ますます複雑に変化する時代に、組織の競争力を左右するのは学習能力と言われています。
個人とチームの学習能力を高め、しなやかに進化し続ける組織をどのようにつくったらよいのか?この分野の世界の第一人者であるピーター・センゲ氏の『学習する組織』を翻訳・刊行しました。
「学習する組織」に必須のスキルの一つが「ダイアログ」(対話)です。ダイアログとは? ディスカッションとどう違うのでしょう? みなさんの組織で行われているのはどちらでしょうか?
ディスカッションとは、さまざまな考えを発言・弁護しながら、全体状況の分析を進め、最終的には「決定を下す」ためのものです。通常、参加者の目的は「勝つこと」=「自分の考えをみんなに認めさせること」となります。
他方、ダイアログとは、複雑で微妙な問題を自由かつ創造的に探求し、互いの話にじっくり「耳を傾ける」ことでひとりでは到達できない新しい見方を得ようというもので、うまくいっているなら「全員が勝者」です。
基本原則も目標も異なるこの2つの方法は補完しあうもので、組織では意識的に使い分ける必要があります。
私も発起人の一人である「みんなのエネルギー・環境会議」は、茅野での第1回会議の後、京都につづき、先日札幌でも会議を開催しました。コーディネーターとして私は冒頭、こう述べました。
「この会議は、ある立場を推進したり、何かを攻撃したりするためのものではありません。原発にしても自然エネルギーにしても、いろいろな考え方があります。これまでは、考え方が違うと、「敵と味方」と分かれてしまい、一緒に議論することはほとんどありませんでした。それでは物事は進みません。ここでは、いろいろな立場・考え方の人々が集まり、データや論拠を出し合って、対話を進めていくことを目的としています」。
そして、2つのタイプの合意形成について説明しました。
「焦点を絞っていく合意形成」は私たちのふだんのやり方で、いろいろな意見の共通項―「私の意見のどの部分なら他の人と共有できるか」―を見つけるものです。共通項を絞り込んでいく「狭める合意形成」ですね。
他方、各自がある「現実のとらえ方」を持っており、互いの視点から見ることで自分だけでは見られなかった何かを見ることができるという考え。「あなたも私も正しいとしたら、全体像は何か?」と広げて考えていくのが「広げる合意形成」です。
対峙するものを含め、多様な意見が出たときに、「敵か味方か」ではなく、「異なる意見を持つ仲間」として対話・議論する――エネルギー政策そのものと同時に、これからの社会に必要な対話や合意形成の方法を試行錯誤しています。