エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2012年09月07日

世界はこう考える~国際世論調査~ (2012年9月5日掲載)

 

 エネルギー政策の方向性をめぐって、国民的議論を踏まえての決定の時期を迎えていますが、一国のエネルギー政策はその国だけではなく、世界全体に影響を及ぼします。

 私が代表を務めているNGOジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)では、2030 年までの日本のエネルギー政策の方向性に関する国際世論調査を実施しました。
 
 世界の人々は日本のエネルギー政策に何を期待しているのでしょうか?
7月26 日~8 月14日にインターネット調査を行い、世界53 カ国から322 通の回答が寄せられました。

 その結果、回答者の70%が3つの選択肢の中でゼロシナリオ(2030 年までのなるべく早期に原発依存度をゼロにする)を支持していることがわかりました。
15シナリオ(2030 年に原発依存度を15%程度に)は15%、20~25シナリオ(同20~25%程度に)が10%、その他4%、わからない1% でした。

 ゼロシナリオの選択理由には、「原発は事故のリスクが大きすぎる」(36%)「人類は核廃棄物を管理できない」(17%)と、原発のリスクや核廃棄物の危険性を挙げた回答が最も多くありました。
また、「日本が世界に規範を示すことを期待して」(10%)のほか、「再生可能エネルギーをもっと増やせば実現可能」(8%)「省エネやエネルギー効率化で実現可能」(5%)と再生エネや省エネへの期待も寄せられました。

 15 シナリオ回答者からは「原発は充分な安全対策が必要」「再生可能エネルギーの開発も重要」(各30%)との意見があり、20~25 シナリオ回答者の44%は理由として「CO2 削減のため」を挙げています。

 今回の結果から、国内と同じく、世界でも多くの人々が日本がゼロシナリオを選ぶことを望んでいることがわかります。
 日本が世界からの期待に応えるためにも、原子力からリソースの移転を進め、再生可能エネルギーや省エネルギーの分野で世界をリードする国に大きく舵を切ることだと痛感します。

 一度起こると取り返しのつかない被害を与える事故のリスクや未来世代にツケを回す核廃棄物を増やし続けるのではなく、地域の自然エネルギー資源を活用し、よりレジリアント(しなやかに強い)で持続可能な社会へのシフトが経済的にも可能でありかつ望ましいことを世界に示していければと強く思います。

 JFS は日本国内の環境や持続可能性に関する優れた取り組みを英語で世界に発信する活動を行っており、この8月末に10周年を迎えました。毎月発行している英語版ニュースレタは、各国の政府関係者や環境オピニオンリーダー、専門家、メディアなどを中心に、世界188 ヶ国・約8000 人に配信しています。

 今回のエネルギー政策も含め、政策に関して国内で閉じた思考や議論に終始せず、つねに世界との関係性や「世界の中の日本」の位置づけも考えに入れていくことが大事だと思っています。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ