【レジリアンス(resilience)】
風にそよぐ竹の強さを知っていますか。風が来たら身を倒し、風が過ぎ去ったら立ち戻る。強風が来たときにポキッと折れてしまわないように、竹はそんな「しなやかな強さ」を持っています。この「何かあってもまた立ち直れる力」は、「レジリアンス」と呼ばれています。
そもそも、自然には、災害や人為的な悪影響が及んでも、回復できる力(自己治癒力)が備わっているといわれています。でも、近年、温暖化や生物多様性の危機など、地球への悪影響が複合的となり、「どこまで持ちこたえられるか」という懸念が大きくなっています。このように、自然界では生態系が崩壊せずに回復できる力がとても重要なので、レジリアンスという言葉は、生態学の理念として広く使われてきました。それが、今日では、社会の持続可能性のために、経済や心理学など、あらゆる場面で使われはじめているのです。
たとえば、この大震災を経て、「東北の人は強い」といわれていますが、それは人と人との強いつながりや、地域の伝統・文化といったレジリアンスの土台があるからではないかと思います。その一方で、社会や経済の側面から見れば、震災によって物流や生産が麻痺しました。日本の産業は、短期的な経済効率を重視した結果、何かあったときに、素早く回復できない構造になっていたのです。
私たちの生活も同じくレジリアンスを失っていたのかもしれません。電気だけに頼った生活は停電したら大変。会社とアパートの往復だけだったので、近所の人とのつながりもない・・・・・・こういった暮らしは、平時には効率的でわずらわしさもないけれど、非常時には怖いものだと感じた人も少なくないと思います。
中長期的な「しなやかな強さ」を持ち続けていられるように、近所の人とのコミュニケーションなどの、
“多様性”を普段の生活に取り入れることが大切ですね。短期的には養うことができない、レジリアンス。震災を経た後の私たちの、暮らしのキーワードとなりそうです。