エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2012年11月16日

真に幸せな地域をめざして (2012年10月3日掲載)

 

 GDP(国内総生産)という指標は、いつからどのような目的で使わせるようになったか、ご存じでしょうか?

 1934年に経済学者のサイモン・クズネッツが開発し(当時はGNP:国民総生産)、第二次大戦中に国家の軍需生産を測る指標として用いられるようになり、その後、国家の経済成長を測る指標として定着しました。兵器などの生産を測るものだったのですね! そもそも社会の進歩や幸せとはまったく関係のないものだったのです。

 クズネッツ自身が「GDP では、国の豊かさはほとんど推し量ることはできない」と警告を発していたにも関わらず、日本を含め、世界中でGDPは国の進捗や影響力の大きさを測るものとして使われてきました。国だけではありません。自治体にとって、都道府県別GDPといった形で、自治体や地域の重要な指標として用いられてきました。

 一方で、「GDPは増えても幸せになっていないのではないか」「本当に大切なのは何なのか」という議論が内外で盛んになりつつあります。

 日本でも、2010年6月に閣議決定された新成長戦略に「新しい成長及び幸福度について調査研究を推進」することが明記され、内閣府に設置された「幸福度に関する研究会」が2011年12月に「幸福度指標試案」を発表しています。

 このような動向を背景に、私が所長を務める幸せ経済社会研究所では、日本の自治体が幸福や真の豊かさを指標化したり政策の目標とする動向について調べてみました。

 47都道府県・52政令指定都市/県庁所在地、加えて取り組みが報道されている2自治体(東京都荒川市、富山県氷見市)の合計101自治体に対し、アンケート調査とウェブ調査を行いました(アンケート調査の回答率は55%)。調査の結果、回答を寄せた自治体のうち、22自治体が幸福度や真の豊かさを指標化する取り組みを、行っていることがわかりました。うち13県の合同プロジェクトが1種とその合同プロジェクトに参加している熊本県が独自に進めている指標もあることから、指標化の取り組みとしては11種あるということです。

 指標化の考え方や方法はさまざまです。全国で各自治体が工夫をしながら取り組みを進めていることは心強い発見でした。また、調査対象の4分の1にあたる25自治体で、幸福度や真の豊かさを政策目標に採り入れていることもわかりました。こういった自治体はこれから増えていくことでしょう。

 「GDPよりもGNH(国民総幸福)が大事だ」と新たな指標づくりを進めているブータンは今夏、世界中の専門家を集めて「新しい発展のパラダイム」を作っていくための国際専門家グループを立ち上げました。私もメンバーの一人に選ばれたので、日本の動きや考えを伝えることで貢献すると同時に、国際専門家作業グループの研究の進展や成果を日本に伝えることで、日本での取り組みも促進していきたい!と張り切っています。

 

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