エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2008年07月01日

D−S−R

 

温暖化をはじめ、環境問題に関する様々な情報が、それこそ洪水のように入ってくるようになりました。しかし、断片的で、出来事レベルの情報であることが多く、混乱してしまうこともあるかもしれません。

そんな時、情報に溺れることなく本質をつかむため、情報を位置づける「枠組み」があると楽です。国際的な環境指標の枠組みとしても使われる「D−S−R」を紹介しましょう。

「D」とは「Driving force(原動力)」のことで、「環境の状態を変化させる環境負荷」を指します。「S」は「State(状態)」で「環境の状態」。「R」は「Response(対応)」で「環境の状態を修復するための対応策」を指します。

つまり、環境問題に限らず、世の中には、ある「原動力」に動かされた結果の「状態」があり、その状態を正すため、「対応」が取られている――ということを、「D−S−R」はシンプルに示しているのです。

例えばこの数ヵ月、次から次へと仕事の量が増えている(原動力)ので残業時間が増え、睡眠や気分転換の時間が減ったため、健康を害し、いつもいらいらしている(状態)。これでは続かないと、上司に相談してみる(対応)、という具合です。

この「対応」は「原動力」に働きかけようというものですが、コーヒーに手を伸ばす、飲酒量を増やすなどの「対応」もあり得ます。これは、「原動力」ではなく、「状態」を変えようとするだけの、いわゆる対症療法ですね。

組織についても、同様に考えられます。ある会社では、消費者の環境意識が高まってきたため(原動力)、エコではない従来の主力製品の売れ行きが落ちてきた(状態)。そこで、エコ商品の開発部隊を立ち上げることにした(対応)という具合です。

ここで、従来の主力である非エコ製品を販促キャンペーンや値引きで押し込んで売ろうとする対応もあり得るでしょう。これは対症療法で、本質的な問題解決にはならないことは明らかです(が、こういうことはよく起きています……)。

環境問題を考える時にも、同じように見ることができます。今、目の前にある情報は「原動力」に関する物なのか、「状態」なのか、「対応」なのか、と考えてみるのです。

「ホッキョクグマの数が減っている」「昨年も史上最高気温だった」などの情報は「状態」です。「原動力」に当たるのは、人口や経済成長、または、CO2や有害廃棄物の排出量などでしょうか。

政府の法規制、企業の取り組みなどは、その多くが「対応」に分類されそうです。こうした対応が、根本療法になり得るのか、それとも単なる対症療法なのか、と考えてみるとよいでしょう。

DSRを意識して、日々の情報を当てはめてみると、D→S→R→D(またはS)→……という「つながり」が見えてくるようになり、自分なりの理解の枠組みができてくると思います。

 

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