【ダウン・シフト(down shift)】
もともとは車のギアを1段下げるという意味から転じて、「消費と収入を減らし、充足感を得る暮らし方を自発的に取り入れること」という、社会行動の標語のひとつとして使われ始めました。
それは、収入や消費を優先する忙しい生活から、自分の時間を取り戻そうとする自発的な動きでもあります。昇進すればするほど、権力やお金が手に入りますが、その一方で失うものも大きくなります。
たとえば、野に咲く花が綺麗だなとか、金木犀のいい香りがするとか、今日は満月だなあとか……それは加速している時間ではなかなか感じられないこと。そういった自然とのつながりを感じる時間、家族と過ごす時間や自分の好きなことをする時間は、自分の中にあるさまざまな可能性を引き出す時間でもあります。
そうした時間と、仕事に時間をかけて得られるお金と権力とのバランスを天秤にかけたとき、自分にとって何が大切なのかを意識する人が増えているのだと思います。
本当に買いたいものを見直してみると、たとえば月に30万円必要だと思っていたけど、実は20万円で足りるということだってあります。その浮いた10万円を稼ぐ時間を自分の好きなことをする時間にシフトし、部分的に今ある仕事を減らし、その代わり時間を得るというのもダウン・シフトです。
このように、〝意図的〟に仕事を減らしたり、辞めたりして、より幸福を感じられる生活に切り替える人たちは、〝ダウン・シフター〟と呼ばれています。働く時間を減らして、食べるものを自分で作り出そうと家庭菜園を始める人、出張や残業の多い昇進を断って現場に残る人、また定年前に退職して畑を始める人など、欧米をはじめ日本でも増加しています。
1年間を振り返り、自分と向き合う時間が増える年末年始は、自分の消費と収入を見つめ直すいい時期です。少しずつでも、誰かにコントロールされるのではなく、自分の時間の手綱を自分でにぎれるようにしたいですね。ダウン・シフターが増えていくことで、世の中のお金に対する価値観も大きく変わっていくでしょう。