エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

第12回

企業の温暖化対策に注目!

 

 将来の「あるべき姿」を描き、その目標に向かって、今何をすればいいのか考える――このバックキャスティングという手法について1月号でお伝えしました。バックキャスティングでまず大切なのは、目標やビジョンのつくり方です。これによって、取り組み方や効果が大きく変わってきます。
 今、地球温暖化に対して、国も企業も自治体も、それぞれが真剣に取り組んでいかなければなりません。日本の温室効果ガス排出量は1990年比で8.7%増、CO2排出量に限ってみると14・1%も増えています。CO2排出量のうち、36%(2006年実績)が産業部門によるもので、いかに企業の取り組みが大きな影響を持っているかが分かります。
 また、この36%の部分、つまり企業が生産や運用の過程で直接排出するCO2に加えて、間接的な影響も考慮に入れなければなりません。自動車メーカーであればその燃費、家電メーカーであればその省エネ性能、電力会社であればそのエネルギー源のミックスなど、提供する製品・サービスの質が、私たちの暮らしを含め、日本全体のCO2排出量に大きく影響しているからです。
 では、企業は温暖化対策について、どのような目標を掲げ、どのような取り組みを行っているのでしょうか。先日、国内の主要な55社を調査しましたので、その一部をご紹介します。

長期的に、総量で、社会全体への影響を測る

 温暖化対策の目標設定に関して、重要なポイントが3つあります。
 まず、目の前の短期的な目標だけではなく、「長期的な視野で、温暖化を止めるためのあるべき目標」を設定しているかどうかです。「人間の排出するCO2  地球の吸収するCO2」にする、つまり、世界全体で現在の排出量72億トンを31億トン以下にするために(2008年5月号参照)、日本のような先進国に求められている大きな削減をめざしているかどうかです。京都議定書の第一約束期間である、2008~2012年近辺を超えた、2020年、2050年という超長期を見据えた目標が必要になります。
 2つめに、生産量あたり、床面積あたり、店舗あたりのCO2排出量といった「原単位」ではなく、企業全体として排出している「総量」目標の設定がとても重要です。例えば、いくら燃費を改善した自動車でも、走行距離が長くなれば、または所有台数が増えれば、実際のCO2排出量は増えてしまうからです。
 企業の目標を見るとき、それが原単位なのか、総量なのかに注目してみてください。社内の指標として原単位を用いることはあっても、社会に対する責任を果たすには、実際に地球に影響を与える「総量」を測り、減らしていかなくてはなりません。
 3つめに重要なのは、冒頭でも言ったように、自社の製造や運用プロセスから直接排出されるCO2の削減目標に加えて、生産・提供する製品やサービスが社会のCO2排出に与える、間接影響を考慮に入れる必要があるという点です。2つめのポイントとも関係しますが、私たちの生活からCO2排出をどれだけ削減できるのかは、企業がどのような製品・サービスを提供しているかに大きく影響されます。その意味で、「自社の製造・運用プロセスからのCO2」の目標設定は必須として、特に間接影響が大きい業界の場合には「自社の提供する製品・サービスによるCO2」に対する目標設定を行うことが望ましいと考えています。
 日ごろ利用している製品やサービスを提供している企業が、どのような目標を掲げて、どのような取り組みを進めているか、この3つのチェックポイントと目標値の大きさという観点で見てみてください。がんばっている企業は応援し、まだまだの企業には、消費者として私たちの声を届けていきましょう。
 調査内容の詳細については、ぜひレポートをお読みください。「日刊温暖化新聞」のトップページ最下段のバナーからご覧になれます。
http://daily-ondanka.com

2009年3月号

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ