今後の日本のエネルギー・電力のあり方の議論が盛んになっています。
言うまでもなく、エネルギー・シフトは一朝一夕にはいきません。ですから、「いますぐ」と「長期的に」どうしたいかを分けて考えることが大事だと思います。
たとえば、今夏の電力不足を乗り切ることだけを考えれば、自然エネルギーを短期間で大きく増やすにも限界があるので、火力発電の増強が必要となるでしょう(それだけで突っ走ると、CO2が増え、システム思考で言う「短期的な解決策が長期的な解決策の足を引っ張る」事態になります)。
一方、「電源の大転換はすぐには無理」「ライフスタイルもすぐには変えられない」と思っている人でも、「長期的に考えよう」と言われれば、異なる姿を思い描くことができるでしょう。
エネルギーや電力については、中長期的な時間軸でも考えていくべきと思い、幸せ経済社会研究所では「30年後の日本の電力について」の世論調査を行いました。
20歳~70歳の1,045人を対象にしたインターネットアンケート調査会社による調査です。
詳細は幸せ研のサイト(http://www.ishes.org/news/2011/news_id000011.html)に掲載したプレスリリースを見ていただくとして、主な結果を共有したいと思います。
まず震災・原発事故が多くの日本人の「今後の日本のエネルギー」に関する意識を変えたことがわかりました。原子力発電の安全性への信頼が揺らいだと感じている人が多いこと、同時にこれをきっかけに自分自身の節電・省エネ意識が高まったと感じている人がたくさんいます。
30年という長期的な視点で考えると、日本の電力消費量は「減っていくべき」と考えている人が多いこともわかりました。その電源構成については、4分の3近くが「原子力は減らすまたはゼロが望ましい」と考え、全体の5人に1人は「原子力はゼロにするのが望ましい」と考えています。
他方、太陽、風力、地熱、水力などの自然エネルギーの増加を望んでいる人が多くいました。
持続可能で幸せな日本の社会や経済を考える上で、エネルギー・電力のあり方はとても重要です。長期的な視点で考えたとき、「右肩上がりの電力需要をまかなうために、発電量の大きな原子力発電所をどんどん建設する」というこれまでのパターンではなく、「電力消費量は減っていき、その電源は、安全性への信頼がゆらいだ原子力ではなく、自然エネルギーが大きな役割を果たす」暮らし・経済・社会を望んでいる人が多い――このことは今後の日本のあるべき姿を考えるうえで確かな方向性を示していると考えています。
「将来のありたい姿」が明らかになったら、次は何があればそれが可能になるか-。バックキャスティングの考えが大切だと思います。