなったら経済が回らなくなる。GDPが増えなくなる。もっと買え、買え、買え」と言っていますが、若い人たちはもうそちらに気持ちが向かわないのです。

3番目が「人生の脱貨幣化」です。これまでは生きるために自分の時間を会社に差し出し、その対価としてお金をもらう生き方でした。日本の場合、十分なお金をもらうためには、最大限自分の時間を差し出さないといけないので、「退職してから自分の人生が始まる」と言っている人たちが私の周りにもいます。そういう生き方を見ている若い人たちは、「お金と時間をバーターしなくていいんじゃない」と考えるようになってきている。食べ物を買うためにお金がいるから、こういう生き方が必要だと言われてきたけれど、それならば自分で食べ物を作ればいいということで、「半農半X」という生き方が広がってきています。

自分の時間の半分を使って農業をする。残りの半分がXで、自分がやりたいことをやり、ここで現金収入を得て農業では手に入らないものを買う。農業といっても作物を売るための農業ではなく、家族や自分が食べられればいいというものです。私のやっているNGOでも「半農半NGO」をしているスタッフがいますし、歌手の加藤登紀子さんのお嬢さんのYae(やえ)さんも「半農半歌手」で、鴨川の農園で自分の家族の食べ物を作り、残りの時間で歌をつくって歌っています。

ダウンシフターズ、つまり降りていく生き方をする人たちも世界的に増えています。リストラにあったからではなくて、自分の意図としてお給料と仕事の量を減らし、家族との時間、自分のやりたいことの時間を大切にしている人たちのことです。アメリカではダウンシフターズが1200万人いるといわれています。

 

■節電・省エネ

東日本大震災以降、自分たちでエネルギーをつくりたいという人が増えました。CO2を出す火力発電や原発でつくられる電気は使いたくない、けれども停電も困る。ではエネルギーを自給するにはどうしたらいいか。少しでもその方向に進むにはどうしたらいいでしょうか。エネルギーを選ぶことは未来を選ぶことだと思っています。

エネルギーを選ぶ前に、まずしたいことは使う電力の量を減らして、賢く省エネ・節電をすることです。「消費電力の四天王」と呼ばれる、冷蔵庫、照明器具、テレビ、エアコンで、家庭での使用電力の半分ほどになります。エアコンの時間を短くするとか、設定温度を変えるとか、「四天王」をまずターゲットにしてほしいと思います。

東京電力の管内であれば契約のアンペアを下げるアンペアダウンができます。わが家も40アンペアだったのですが、東日本大震災のあと30アンペアにしてもらいました。基本料金はアンペア数で決まるので電気料金が安くなります。それだけでなく生活に変化が起きました。40アンペアのときと同じ生活をしていると、ときどきブレーカーが落ちました。電子レンジを使っている時に娘がドライヤーを使うと落ちる。電気製品を使う時期をずらせばいいので、「ドライヤーはあとでね」と一声かけて、みんなで調整しながら電気を使うようになり、家族の会話が増えました。

電気だけでなく熱のエネルギーにも気をつけたいものです。お湯を沸かすとか、暖房とか、家庭では熱のエネルギーも多く使います。夏にお風呂に水を張る場合は朝汲み置きをすると夕方までに気温に伴って水温が上がっていますから、汲んですぐ沸かすよりもガス代も少なくてすむし、CO2も少なくてすみます。

 

■自然エネルギーを増やす

次に自然エネルギーに変えていくといいと思います。ソーラーパネルが取り付けられるような家に住んでいるのでしたら、早めに取り付けることをお勧めします。2014年までに取り付ければ、つくった電力を、最初の3年間は特別に高い価格で、10年間は電力会社に買ってもらえます。

わが家はマンションなのでソーラーパネルは取り付けられませんが、「ちりも積もればゼロよりまし」というのが私のモットーなので、小さいことですが工夫しています。携帯電話の充電用のプチ・ソーラーパネルを使い、少なくともケータイは自然エネルギーで充電する。防災用品は電気が止まっても使えるので防災用品を普段も活用する。ソーラーランタンには太陽光パネルが着いていますから、外に出しておくと充電できます。手回しもついていれば、太陽光が十分ではない時は2~3分、手回しすると電気がつきます。

自治体や事業所など50kW 以上使っているところは電力会社を選ぶことができますから、こういうところにお勤めでしたら、自分たちで電力会社を選んでほしいと思います。家庭でも数年後には電力会社を選べるようになるはずです。スウェーデンなどではすでに当然のように選べます。「電気メニュー」に火力発電、風力発電、原子力発電などそれぞれの価格が記され、携帯電話の契約と同じように、自分で好きなメニューを選べます。ただし電力市場が自由化されたからといって必ずしも電力料金が安くなるということではありませんから、電力自由化の実現した暁には賢く上手に選んでほしいと思います。

自然エネルギーをつくっている事業に投資するという方法で、自然エネルギーを応援することもできます。お金を寄付するのではなく、事業に出資するのです。私は秋田に建っている風力発電に出資していますが、今までのところ銀行よりよい利回りです。

 

■企業への働きかけ

企業活動におけるエネルギーの消費量、CO2の排出量は非常に大きく、そこを改善してほしいと思っています。企業は営利企業なので利益を追求せざるを得ないわけですから、正しい方向に進んだほうが利益が上がるというように、社会の仕組みを変えていかなくてはいけません。例えばヨーロッパでは環境税やエネルギー税がかかるので、エネルギー消費量やCO2排出量が多いと利益率が下がってしまうため、これをできるだけ減らそうということになります。

日本では政策や税制がそうした方向にあまり機能していませんが、消費者の力を使うことで影響を与えることができます。無駄な物を買う必要はないけれど、同じ物を買うのなら、できるだけエネルギーを使わず、CO2を出してない企業から買うというように、企業を私たちが選ぶのです。

愛媛県今治にタオル工場の電力をすべて風力でまかなって「風で織るタオル」を作っているところがあります(池内タオル株式会社)。普通の電力よりも高くなるので商品価格は上がります。最初に日本で売り出したけれどあまり買ってもらえなかった。ところがニューヨークで売り出したら非常に売れたそうです。私たちが環境価値をきちんと理解して、買うことで、よい取り組みをしている企業を応援することができます。

また、消費者は企業に声を届けることができます。いいことをしている企業には「いいことをやっているね」と、まだ足りないと思ったら「もうちょっと頑張ろうよ」と声をかける。その声は社内で頑張っている環境部署の人を応援することになります。「お客さまからもこう言われてます」と言うと、社内でも強く言えるのです。

 

■政策に影響を与える

政治家が規制や税制について力をもっているので、政治家の行動を変えることはとても大事です。政治家も有権者の声を気にしているので、地元の選出の議員の事務所に行く、電話をする、メールをするという方法で意見を言うことができます。参院選がありますが、「あなたはエネルギーをどう考えているのですか」「環境や未来世代についてどう考えているのですか」ということを問うだけでも、「そういうことをみんな気にするようになったのだ」と思って、政治家は考えを変えます。「早くヨーロッパのように正しい方向に税制を変えてほしい」という声を出すこともいいと思います。

政治家は新聞の投書欄もかなり見ているそうです。1つの媒体で意見が1つ出たぐらいではあまり気にしないけれど、様々な媒体で同じような声が出はじめると、「国民はそう考えているのだ」と思って考えを変えると聞いたことがあります。「さつき会」のようなところで、みんなで媒体を分担して同時多発的に投書をするのも効果的かもしれませんね!

最後に、国のエネルギー政策に意思表明をしてほしいと思います。枝野幸男さんが経済産業省の大臣だったときに私は総合資源エネルギー調査会基本問題委員会に入っていましたが、男女比に愕然としました。エネルギー政策は女性にとっても大事なのに25人の委員中、女性は4人だけです。そうすると経済界・産業界を代表している男性の声が大きくなる。私たち女性は「命」や「未来世代への責任」といった言葉でエネルギー政策を語りたいのですが、男性が中心だと投資に対するリターンや効率、コストという話になってしまいます。絶対的に女性の数が足りません。もう1つ愕然としたのは委員会の偏った年齢構成で、40歳以下はゼロです。2030年までのエネルギーをどうするかというテーマなのに、その頃には社会の中枢から退いている方たちが議論しているわけです。若い人の声がエネルギー政策に届かないのです。

女性についても若者についても委員会の構成がおかしいと思ったので、声をかけて女性100人に集まってもらって女性の視点でエネルギーを考えてもらったり(エネ女の集い)、若者、高校生、大学生、20代の働いている人たち(エネ若の集い)からのエネルギーに関する提案をまとめて、委員会に伝えました。

国では新しい政策を決めるときには、必ずパブリックコメントを寄せてもらう期間があり、インターネットやメール、ファクスで市民が意見を言えます。そこで届けられた声は議事録に残って委員も見ますし、資料としてウェブサイトにもアップされたりします。ですから「私1人だから」「素人だから」などと思わず、遠回りかもしれませんが地道に自分の声を実際に届けることが大事です。

「さつき会」のメンバーは様々な形でいろいろなところに影響力を持っている方が多いと思います。エネルギーは難しいと女性はよく言いますが、私たちの暮らしを支えている大事なものですから、皆さんの意見を国に届けてほしいと思います。私たちがいくら胸の中で思っていても、経営者でも政治家でもその声が聞こえない限り、国民はこれでかまわないのだと思ってしまいます。ですからいいことも悪いこともぜひ声を伝えてほしいと思います。

新しいエネルギーの未来へ向かって、私たちができることはいろいろあります。どういう社会をつくりたいのか、どういう世界にしたいのかを大事に考えていけたらいいなと思います。

 

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