「エコロジカル・フットプリントで測ると、世界中の人々が私たち日本人のような生活を始めたら地球が2.4個分必要になる」そうです。
この「エコロジカル・フットプリント」とは何でしょう?
ecological とは本誌の誌名「エコロジー」の形容詞で「エコロジーの」「生態の」「環境上の」という意味で、footprintは「足跡」。
つまり、私たちの暮らしや経済は地球のどのくらいの面積を踏みつけているのか? つまり、人間活動は地球のどのくらいの面積に支えられているのか? ということです。
エコロジカル・フットプリントは北米中心に活動するマティース・ワケナゲル氏らが開発したものです。人間が自然環境に与える影響をわかりやすく伝えてくれる指標なので、国連や国、自治体による環境調査や政策立案、WWF(世界自然保護基金)などの国際的なNGO(非政府組織)などで活用され、環境教育に取り入れている国もあります。日本の『環境白書』にも載っています。
さて、このエコロジカル・フットプリント、どうやって計算するのでしょうか?
まず、「自然に対する人間の影響の総量」を土地面積として計算します。それは、食糧や木材、魚や都市部の土地などの資源を人類に提供し、人間活動から排出されるCO2を吸収するために要する面積です。それと「実際に利用できる土地面積」の比を計算し、「人類が地球に対して要求しているもの」と「地球が提供できる能力」との割合を示します。
世界のエコロジカル・フットプリントは、1980年代後半に「地球1個分」、つまり地球が支える能力を超えてしまいました。その後も増大し、現在では1.2、つまり人間の経済規模は地球の能力を約20%も上回っているのです。
常識的に考えれば、提供してもらえる量を超えて消費はできません。毎月の収入以上に支出できないのと同じです。地球の提供できる能力を超え続けられるのは、「もともと口座に預金があったので、当面は収入以上に支出できる」状況だからです。
いってみれば、人間の経済活動は地球がこれまで蓄積してきた資本を食いつぶし、未来世代からどんどん前借りして、現在の過剰な消費量を保っているのです。口座残高がゼロになったら、収入以上の支出を続けられません。人間も、いつまでも行き過ぎた消費を続けられません。
地球に影響を与えるのは「絶対的な総量」ですから、いくら原単位当たりのCO2や環境効率、リサイクル率を上げても、環境負荷の総量が増えては改善にはなりません。
世界には、エコロジカル・フットプリント削減の数値目標を公に掲げている自治体もあります。国や自治体のみならず、あらゆる企業の環境(CSR/サステナビリティ)報告書に、「わが社のエコロジカル・フットプリント」の報告ページができる日が早く来てほしい! と願っています。