エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2014年02月07日

世界に届け、日本企業のCSR(2014年2月3日掲載)

 

 市場も事業も資金調達もグローバル化している時代に、世界への情報発信の重要性は言うまでもありません。

 CSR報告書にあまり熱心でなかった米国企業の発行数がここ1~2年大きく伸びています。ウォール街などの金融機関が財務パフォーマンスを測る一つの指標としてサステナビリティ(環境、社会、経済)の情報を用いるようになってきたことが大きな原動力となっているようです。

 日本でも多くの企業がCSR報告書を発行しており、英語版を出しているところも多いですが、はたして日本企業のCSR情報は世界に届いているのでしょうか?

 私が代表を務めているNGOのジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)は、11年前より日本の環境・CSRの情報を世界184ヶ国に発信してきました。

 JFSでは、日本企業のCSR活動の海外での認知度向上に資することを目的にグローバルサーベイを実施しました。

その結果は......「海外の利用者の7割は日本企業のCSR報告書を読んだことがない」というショッキングなものでした。プレスリリースからご紹介しましょう。

 2013年10~12月に環境・CSRに関心の強い海外の読者向けにJFSが発行する「JFSニュースレター」などを通じて、CSR報告書を読んでいる80人(有効回答76)を対象に、1)日本企業の報告書は海外でどの程度読まれているか、2)読んだことのある利用者は日本企業の報告書をどのように評価しているか、を調査しました。

 欧州(38%)、北米(25%)、アジア(21%)などから、研究者(37%)、産業界(16%)、NGO(14%)、政府(11%)と幅広い層からの回答を得ました。

 年間にCSR報告書を10冊以上読む利用者が3割超、5冊以上読む利用者が3分の2を占め、中位値は7.5冊です。

 76人中52人(68%)「日本企業のCSR報告書を読んだことがない」と回答、海外での認知向上につなげたいと英語版CSR報告書を作成している企業の思いがあまり実を結んでいないことがわかりました。

日本企業のCSR報告書を読んだことのある回答者、その企業名を自由に複数挙げてもらったところ、トヨタ自動車(6人)が最も多く、ついでソニーなど6社が2人ずつ、ほかは各社1人ずつで、計34社の日本企業の名が挙がりました。

 日本企業のCSR報告書への批判的な意見に、できたことのPR中心(「グリーンウォッシュ」)で透明性・信頼性に欠ける、報告が国内・環境分野に偏り、社会・経済分野や海外の情報が少ないなど報告内容が不十分である、目標の実施に関して基準を設けて進捗を報告する説明責任が弱い、などがありました。

 日本企業がきちんとCSR情報を世界に発信し、評価されることは事業展開や資金調達上も不可欠ですが、日本企業のCSR報告書がまだ海外の報告書利用者に届いていないのは残念なことです。

 JFSでは情報発信パートナー企業の英語版CSR報告書のポータルコーナーを設けるなど、効果的な海外発信のお手伝いをしています。ぜひご活用ください!

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ