エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2008年03月17日

ecological rucksack

 

「エコロジカル・リュックサック(ecological rucksack)」という言葉を聞いたことがありますか?

「ecological」は、おなじみの「環境の」「環境的な」という意味合い。「rucksack」は、そう、背中に背負うあのリュックサックです。2つの言葉を組み合わせて「環境面でのリュックサック」って、どういうことなのでしょうか?

ところで、金の指輪1個の重さはどれぐらいか知っていますか? 10gぐらいでしょうか。では、その金の指輪を1つ作るために、どのくらいの量の土を動かしたり、資源を使っていると思いますか? 

その量はなんと、6tだそうです! 10gの金の指輪を恋人に贈るため、世界のどこかで金を採るために鉱山を爆破したり、川底から土砂をすくい上げたりして、6tもの土が動かされているという事実を知っている人はほとんどいません。

そうやって採掘された金も、そのままでは混ざり物が多過ぎて使えないので、精製して純度を高めます。そうして金の指輪に加工して、日本に運んでお店に飾り、私たちが買う……。その過程のそれぞれで、膨大な資源やエネルギーが使われているのですね。

指輪でも何でも、それをじっと見ているだけでは、その姿になるまでに膨大な資源やエネルギーが使われているということはわかりません。しかし、例えばコップのように私たちの身の回りにある物は、それが作られるまでに多くの資源やエネルギーが使われていると――。そんなことを示しているのが、この「エコロジカル・リュックサック」という考え方なのです。

「エコロジカル・リュックサック」は、1994年にドイツのブッパタール研究所(当時)のシュミット=ブレークが提唱した考え方で、「私たちが使う製品や受けるサービスは、作り出すために移動された鉱石、土砂、水、その他の自然資源をリュックサックに入れて背負っている」というものです。

つまり、ある製品や素材の生産のために移動された物質量を、重さで表す指標なのです。

あるデータによれば、1kgの素材や製品を得るため、鋼鉄は21kg、アルミニウムは85kg、再生アルミニウムは3.5kg、ダイヤモンドは5万3000tの自然資源を動かすそうです。

物によって大きなリュックサックもあれば、小さなリュックもあるでしょう。

例えば同じトマトでも、露地栽培と温室栽培では、リュックサックの大きさが違います。また、輸入した野菜は、地場で取れた野菜に比べると輸送のためのエネルギーが必要なので、やはりリュックサックの大きさが違います。

買い物をする時は、ぜひその商品が背負っているエコロジカル・リュックサックの大きさを想像して、買い物の判断基準の1つにしてくださいね。

 

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