物質の循環や環境問題の話題で、「source(ソース)」と「sink(シンク)」という言葉を聞いたことがありませんか?
sourceとは「もと」「源」「起点」「水源」です。何かが出てくる場所、という意味ですね。「情報源」「出典」などの意味で使われることもあります。論文などの引用表記でご覧になったことがあるかもしれません。
sinkは、動詞としては「沈む」「沈める」という意味で、名詞だと、日本語でもカタカナで「シンク」と呼びますが、「台所の流し」「流し台」のこと。「掃きだめ」「受信装置」という意味もあります。何かが沈み込んでたまる場所、受け手側、というイメージですね。
何かが出てくる源がsourceで、何かが沈み込んでいく場所がsinkなのですね。普通の辞書には載っていませんが、このような意味合いで使われるときには、sourceを「供給源」、sinkを「吸収源」と訳します。
例えば、今私の机の上にいれたてのコーヒーが湯気を立てています。これは熱いコーヒーから熱が放散しているときに起こる現象ですが、熱エネルギーの供給源(source)は熱いコーヒーで、吸収源(sink)は大気になりますね。
この「供給源~吸収源」のつながりは、地球を舞台にしている私たちにも経済活動にも当てはまります。
人口も経済も、地球から得ている空気や水、食糧、物質、化石燃料などに依存しています。一方、廃棄物やCO2、化学物質などの汚染を出し、地球に戻しています。
地球内部の油田や鉱床、帯水層、土中の養分などが供給源にあたり、大気や地表水、埋め立て地などが吸収源ですね。
「地球は有限である」というのは、「地球の供給源および吸収源は有限である」ということなのです。『成長の限界 人類の選択』(デニス・メドウズら著)では、地球の供給源と吸収源の現状について考察し、「重要な供給源の多くが空っぽになりつつあるか、劣化しており、一方で、吸収源の多くはいっぱいになりつつあるか、すでにあふれ出している」と述べています。
温暖化の問題で考えると、CO2の主な供給源は原油、天然ガス、石炭などとなり、吸収源は森林や海洋などとなります。供給源が減って供給能力が減少し始めるのが「ピーク・オイル」問題で、吸収源の能力を超えてCO2が排出されているために起こっているのが温暖化問題です。
私たちや工場が使う物質やエネルギーも、どこからともなく現れて、使い終わったら、どこかへ消えてしまうわけではありません。
物質やエネルギーを、「地球の供給源から、経済というサブシステムを通って、一部は経済システム内部で循環し、最終的には、廃棄物や汚染物質の終着点である地球の吸収源へと流れていく」というシステムの構図で見ると、環境問題の本質が理解しやすくなります。