翻訳者は、「出版社などが翻訳を決めたものを翻訳する」ことが多いものですが、中には、自分で「これをぜひ翻訳して日本で読んでもらいたい!」と翻訳したい原書を自分で見つけてきて(またはそういう原書に出会ってしまって)、翻訳出版の提案書・企画書を作るところから始める場合もあります。
私は主に自分が取り組んでいる環境問題やシステム思考、自己啓発の分野で、まだ日本に知られていない大事な考え方や書籍が海外にあることが「もったいなくて」しかたありません。「これはいい本だから、日本でも出版して日本の人々にも読んでもらいたい!」といてもたってもいられなくなることが多く、これまでに出した翻訳書26冊のうち11冊は、自分で企画書を書いたり編集者にもちかけたりして出版を決めてもらい、翻訳も担当したものです(ご参考まで、これまでの翻訳書の紹介はこちらにあります)。
「ぜひ日本でも読んでほしい!」という6年越しの(そう、そう簡単にはいかないことが多いのです。ボツになるものもけっこうありますし)夢がやっと叶った本がこの夏に出版されました。日本でもとても知られた「100人の村」を書いたドネラ・メドウズさんの珠玉のエッセイ集です。
『地球の法則と選ぶべき未来』
ドネラ・H・メドウズ著、枝廣淳子訳 ランダムハウス講談社
https://www.amazon.co.jp/dp/4270005076?tag=junkoedahiro-22
ドネラ・メドウズさんは、私も参加しているバラトン・グループ(世界中の環境問題やシステム思考の専門家・実践家のネットワーク)を、デニス・メドウズ氏といっしょに30年近く前に立ち上げた方です。(残念ながら2002年に亡くなり、私は直接お目にかかることができませんでした。。。) システム思考(システムダイナミクス)の研究者だったのですが、「より多くの人に伝えることが大事」とジャーナリストに転身し、多くの新聞などに「問題の構造をつながりをたどって明らかにする」コラムなどを寄稿しました。
ドネラさんの深い洞察と明快でわかりやすい「目からウロコ」の文章を読むたびに、「ぜひ日本でも多くの方々に読んでほしいなあ!」と思っていました。物事や地球がどうつながっているのか、本当に大事なことは何なのか、どこから私たちは変えていけるのか−−たくさんの気づきとヒントを得ることができるからです。
そして、この本の翻訳は「チーム」で行ったという点でも、自分にとってはひとつの新しい試みが上首尾に成立することがわかり、うれしいものでした。私は監訳者としてすべての訳文のチェック・修正をしましたが、私の環境メールニュースなどのために、海外からの情報をボランティア翻訳してくれている「実践和訳チーム」の数十人が力をあわせて翻訳協力をしてくれたおかげで実現した翻訳なのです。
「ぜひいつかは日本に!」とこの本の翻訳プロジェクトを立ち上げた6年前には、(エコブームもまだありませんでしたので)こういう本を出してくれる出版社がなかなか見つからず、それでも「いつかきっと」と、みんなでコツコツと翻訳を続けました。おかげで、企画書が通ったときには、翻訳はほぼ完成しており、すぐに出版できたのです。
みんなの思いにゆっくりと抱かれて誕生したスローな本です。秋の夜長にゆっくりと読んでいただけたらうれしいです。
そして今は、アル・ゴア氏の『不都合な真実』の続編の翻訳を猛スピードで進めているところです! 前書に比べて量もとても多くてタイヘン。がんばります〜。 「ぜひ日本でも読んでほしい」本を一緒に翻訳できるメンバーが増えてほしい、という願いから、翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」をはじめ、「翻訳道場」など、翻訳者を目指す方へスキルアップの機会も提供しています。翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」1〜3を修了した方には、「実践和訳チーム」をはじめ、私の出版プロジェクトのトライアルを案内している、修了生の有志勉強会グループをご紹介しています。また、12月27日と、1月8〜9日に予定している「実践型トライアルをかねての冬の翻訳道場」で成績が優秀だった方にも、これからの出版プロジェクトに参加していただく予定です(おかげさまで12月のコースはすぐに満席になり、現在キャンセル待ちになっていますが、1月の合宿コースはまだお席に余裕があります)。よろしければみなさんもぜひご一緒しませんか?
翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」