3月末に、横浜でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の総会が開かれ、第2作業部会(温暖化の影響と適応)の報告書が出されました。
近年、温暖化の影響を感じさせるさまざまな自然災害が頻発し、桜の開花や紅葉の時期の遅れなど、身近な自然の変化も実感するようになってきました。
温暖化の進行を止めるために、できるだけ早く温室効果ガスの排出量を減らしていくことが必要ですが、たとえ今日排出量をゼロにしても、これまでに排出された温室効果ガスの蓄積が温暖化を進めてしまいます。
そこで、当面進行してしまう温暖化の影響に備えるための「適応策」も重要です。
あなたの会社や家庭・地域では、温暖化の影響に対する備え(適応策)を進めていますか?
その必要性や重要性の認識は広がってきたものの、適応の計画や実行は「これから」というところがほとんどでしょう。
緩和策なら「大企業のやるべきこと」と思っていたかもしれない中小企業も、温暖化の影響から逃れることはできませんし、何かあったときには大きなダメージを被ることになりかねません。
米国で、ハリケーン・サンディの被害を受けた中小企業のうち、30%は再スタートできずに倒産してしまったという調査結果があります。2~3万社があの1つのハリケーンでつぶれてしまったのです。
温暖化が進行すると、台風やハリケーンの強度が増えると予測されています。ほかにもさまざまな温暖化の進行に伴って"起こりうる影響"に対して先手を打っていくことが、次の競争優位の源泉になる日が来るかもしれません。
残念ながら、日本は他国に比べ、国レベルでの適応の動きが遅いのですが、世界でも先進的に適応に取り組んでいる英国では2013年に「国家適応計画」を策定し、各分野での適応策を進めています。この国家適応計画の第7章はずばり「企業」です。
英国政府は、自国の企業を温暖化の影響にも強い体質にし、さらには適応ビジネスを輸出産業にしていこう(適応産業は年率5%の成長市場とのこと)と考え、温暖化の企業に対するリスクを下げ、ビジネスチャンスにつなげるためのさまざまなガイドやツールまで用意しているのです。
オーストラリアでも昨年、「取締役会での気候変動への適応」というリポートが出されました。オーストラリア企業の適応への意識や対応が遅れているので、このままでは産業や国際競争力に影響が出てしまうという問題意識です。
同リポートでは、適応を進めない企業には、法規制リスク、訴訟リスク、保険リスク、評判リスクといったリスクがあると説明しています。
また「取締役のためのチェックリスト」として、「役員の中で温暖化の適応の責任者はだれか?」「事業戦略は温暖化も考えに入れたものになっているか?」「競合他社は温暖化への適応をどのように進めているか?」など、具体的な問いを並べて、経営者や企業の意識を促しています。
国の対応を待つことなく、自社にとっての適応策や適応ビジネスをぜひ考えてみてください。