エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

第7回

サスティナブル・フード・ラボ(sustainable food lab)

 
【サスティナブル・フード・ラボ(sustainable food lab)】 日本ではまだほとんど知られていませんが、企業と市民が一緒になって持続可能な食糧システムを作っていこうというプロジェクト「サスティナブル・フード・ラボ」(以下、SFL)が、食品業界の世界的な動きとして、今注目を集めています。 現在必要とする食糧をまかなうだけの農業や食糧供給を確保し、将来の需要に備えて世界の食糧供給能力を増強することを目指し、2003年に設立。企業や団体の代表で構成され、その分野は農業、製造業、食品サービス業、流通業、小売業のほか、NGOや公共部門などにわたっています。 食品の生産・流通を大きく変えていくために、現在は、ユニリーバ、コカコーラ、スターバックス、ハインツ、ペプシコなどの大手企業をはじめとする、国境もセクターも超えたメンバーが集っています。 SFLが世界的に注目されている理由のひとつに、先進的企業が取り入れはじめている組織・人材開発手法を用いていることがあげられます。 たとえば、全体会議や定例会の前におこなう会議「ラーニング・ジャーニー」。 企業や団体のリーダーが生産地を訪れ、見たり聞いたりしたことをすぐに振り返り、対話していくというもの。単に実際の生産現場を見るだけでなく、多様な立場から感じたことを腑に落としていくためです。 また、ほかにもユニークなのが、荒野の中で一人48時間を過ごし、再びメンバーと一緒になりダイアログを行う「ソロ」というプログラム。 このプロセスを経ることで、多くのメンバーが自分の思い込みや固定観念を手放し、何をすべきかが明確になるのだといいます。 気候変動を緩和させる環境問題への取り組みとして、ユニリーバは2020年までに環境負荷を半減、ペプシコは5年間で温室効果ガス排出量と水使用量の半減を目指すと発表。貧困に苦しむ小規模農家の活性化を目指し、ウォルマートやユニリーバは、小規模農家からの調達量の数値目標を設定するなど、次々と新しいビジョンを提案し、実行に移しています。 SFLは、参加した企業が自ら変えていくので、実践が早いのも特徴です。 食糧システムに対して異なる認識を持つ人々が集まり、ありきたりではないやり方で課題に挑戦する、ユニークな場であるSFL。残念ながらまだアジア企業の参加はありませんが、今後SFLの動きは世界でますます注目されることでしょう。
 

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