エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2007年12月27日

biomimicry

 

「バイオミミクリー」(biomimicry) って、お聞きになったこと、ありますか? 

bioは生態系とか生物の意で、mimicryは「まねること」という意味です。そこで「生物模倣」などと訳されることもありますが、日本語にはまだ定訳がありません。「バイオミミクリー」とカタカナで書くこともよくあります。

「生物模倣」といわれてもピンと来ませんが、バイオミミクリーとはどのようなものなのでしょうか?

「バイオミミクリーとは、人間の問題を解決するために、自然のモデルを研究し、 自然のデザインやプロセスをまねる、またはそこからインスピレーションを得る新しい科学です」――バイオミミクリーを紹介しているウェブサイト(http://www.biomimicry.net/)にはこのように定義されています。

「例えば、葉っぱにインスピレーションを得てソーラーセルを作るなど。バイオミミクリーではエコロジーの基準を用いて、私たちのイノベーションの『正しさ』を判断します。38億年にわたって進化を遂げてきた自然にはわかっているからです。何がうまく機能するのか。何が適切なのか。何が長続きするのか。バイオミミクリーは、自然を見、評価する新しい方法です。自然界から私たち人間が何を取り出せるかではなく、私たちが自然界から何を学べるかを基本とする新しい時代を拓くものです」とのこと。

「生き物に学ぼう!」と訳すのがよいかもしれませんね。

 人間は実際に生き物に学んできているのですね。例えば、レオナルド・ダ・ビンチは、トンボやハチが空中停止する様子にヒントを得て、ヘリコプターの原理を思いついたといわれていますし、ライト兄弟も、「鳥の翼は上面と下面で断面のカーブが違う」ことを発見し、飛行機の設計に取り入れたそうです。

私たちの身近なところにもバイオミミクリーを商品化した例があります。面ファスナーです。

あるスイス人が猟に出たとき、猟犬の毛にゴボウのイガが強くくっついて、なかなか取れなくて手こずったそうです。面ファスナーはこのときの経験をヒントに作られたのですって!

生物の技術に学ぶことから、人間の環境負荷を劇的に減らそうという取り組みが進められています。「アワビのように、合成接着剤を使わずに自由自在に壁に自らを吸着・剥離するには?」「シロアリの塚のように、エアコンを使わずに空調するには?」「カタツムリのように、洗剤を使わずに自らの殻の汚れを落とすには?」――などなど。

エアコンを使わなくても、内部の温度や湿度はほぼ一定に保たれているシロアリの塚から、通気性や湿度制御のヒントを得て、空調にほとんどエネルギーをかける必要がない建物や住宅が実際に作られ始めているそうです。わくわくしますね!

 

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